『かがみの孤城』を読んで、観ました。
不登校気味の中学生、こころの部屋にある姿見が急に光を発する。そこに手を伸ばすと、こころの体は鏡に吸い込まれ、見知らぬ古城に辿り着く。
狼の仮面を付けた少女に城を案内されると、そこにはこころと同じようにやって来た同世代の6人の少年少女が集まっていた。
仮面の少女=オオカミさんの告げるところによれば、この城には何でも一つだけ願いを叶える部屋があり、そこに入るには鍵が必要だという。
鍵探しが目的でありながら、こころたちはお互いが何かしらについて悩んでいる事を知り、慰め、励まし合いながら徐々に仲を深めて行く。
しかし、城に集まれる日々にも、いよいよ終わりが近付き始め……といったお話。
今回はテレビ放送版の鑑賞(というより視聴)なので、すなわちテレビ放送用に編集した、映画としては不完全なものを観た上での雑記です。
そんな映像は最初から見ないのが常なんですが、日本テレビが関わるアニメ映画がCSを含めた他局で放送される事は皆無に等しいので、妥協して観る気になりました。ディスクを買うどころか配信でも見なさそうな作品だし。
本作に関しては、まずシナリオから入ってみました。
映画に関して何の先入観や予備知識もなかったので、実写映画を想定しながら読んでいましたが、今やCGを主とする特撮で表現できる幅も広がったので、別に実写作品でも問題ない話に思えました。
が、重い題材を扱っているので、実写でやると後を引きずるように生々しいシーンが出そうだから、その辺をもう少しマイルドにできるアニメという表現で正解なんだろうな(それでも、こころの家に殴り込みに来る真田たちのシーンには慄然する…)。
城に集まった7人の少年少女たち。彼らは不登校児という共通点を持っているんですが、そんな子供が主役という時点でやれやれです(笑)。
”困っている人に自分はいい人だと思わせたい”という欲を隠しながら、“頑張れない時は頑張らなくていいんだよ”という心地よい言葉で子供を騙す大人のカモというかね。
まぁ、時として子供の社会は大人のそれよりも無邪気で残酷だし、法による決着も望めない世界で生きる子供は、ある意味、大人よりも過酷な生き方をしているのかもしれませんがね。本作で言えば、こころと真田の対立とか、大人が介入したところで解決できる問題ではないし。
けど、人間、いつかは闘わなきゃならない時もあるんですよ。
その先の長い人生なんて、もっと辛く苦い事ばっかだぜ? 嫌な人間だってゴマンと現れた上で、共存(や共生)を強いられたりもするし。
本作では“闘う”というワードが印象深いですが、結局は避難先を確保するための闘いでしかないのが引っ掛かりました。大人に逃げ道を誘導させてばかりで(良かれと思って節介を焼く親が多いんでしょう)、子供らはあまり成長していないんですよ。城にいた仲間以外の人間と仲良くできる未来も想像できないしね。
冒頭、朝早くから学校で食べるための弁当を作ってくれているのに、学校に行きたくないと言われるお母さんの気持ちを考えて申し訳ない気持ちにならないか、こころよ?
そんな弁当を自宅で食べる罪悪感や心苦しさが、もう少しあってもいいんだぜ?と、取るに足らないシーンですがやけに裏読みしてしまったものでね。
ここ、共感できるお母さんも少なくないんじゃないかな?
こころに関してのトラブルの発端にもなっていますが、中学生風情で男女として付き合うとか、今の子は進んでるんだねぇ(笑)。部活でもやれ…。
――で、映画の方を観ましたが、もちろんのごとく、文字だけで想像していた映像とは比べ物になりませんでした。
まずビジュアルが美麗で、何よりキャラクターデザインが淡白なのが好印象。深夜アニメやスマホゲームよろしく、エロで釣るようなキャラがいなくて安心したよ。
逆に、綺麗すぎるなぁとも感じるところもありましたがね。シナリオでは”古城”と記されているものだから、城の中ももっと薄暗くて汚ったねーかと思ってたので(笑)。
衣装がマメに変わるのも新鮮に見えます。テレビアニメには着た切りスズメが多いから…。
俺ッチはむしろ新鮮味を感じるという意味において、顔出し俳優が声優業をやる事には肯定的です。
…と思っていましたが、実際にアニメ作品一編を丸々観てみると、違和を感じるところが意外と多くありました。洋画等の吹き替えならそこまでは感じなかったかもだけど。
受け取り方は人それぞれですから芝居そのものの巧拙については言及できませんが、3点ほど苦言を。
・声が小さい
・話す相手との距離感を把握できていない
・イントネーションが一本調子
まぁ、この辺は具体的に言わなくても分かるよね。
素人でもそう感じるくらいですからね、演技の指導する人って、あれで納得&満足できているのかいな?
多くのアニメは映像がない状態でアフレコする事が多いようですが(こういう楽屋事情は大っぴらに言わない方がいいと感じる)、吹き替えを本業としない俳優を起用するのであれば、不慣れというハンデを軽くする意味でも、完成に近い映像を使った方がいいと思うんですよねぇ。
そんな中でも、声も聞き取りやすいし、麻生久美子さんはかなり良かったかな。
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…って事で、日テレの『金曜ロードショー』枠で放送するような、ひと昔前なら文部科学省が推奨しそうなアニメ作品は俺ッチとは相性が良くない事を実感する作品でした(笑)。
若い人、もしくは“多様性”というワードを大マジに捉えている人には刺さる作品だと思います。
ところで、俺ッチが読んだシナリオは↓これに掲載されていたものです。
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ところどころで小さな差異があるので、映画そのまんま=採録ではありません。それ故、マサムネくんのアレは高山みなみさんのアドリブの可能性が大です(笑)。
にしても、シナリオは↑の誌面の約1/3も使うほどに膨大で、3時間くらいの作品かと思ったよ…。