観た、『復活の日』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『復活の日』を観ました。

 

1981年、ウイルス作成のための遺伝子工作が世界的に禁止される。

1982年、東ドイツの陸軍研究所から、蔓延性や致死性が高く抗体も存在しないウイルス=MM-88が盗み出され、事故により大気中に散布されてしまう。

そして1983年、MM-88により人類は絶滅した。南極基地にいた世界各国の越冬隊863人を残して…。

彼らは団結し南極連邦政府を発足、地球に残った最後の人類として生き延びる策を練る。

そんな中、地質学者の吉住はアメリカ東海岸で大きな地震が起きる事を予知する。アメリカには本土が攻撃された際にミサイルで反撃する自動報復装置=ARSがあり、大地震を敵の攻撃と誤認しミサイルを発射する可能性があるという。ARSの目標はソ連に向けられていて、そのソ連にも同じようにARSが存在し、アメリカ各地に照準が向けられている。標的の中には、アメリカ越冬隊の南極基地も含まれていて……といったお話。

 

周知の通り、近年の新型コロナウイルス=covid19の猛威はほぼ全ての人類に緊張感を与えました。

そんな現実を“体感”してしまえば、本作が所詮は映画というフィクションだと一笑に付す事に躊躇いを感じますよね。

つまり本作は、今を生きている全ての人類に刺さる作品だと思います。

映画としてもスケールがデカく、邦画では数少ない、世界規模のスペクタクル巨編と呼んでも過言ではないでしょう。

最近ではドラマに関して頭一つ二つ分くらい抜きん出ている(らしい)TBSが、このコロナ禍が過去の出来事とハッキリ言えるようになった時期にでも日曜劇場ででもやりそうな素材です。

そんな時が来るのはいつになるのやら…。

 

ウイルスの恐怖を描いた作品は多々ありますが、特に近年のそれらはゾンビごっこをやらせるための理由付けです。ナントカの一つ覚えというかね。

本作の場合はまるでcovid19が蔓延する様=パンデミックの行く末を大袈裟に描いているようで現実味すら感じます。本作が公開された1980年当時には、まさか40年後に世界を巻き込んで、映画というフィクションをノンフィクションとして体感するなんて思わなかったでしょうが…。

感染者が爆発的に増え、ひっきりなしに押し寄せる患者の対応に追われる病院の職員が総じてグッタリしてしまうシーンは生々しいですね。激務のストレスで流産とか、実際にもあったんだろうなぁ。

一番ショッキングだったのは死んだ感染者の処分で、あんなシーンを邦画で見るとは思いませんでした。戦争映画でもあんな胸クソ悪い画はないでしょ…。

 

「40年後の未来を予見している!」とかダッセー事は言わないにしろ、想像し得る近未来を描いた作品です。原作は小松左京さんという共通点から『日本沈没』共々、ない事はない恐怖の未来を描いたシミュレーション系パニック作品とも呼べますね。

ドラマですから、それなりにご都合的なところはあるものの、なかなか事が上手く運ばないというか、努力が実らないドライな作風は虚無感たっぷり。

それでもなお、どんどん&まだまだ人口が少なくなる展開に慄然…!

 

地球に残った人類は855人の男と8人の女。

現実的に考えると約100:1という男女比率は大問題で、確実に性犯罪が起きる数字です(笑)。

そこで秀逸なのは、取り決めとしてセックスに関する秩序を作ろうとする点。子孫を作れる女性は人類の資産である事を踏まえ、一方的な本能を満たす犯罪が起きないよう赤裸々に討論をする(もちろん男女が同席の上で)のが真摯です。ただ女性が上位に立つのが目的ではなく、人類の一部として女性が女性にしかできない役割を果たすために妥協をする、子供を作らざるを得ない状況を受諾するのも立派です。

ハッキリ言うまでもなく、現代にフェミニストを気取る連中よりも遥かに志が高いですよ。

 

 南極という極寒の地で働いているに過ぎなかった各国の越冬隊が、まさか自分らが地球に存在する最後の人類になるとは夢にも思わなかったでしょう。

そんな彼らは南極連邦政府という国家を興します。ある意味、世界の国々が一つになった喜ばしい瞬間です。

とは言え、本来なら有事に備えて世界が一つになるのが理想ですが、有事が起きなければ世界は一つになれないというのは悲しい皮肉ですよね。

余談ながら、この辺は手塚治虫さんの『来るべき世界』が先駆けています。

 

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Blu-ray版の映像特典は予告編のみです。

 

この歳になって70~80年代の角川映画を観るようになりましたが、実に新鮮に映ります。日本にもこんな映画があったんだ!という、実に有意義な発見です。

今、振り返ってみると、80年代の角川映画以外の邦画って何がある?と聞かれて、どんなタイトルを挙げられるでしょうか? 挙げたとして、どれほどの知名度があるでしょうか?

もちろん、中には褒められたものではない作品もあるんでしょうが、それでも当時の邦画を支えたのは角川映画のような気がします。もっと観てみたいなぁ。