『頭文字D THE MOVIE』を観ました。
走り屋たちが峠道を攻める秋名山では、最速のツートップである涼介と毅が決着を付ける日が近付いていた。
そんな中、毅が駆るGT-Rの後ろから近付く1台の車。毅に比肩するほどのドライビングテクニックを持ち、悠々と追い抜いて行ったその車=ハチロクには豆腐屋の文字が…。
その頃、ガソリンスタンドでアルバイトをする拓海は、同級生のなつきとドライブデートのため、豆腐店を営む家の配達用の車を借りようとするが、父である文太より秋名山でGT-Rと勝負しろという条件を出される。
渋々ながら秋名山に向かう拓海。先の、毅を追い抜いたハチロクは拓海が運転していたのだ。
日々、豆腐の配達で秋名山を走り込んでいる拓海のテクニックは毅を圧倒し、涼介にも勝負を挑まれる。
次々と走り屋たちを負かしていく拓海だったが、なつきの妙な噂を聞いてしまい……といったお話。
…と、本作の話を持ち出されて、そーいや実写版があったなと、ようやく思い出した人も少なくないんじゃないかな? 思い出せないという事は、取るに足らない存在である反面、そこまで悪くはない評価の表れでもあると思いたいけど…。
俺ッチの『頭文字D』に関する知識はアニメ版の『~3rd stage』までですが、本作のように1本の映画としてまとめるには設定の小さな変更や拡大解釈が生じるのは仕方ないでしょう。
漫画&アニメバカは実写版のこういう点を攻撃するのが大好きですが(笑)、ゆとりのある人は原作を極限までスリムにするとどうなるのかを気にしながら観るのも一興かと。つまり、登場キャラやエピソードのオミットですね。
各チームに名前のあるキャラは一人いればいいし、樹[イツキ]と店長が親子関係にあってもそこまで原作が破綻する事はありません。
中でも秀逸なのは、涼介✕京一戦と拓海✕京一戦を一括りにして3人同時で勝負するアイデアは脱帽です。派手なクライマックスを予感できる熱い展開です。
漫画がアニメ化される際は原作の再現にスゲー必死な空気がありますが、実写化の場合は媒体の違いからそれは無理です。
であれば、二次創作だと思い込めばいいんですよ。主観たっぷりの妄想をブチまける同人誌よりもよっぽど健全だと思うんだけどなぁ。
さすがは実写版、本物というだけで迫力の度合いが変わってきます。
少なからずCGに頼っているところはありますが、まだ映像技術が伴っていない時代の作品であるおかげで、CGである箇所はあからさまに分かりますから、それ以外は本物であると考えれば説得力も強まります。
秋名山の峠道や藤原豆腐店の店構えとかもスゲー似てますよね。よくもここまでマッチした場所を探してきたものだなぁと感心しますよ。
オリジナルに似てる箇所を見つけるのも、実写版の楽しみの一つです。
特に邦画でやりがちな、実写版だからって髪型とか目の色とか衣装とか、人間キャラを絵に似せるような寒い作業をしていないのも安心して観れるポイントです。
中でも、涼介を演じたエディソン・チャンさんは実にいい。本作の中でベストマッチなキャスティングです。
アニメでは愛嬌がありながらもウザキャラに分類される(笑)樹ですが、実写版では愛嬌が薄れてマジウザなキャラになってます。ウザキャラというよりギャグキャラかな? 秋名スピードスターズの代表として勝負しようと持ち出した車には爆笑です。
『頭文字D』と言えば車同士のバトルが見どころですが、パワーや年式で遥かに勝っている相手を古っり〜車で負かしてしまう痛快さが魅力です。
本作なりの自動車理論に基づいた上で、オリジナル版と同じ解釈で勝敗が決まるあたりは、原作(やアニメ版)を観ていた人はニヤリとする所でしょうね。そこを現実と同じ理論にしちゃうと興ざめするし。
原作にはあるのかな、ライバルたちが溝落としを練習していたのを表したカットが個人的には好きでした。
それまではノホホンと、無自覚のうちに速い事が当たり前となっていた拓海が、自分が速い事を自覚する事で、勝負に貪欲になってくるという、いわば成長劇としてのストーリーもキチンと描かれています。走り屋としての技術だけではなく、人間としての成長も含めてね。
車でのバトルとなつきとの恋、共に勝利を得る事がないというドライさが白眉です。
中学生くらいの頃、居住空間として車に憧れていました。つっても、キャンピングカーよろしく車内で生活できるくらいの規模ではなく、自分一人だけになれる上に移動もできる自分の部屋という解釈で。
ほぼラストシーンに近い、勝負後の用事を済ませた後、人目をはばかる事なく感情を露わにする拓海を見て、そんな若かりし頃を思い出しました。そして、ちょっとウルッ。アニメ版の池谷先輩の恋の顛末も同様にね。
近年、車を持たない若い人が増えているようですが、そんな使い方、誰にも侵害されない自分の部屋を一つ増やすという意味でも、せめて1度は車を持ってみるのもいいと思います。
色々と金食い虫な点がイヤなんだけどね~…。
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Blu-ray版は事実上の廃盤なんでしょうかね。
エイベックスは音楽とアニメにしか興味がなさそうなメーカーなので、本作の再販や廉価版とかもうないだろうなぁ。