『少林寺』を観ました。
中国、隋の時代。
民に圧政を強いるワン将軍に父を殺され、命からがら逃げ延びたチェユアンは少林寺の僧たちに救われる。
回復したチェユアンは、少林武術の鍛錬に励む修行僧たちの姿を見る。少林寺の仏門に入り武術を学ぼうとするが、チェユアンの頭は父の仇であるワンへの復讐の念でいっぱいだった。
修行の末に立派な拳士となったチェユアンは、ワンたちに追われるリー将軍を救い出す。リーを逃がしてやれたものの、ワンはチェユアンのみならず、一軍を率いて少林寺の焼き討ちに向かい……といったお話。
アクション映画は多々あれど、中国発祥の武術を使った殺陣は世界規模で見ても特殊で、欧米のそれらとはまた違うカッコ良さがあります。
本作に登場する少林武術(一緒くたな言い回しですが)は、演舞としての動きの美しさの方が印象的です。素早さだけでなく、奇抜で意味不明(笑)な動き、何より次にどんな動きをするのか予想できないのも魅力です。
武術であるからには相手を倒すのが本来の目的ながら、どうも能率が悪いというか(笑)、始祖からすれば不本意でしょうが、現代においてはエンタメ向きの武術であるとも言えるでしょう。舞踊のような趣すら感じますからね。
殺陣の手数の多さにも見入ってしまいます。
映画としてはアクション映画ですが、随所にあるクスッとさせるコメディ要素もいい塩梅です。
ストーリー的には復讐を誓う男の物語ではあるけど、明るい雰囲気が漂う事で殺伐さが薄れているのが良いんですね。
タイトルバックに流れる♪ショ~リン、ショ~リン♪(字幕では“少林よ、少林よ”)という、少林寺を称える歌はまるで校歌のようなノリ(笑)。
少林寺の修行僧たちはガッチガチにお堅い戒律に囚われていながら、都合の良い解釈でこれを破りまくっているのも面白い。心に仏を宿してさえいれば肉や酒を飲み食いしてもオッケー!という解釈も、ユルい部活みたいで微笑ましいですね(笑)。
「ジェット・リーじゃねぇよ、リー・リンチェイだろうが!」と言いたくなる、とっくにオジサンどころか初老はさておいて。
リーさんの映画デビュー作という事で当たり前の事ながら、んま~若い! そして初々しくて可愛い(笑)!
リーさんはアクションを売りにした俳優ですが、そのルーツともなっている本作。演舞や殺陣で見せる動きは力強くも華麗で、安易にアクション俳優を目指す人の志をへし折ってくれます。
本作におけるリーさんの完コピができるようになる事は、少林寺での修行に等しいだろう…。
ここで、カンケーない話。
本作を観る限り、攻撃の際には気合いとして発声するのが少林武術の基本のようです。「ハッ」とか「ハイッ」とかね。中国の格闘系劇画にも「哈[ハ]~!」なんて掛け声もありますし。
ここで思うのは、いわゆるニチアサ枠の番組=スーパー戦隊・仮面ライダー・プリキュアのヒーローたちが戦う際に発する掛け声は、馬鹿の一つ覚えのごとく「ハッ!」に固定されていますが、ああいうヒーローたちの戦闘スタイルの源流は少林寺にあるのか?と突っ込みたくなります。
『五星戦隊ダイレンジャー』はアクションのモチーフとして中国武術を取り入れている故に「ハッ」とか「ハイッ」という掛け声を発していますが、そうではないアクションにおいては違和感しかありません。
本作を観ると、少なくとも飛び道具を使う際に「ハッ!」ってのはおかしいんじゃない?と感じる人もいるんじゃないかな? いないかなぁ…。
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Blu-ray版の映像特典は予告編のみ。
日本語の吹き替え音声は2種類ありますが、水島裕さんが洋画の主役を担当するあたりにノスタルジーを感じます…。