『機動新世紀ガンダムX』を観終えました。
地球連邦軍と宇宙革命軍による戦争は、地球に大きな被害を与える形で終結した。
それから15年。生き延びた僅かな人々とともに、世界は復興の兆しを見せ始めていた。
そんな中で、戦災孤児でありながらも逞しく生きる少年ガロードは、何者かに追われる少女ティファと出会う。ティファの導きにより二人が行き着いた先、そこには先の戦争で使われていたモビルスーツ、ガンダムがあった。
全てはニュータイプとされるティファを守るため、ガロードはガンダムに乗って戦い続ける……といったお話。
『機動武闘伝Gガンダム』に始まった、宇宙世紀と呼ばれる世界を背景にしていない独自の世界観を持つ、いわゆるアナザーガンダム作品です。
別名、“それ、ガンダムじゃなくてもいいじゃん?”という作品ですね。
打ち切りに遭うのは面白くなかったからだとも言われる作品ですが(残念ながら完全な間違いでもない)、数あるガンダム作品の中でもチト異色というか、っぽさはありつつも先進的というか前衛的な作品に思えました。
令和の時代に初めて観ても目新しい点が多々あって、楽しめました。
主人公がガンダムに乗って戦うのは当然ながら、その行動原理は各作品によって異なります。
そんな作品群の中においても、本作のガロードの場合のそれは“ティファを守るため”、それだけです。
某一年戦争の英雄には「たった、それだけのために…?」と突っ込まれそうですが(笑)、それでも十分に男が命を張って戦う理由にはなり得るんですよ。
スペースコロニーが地球に落着するシーンはこれまでのガンダム作品にも数多くあり、それが何を招くのかも散々思い知らされていますが、それが一つ二つどころではなく10基近く、もしくはそれ以上の数が落とされているんだから、被害状況的には『北斗の拳』の世界に近付けそうな規模ですよ。あんなヒャッハーな人たちが闊歩しないあたり、こっちの世界の方が民度が高いですが(笑)。
日本で生きている人は現実を知っている上で、「そんだけの被害を被りながら、たった15年ぽっちであそこまで復興できるはずないじゃん?」と思うかもしれませんが、地球の地べたに這いつくばるばかりが生活の場ではない世界ですからね、現在の文明レベルと比べ物にならないんですよ。
光岡湧太郎さんという方がレギュラーとしてキャスティングされていますが、俺ッチも含め、本作で初めて知った人も多いんじゃないかな?
あまり聞いた事のない声や喋りが新鮮に思えたのも納得で、主に舞台や語りの仕事が多かったようです。なるほど、舞台のベテランであれば発声に関しては心配ないし、何よりアニメ芝居が染みついていないのが良いんです。
そんな光岡さんはナレーションの他に、フリーデン付きの医者の役も演じていて、最終回まで観終えても分かんなかったので調べてみましたが、テクス・ファーゼンバーグという役名だったそうです。
知らなかったよ、そんなの……だって、みんな“ドクター”としか呼ばないじゃん(笑)?
そんな光岡さんは、本作最大のキーパーソン(パーソン?)D.O.M.Eも演じています。
D.O.M.Eがニュータイプについて語りますが、つまりは“ニュータイプなんて過去の幻想だ、そんなのばっか気にしてないで未来を見なさいよ”と俺ッチは解釈しましたが、まぁそんなところでしょ?
そして、このメッセージには暗喩が秘められているようにも思えるんです。
“ニュータイプ”という言葉はガンダムシリーズ特有のものであり、両者はイコールで結ばれるもの。
D.O.M.Eが言うニュータイプとはガンダムそのものを指し、“偉業を果たしたガンダムばかりに頼ってないで、新しい作品を作りなさい(or新しい作品に目を向けなさい)よ!”というメッセージにも聞こえます。
つまり、本作こそが真にガンダムを終わらせようとした作品なのではないでしょうか?
『機動武闘伝Gガンダム』という作品は、裏ではガンダムを終わらせようとして作られた作品として有名ですが、何だかんだで『~Gガンダム』の後にも『新機動戦記ガンダムW』、そして本作へと続いてしまいます。
本作は放送時間帯の変更→従来通り4クールきっかり放送しなかったせいで打ち切りのように思える終わり方をしましたが、この事情を鑑みた上でも、当時はD.O.M.Eの言い分にそんな深読みをする人も少なからずいたかもしれませんね。いないか。
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ガンダムというだけで複雑=敷居の高い作品というイメージは否めませんが、ぞれなりに分かりづらいところはあるかもしれませんが、割と気楽に楽しめる作品だと思いますよ。
逆に、本作を先に見知りしてしまうと、他のガンダムって似たり寄ったりなんだなーと感じるかもしれませんね。