『MEGAZONE23 Ⅲ』を観ました。別に“メガゾーン23”表記でもいいのにな。
地球で最後の都市であるエデンシティの情報局E=X[イーエックス]に入局したエイジ。
E=Xはエデンを統率するコンピューターSYSTEMの指令を執行する機関で、荒廃した地球の自然と人間を結び付ける日を目指しつつ、SYSTEMのダウンを図りネット犯罪を繰り返すネットジャッカーたちを取り締まっていた。
テレビゲームだけでなく、本来なら犯罪とも呼べるハッキングの腕前をも買われたエイジは、E=X局長のヤコブよりバイク型移動端末ガーランドを託される。
エイジはネットジャッカーのリーダー格であるシオンと対決。その戦いの中、シオンの言葉を聞いたエイジはSYSTEMを盲信するE=Xの、そしてエデンを導くウォン・ダイ司教のやり方に疑問を抱き始め……といったお話。
令和の視点で見れば、インターネットを扱った作品なんてとっくに氾濫していますが、本作が1989年の作品である事を知れば、ずいぶん先進的な事をやっているなと驚けるんじゃないかと。
今ほどにネットが普及していない当時としても、“ネット”というワードにピンと来なかった人が多かったんじゃないかな?
“インターネットを扱った最初の映像作品って何?”と聞かれれば、おそらく過半数が『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)を挙げるんじゃないかと思いますが、本作はそれより前なんですね。
メンドくせー人は『ウォー・ゲーム』を挙げるんだろうなぁ(笑)。
得てして、映画内におけるデジタル系の描写って、後年になって見返すと(当然ながら)古さを感じずにはいられないものですが、これ見よがしに当時の最先端を見せびらかしすぎているのが原因なのかもしれません。
本作におけるネットの描写はそこまで克明ではないおかげか、「遠い未来なのに平成並みのテクノロジーじゃない?」といった時代的なギャップを(あまり)感じないので、時代遅れ感のある作品とは感じませんでした。
ネットを使った犯罪が珍しくなくなった現代を鑑みると、ネット犯罪の現行犯を取り押さえる武装警官=ネットポリスという存在(設定)は予見的です。
エイジがリョオと仲良くなった際に“アクセスコード教えて?”といった旨のセリフがあり、当時の感覚では電話番号のノリなんでしょうが、“アクセスコード”という言葉のイメージから、マイナンバーがケータイの電話番号に代わるものになるのかなと想像したり。
製作当時にはほとんど現実味のない空想だったんでしょうが、たった1世紀後にはこれらの予見が的中する未来が到来するかもしれないとは夢にも思っていなかったでしょうね。
現実を先取りしているだけでなく、映画としても後の作品に影響を与えていると思しきシーンが散見されているのも見どころです。
人間の首の後ろにコネクター穴を設けて機械と直接リンクさせる描写は、言わずと知れた『マトリックス』(より『~攻殻機動隊』の方が先?)ですよね。
他人の遠隔操作により、自分が操縦しているロボットの自由を奪われる描写は『新世紀エヴァンゲリオン』でのダミープラグ作動シーンを想起させます。
あんまり話題にならないけど、1989年の作品という点に着目すると、もっと評価されてもいい作品なんじゃないかと思います。
…なのに評価されないのはシリーズ物として、前作&前々作の設定や印象が引き継がれなかった失望の方が大きな不満と感じる人が多かったって事なんでしょうね。
個人的には『~(1)』から『~Ⅱ』になった際の様々な変貌を見ているものだから、前作品にそこまで固執するのも無駄じゃない?と思っているので、その辺は一歩引いて客観視できるんですが…。
毎度コロコロとキャラクターの画風が変わるのもメガゾーンシリーズの困った特徴ですが(笑)、今作のキャラクターデザインを担当するのは北爪宏幸さん。
本作での仕事っぷりは北爪さん黄金期と呼べるもので、女子キャラ、特に(前編の)イヴは確実に北爪美人です(恩田尚之さん風味も感じますが)。美樹本晴彦さんによるキャラ原案を北爪さんイズムでアレンジされたイヴはアニメキャラとして描きやすいのか、何より作画が(まぁまぁ)安定しているのが良いんです。
近年のガンダム系の漫画を見知りしている昭和アニメファンほど、やっぱり北爪さんはアニメ屋でいて欲しかったなと思うんじゃないかな(笑)?
正直、シリーズとしては蛇足に思えますが、目新しい部分も多く、意外に楽しめました。
ビジュアル的にも『~Ⅱ』のようなドギツさが抑えられていて(エログロも皆無に近い)、誰が見てもいい作品になっていたのが好印象でした。
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