『機動戦士ガンダムⅠ 特別版』を観ました。
人類が宇宙に生活の場を広げ、スペースコロニーを次々に建設するようになった宇宙世紀0078年。
地球から最も遠いコロニー群のサイド3がジオン公国として独立を宣言した事に端を発し、地球連邦軍とジオン軍の全面戦争が開戦する。
そのさ中、サイド7に潜入したジオン軍のシャア少佐麾下の部隊は、地球連邦軍が開発した人型兵器=モビルスーツを発見。これらの破壊を目論むが、その中の1機であるガンダムにより返り討ちに遭う。
偶然によりガンダムのパイロットになった少年アムロを始めとする民間人や、新兵ばかりを乗せた連邦軍の新造戦艦ホワイトベースは、シャアの追撃をかわしつつ地球を目指す……といったお話。
もはや説明は不要、国民的アニメ作品と呼んでもいいほどのポジションに就いた“ガンダム”の最初作です。
…と言いたいですが、今回鑑賞した『~特別版』とは正確には最初作ではなく、最初作のビジュアルはそのままに(映像のリマスター作業は行われているようですが)音声だけを再録音した、音限定のリメイク作品なのです。
…しかしながら、多くのオタクは自分の原体験を汚される事を過剰に毛嫌いする人種なので、変更された音に関して否定的な意見が数多く見られました。
お金が掛かった割には評価を得られないという不毛なリメイク企画です。
DVDでようやく劇場版ガンダム3部作が発売する報せを聞いてテンションが上がったものの、オリジナル(音声)版ではなく、この『~特別版』と知って買い控えをした人も少なくないと思います。日本語吹替版を収録しない『Mr.BOO!』みたいなもんですね(笑)。
そんな前例を知っているはずなのに、よくもまぁ同じ真似を繰り返したな、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』のDVDorBlu-rayよ…。
俺ッチは『~特別版』の存在については肯定的です。
今後発売される映像ソフトは全て『~特別版』仕様になるとか言い出したなら、何かしらの反対運動に参加したでしょうがね。
現在のようにオリジナル版と『~特別版』が共存できているのであれば、『~特別版』は余興とか映像特典くらいなものと捉えればいいんですから。
その上での感想は人それぞれになるんでしょうがね。オリジナル版はほぼ自分の血肉と化しているような身であれば(笑)、新しい解釈として楽しめるバージョンに思えます。
オリジナル版は1981年、『~特別版』は2000年の作品という事で、約20年の隔たりがあるわけです。
『~特別版は』キャストの芝居に関してダメ出しをする人も多いですが、声優=人間にとっての20年って確実に老けが表れるし、そんな状態で20年前の自分の物真似をしろと言われても完コピなんかできるわけないんですよ(限りなく近い事ができているのは古谷徹さんと古川登志夫さんくらい?)。
能天気に「『~ガンダムORIGIN』で1年戦争を、キャストはそのままでリメイクして!」とか言っている人をよく見掛けますが、この初代劇場版ガンダムのオリジナル版と『~特別版』を聴き比べてみれば、もう少し現実が分かってくるんじゃないかな。
が、20年という年月はただ老けるだけの時間ではなく、その間にも声優の仕事を続けている人も多かったと思います(同役を続投している人が多いのが証左)。
つまり本作は、20年という時間を掛けて熟練した声優の芝居を楽しめるという実に贅沢な作品なんですよ。
そもそもオリジナル版と全く同じ脚本とキャストによるリメイク作品って、映画史レベルで皆無な存在じゃないかと。
声優にとっても、当時の力量や解釈不足により20年前ではできなかった事に再挑戦できる機会を与えられるという、珍しくも面白い企画だったと思うんですがね。
…まぁ、本音としては「このセリフ、生きてるうちにあと何回やらされるんだ」と感じている人がほとんどだったと思いますが(笑)。
キャストが新録音するにあたり、やむを得ない事情で変更になった役もあります。
鬼籍に入った方だけでなく、オリジナル版は1人が何役かを担当する事例も多々あったしね。チョコを貰い損ねた子供とか、キシリアに文句を言えよ、みたいな(笑)。
…けどね~、アムロの母であるカマリアは倍賞千恵子さんに続投して欲しかったなぁと。顔出し俳優のアニメ芝居にありがちな違和感はないに等しいです。
アニメバカは“顔出し俳優=アニメ声優としてはド下手クソ”という固定概念で凝り固まっていますが、エンドクレジットを見なければ本家の(アニメ)声優と遜色ないと思うどころか、声優を本業とする人だと思うんじゃないかな?
まぁ、倍賞さんがこの役をどこまで覚えているかが気になるところですが(笑)。
若い頃はロボットばかりに目が行っていたものですが、歳を取るほど人間ドラマに妙味を感じるようになりました。
中でも、アムロとフラウの距離がどんどん離れていくのが切ないんですよ。時折見せる、フラウの寂しそうな挙動なんて特に。
今作ではせいぜい年上の女性マチルダに鼻を伸ばすアムロに焼きもちを焼く程度ですが、次作以降のアムロはニュータイプへ覚醒→人に非ざるような人に進化していきます。隣近所の幼馴染という、ごくごく近しい存在ではなくなっていくんですよね。
余談ながら、劇場版『機動戦士Ζガンダム』はこの真逆で、主人公カミーユが色んな女性に気を散らせながらも(笑)、最終的には最も近しい人の処に戻るのがほっこりします。
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そんなこんなで、オススメまではしないけど、あくまで余興として話のネタになる『~特別版』が見れるのは、今では↑のBlu-rayボックスだけじゃないかな?
配信版もなさそうだし、むしろ貴重な存在にすらなりつつあるようにも思えるので(プレミアにはならないけど)、確保する価値はあるかも?