『羊たちの沈黙』を観ました。
女性の皮を剥いだ挙げ句に殺害する凶悪犯バッファロー・ビルの捜索に手を焼くFBIは、この事件に関して、監禁病棟に収監されているレクターという男に協力を仰ぐため、実習生のクラリスを派遣する。
レクターは人肉を食べるような異常者でありながら、一流の精神科医であった。クラリスに手を貸す気になったレクターは、その分析力でビルの犯人像を推測する。
一方、ビルは新たな獲物を捕らえていた。娘を誘拐された上院議員の母親は、犯人逮捕に協力すれば恩赦を与える事を条件に、直接レクターとの交渉に乗り出す。
移送された先で厳重に監禁されながらも、レクターは警備の一瞬の隙を突いて脱走し……といったお話。
大雑把にしか分かり得ませんが、犯罪の特徴や傾向、そして犯罪者の心理を推測しながら犯人像を割り出す捜査方法=プロファイリングという言葉が世に知られ始めたのは90年初頭でしょうかね、その背景には確実に本作の影響があったはずです。
現実的にどこまで有効なのかは分かりませんが、本作や『セブン』のように、何かの法則性を以て犯罪を重ねる人間を探し当てるにはもってこいというか、作劇に向いた捜査方法に思えます。
それよりも遥かな昔、ロンドンのベーカー街に住んでいる有名な探偵がやっていた推理や捜査も、実はプロファイリングの走りかもしれませんが…。
クラリスを演じたジョディ・フォスターさんが一気に跳ねた事でも有名な作品ですよね。
久々に観ると、まだまだ若くて可愛らしくすらありますが、凛とした雰囲気も持ち合わせているのは昔からだったんだなーと実感します。まだ実習生という設定にもピッタリです。
そんなクラリス=初々しい女子が地道に捜査を続け、ベテランのオジサンたちを出し抜いて確実に犯人に近付いて行くのも痛快です。
そんなクラリスに助言を与えるレクターは、まさに主役を食ってしまいがちな濃いキャラです。
一見、凶悪犯とは微塵とも感じさせない紳士的な振る舞いを見せておきながら、もう一つの、本当の顔を秘めているというギャップが恐ろしい。瞬きをせずにギョロッとした視線で相手を見るアンソニー・ホプキンズさんの怪演は今見ても怖いですからね、アカデミー主演男優賞を獲るほどに、当時は斬新なキャラだったんでしょう。
クラリスばかりが強い女性の象徴として見られがちですが、あまり話題にならないものの、ビルに捕らえられたキャサリンもなかなかに図太く抵抗の意思を見せます。
それまでのビルの手口を見知りする限り、犠牲者の女性はあまり抵抗もできずに殺された感じがしますが、キャサリンはただ殺されるのを待つような弱い女性ではなく、形勢逆転を図るようなしたたかさを持ち合わせているんですよね。
キャサリンの頑張りが実を結ぶのかどうかを見守るのも、本作の小さな見どころに思えます。
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Blu-ray版は、予告編&吹替版収録といった程度の最低限仕様で、メニュー画面すらナシ。
メイキングやドキュメント等には事欠かない作品なのになー…。
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