観た、『戦略大作戦』 | Joon's blog

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『戦略大作戦』を観ました。

 

第2次大戦下、敵地よりナチスの将校を連行してきたケリー。尋問をする中、ケリーは将校の鞄から鉛を装った金塊を見つけ出す。どうやら、この先にあるクレアモントという町の銀行には、ナチスが押収した大量の金塊が眠っているというのだ。

金塊の強奪を目論んだケリーは、金塊の山分けを条件に、唐突に休暇を与えられた小隊の仲間と共にクレアモントを目指す。

しかし、小さな町と侮っていたクレアモントには、重戦車タイガーが3台が待ち受けていて……といったお話。

 

本作は1970年の作品で、60~70年あたりのアメリカ映画は第2次世界大戦を舞台にした作品が多く作られ、ほとんどが史実に基づいたドキュメント風ドラマ=ドキュドラマになっています。

そんな中、第2次世界大戦というノンフィクションを背景にした、荒唐無稽なフィクションのドラマも作られ、そこにジャンル分けされるのが本作です。他に思い付くのは『ナバロンの要塞』とかですかね。

ここで感心するのは、フィクション=でっち上げのドラマどころかコメディ寄りの作品でありながらも、登場する兵器や戦闘シーンに実物を使う点。

どうせ嘘っぱちのドラマなんだからとミニチュアによる特撮に逃げたりしないんだから、本気度が違いますよ。ある意味において、スゲー贅沢な作品なのです。

 

本来の任務をすっぽかし、金塊を巡って戦う兵士を描いた内容ですが、この時点でコメディですよね。あからさまな嫌らしい笑いではなく、クスリと笑わせる程度のサジ加減が絶妙なんです。

クライマックス、ケリーら3人が並んでタイガーに歩み寄るシーンだけは爆笑していいシーンですが。クリント・イーストウッドさんの前歴を知っていれば、ありゃ笑わずにいられませんよね。

 

コメディではあるけど、実は人間の感情をリアルに描いているんですよね。

兵士だって人間、自分の国の勝利というおぼろげなもののために戦う対価として貰える月並みな月給より、今すぐ自分のものになる大金に目が眩むのは当然だし、どうせ命を懸けるなら独善的に使いたいじゃないですか。

不本意に死なせられるかもしれない軍務なんか二の次に、まずは自分の欲望を優先して戦う男たちが愛おしいんです。

 

俺ッチは戦車マニアではないけど、タイガーとシャーマンくらいはどうにか覚えているレベル(近頃は“ティーガー”と呼ぶの?)。戦車マニアな方々には、この2車種が多めに映るのが見どころかもしれません(いわゆるツィンメリットコーティングもよく見える)。

チト調べたところ、戦時中にはタイガーに遭遇した連合軍兵士がその威力にビビッて、“タイガー恐怖症”なんてのを引き起こしたようです。今となっては大袈裟で漫画的に思えますが、それほどまでに脅威、かつ恐怖を与える存在だったんでしょう。

本作にはそれに近い描写があり、銀行のある町=クレアモントには敵がいるという程度であればやる気はそこそこに進軍するものの、そこにタイガーがいるという情報が付加された途端に顔色を変えるあたり、これを表したものなのかな?

 

『許されざる者』でオスカーを獲ってからというもの、世間での、特に映画界ではイーストウッドさんはやたら神格化されているように見えます。確かに、監督としてもいい作品を作りますしね。

けど、そんなターニングポイントである『許されざる者』より前の作品を観てきた人であれば、イーストウッドさんは少しくらい根性がひねくれた役の方がよく似合うと感じる人も少なくないと思います。

このケリー役も決して優等生なキャラではないので、安心して観て下さい。

 

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Blu-ray版は映像特典は予告編のみ、かつ吹替版もない、ド最低限仕様です。

まぁ買うなら1000円未満が妥当でしょうかね。