観た、『ブルーベルベット』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『ブルーベルベット』を観ました。

 

入院した父を見舞うため、田舎町のランバートンに帰郷した大学生のジェフリーは、道端で人間の耳を拾う。顔馴染みのウィリアムズ刑事に相談し、さっそく警察が調査を始めるが、ジェフリーは好奇心を抑えずにいられない。

ウィリアムズの娘のサンディから、クラブ歌手のドロシーが関連している事を又聞きしたジェフリーは、ドロシーのアパートに侵入する事を計画。

侵入には成功したものの、即座に見つかってしまったジェフリーはドロシーと関係を結ぶようになり、そのさ中、フランクという男がやって来る。身を隠しながら二人の関係を見つめるジェフリーは、特にフランクの異常性に慄然する。

ドロシーの夫と息子がフランクに捕らわれている事を知ったジェフリーは、危険な世界に足を踏み入れ……といったお話。

 

『サイコ』『羊たちの沈黙』『セブン』……これらの作品に登場する犯人の人格は、少なからず世間を騒がせましたが、本作に登場するフランク・ブースも彼らに比肩するほどの異常っぷりを見せます。

極端な短気で誰彼構わずに殴りつけるような暴力性を持ちながら、歌に感極まって涙を流したり、母親に甘える幼児のような面を見せたりと、異常というより、何だかよく分からない人です(笑)。

ただ、危険極まりない人物である事は確かで、一瞬も気を許せない恐ろしさがあります。

演じているのがデニス・ホッパーさんってのも絶妙なキャスティングです。ホッパーさんの代表作……と呼ぶには世間一般の受けは良くない役でしょうから、ベストワークとしてカウントするなら本作のフランクは上位に入る役だと思います。

 

ちぎれた人間の耳、歳上の人妻、精神の破綻した男、サディズムとマゾヒズムが交錯する男女の関係、クローゼットの隙間から覗き見する情事、人一倍の好奇心から倒錯した世界にのめり込む青年……本作の特徴的なワードを並べてみましたが、なるほど、どこか既視感があると感じるのは、江戸川乱歩さんの作風(もしくは世界観)に通じるものがあるからなんだなと。

監督&脚本のデヴィッド・リンチさんが乱歩さんを知っているという話も聞かないし、本作は完全にリンチさんのオリジナル作品なんですが、時代や世界を隔てても、似た感性を持った人間がいるものなんですね~って、俺ッチが勝手に両者を結び付けているだけですが。

 

本作がソフト化される際、その多くに“オリジナル無修正版”という文言が添えられます。

まぁ、多くの男子は“無修正”というワードに過敏に反応しそうなものですが(笑)、そんな期待に添うかのごとく、劇場公開時や古いソフト等に加えられていたであろう修正=ボカシはありません。

得てして、多くの映画におけるヌードとは美しく描かれるものですが、本作におけるそれは、むしろ目を背けたくなるんですよね。嫌悪感すら感じるような。

それを顕著に表しているのが終盤の、ドロシーが一糸まとわぬ姿で現れるシーンです。

これは公開当時には物議を醸したそうで、確かに一見すると胸クソ悪くなるシーンに思えますが、この時のドロシーの心情や状況は簡単に読み取れるはずです。この辺で興奮できる人は、人格(正確には性癖)に問題があると思いますが…。

 

本作は全編に渡って異常な世界や壊れたキャラが登場しますが、本作で唯一まともなのが、ジェフリーと親密になるサンディです。

フランク(やドロシー) は暗闇で、サンディは光に例えられる人です。

そんな暗闇に足を引っ張られそうになるジェフリーですが、幸せの象徴であるコマドリの話を喜々とするような、無垢なサンディの存在があるからこそ正気を保っていられるんですよね。光と闇の間で上手くバランスを取れているというか。

初めは顔見知り程度だった二人が、お話が進むに従って親密になって行くのは定番な展開で、正~直、なくてもいいエピソードに感じますが(笑)、この辺を鑑みると、やはりサンディは不可欠なキャラなんです。

余談ながら、ジェフリーとドロシーの関係を知った時に見せる絶望の表情、特にドラえもんが困った時に見せるような口は必見です(笑)。

 

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あら、配信版はないのね。

Blu-ray版の映像特典は、当時を振り返るインタビュー集が見どころでしょうかね。主演キャスト(デニス・ホッパーさんさえもが!)が総登場するのはいいですね。

本作を嫌悪する評論家が息巻く討論番組の一部も収録されていますが、この当時から、ああいうメンド臭い連中はいたんだな。

ちなみに、吹き替え音声はありません。