『ワールド・イズ・ノット・イナフ』を観ました。
大手石油会社であるキング社の社長ロバートが殺された。
MI6では元KGBのテロリストであるレナードが真犯人であると推測。さらにレナードにはロバートの娘であるエレクトラを誘拐した前科もあった。
ロバートと親交のあったMは個人的な感情を抑えつつ、この件に関する調査をボンドに命じ、まずはエレクトラの警護に就かせる。
自分の身に危険が迫っているのを知りながらも奔放に振る舞うエレクトラに手を焼くボンドだったが、いつしか二人は身も心も通じ合う仲になる。
エレクトラの護衛役であるダヴィドフがレナードと通じている事を突き止め、彼に成りすまして核廃棄場に向かうボンド。レナードを発見するものの、ボンドは核弾頭の解体に長けたクリスマス博士に正体を見破られた上に、レナードに核弾頭を奪われてしまい……といったお話。
007シリーズの19作目です。
5代目ボンドを演じるのも3作目になり、もう確実にボンドのイメージが板に付いてきたピアース・ブロスナンさんも、今作で一つの頂点を迎えます。
今作で注目すべきは、だらしない女性との接し方は毎度お馴染みながら、それが悪女であれば躊躇う事はない冷徹さ。ブロスナン版ボンドが女性に対して、ここまで非情な顔を覗かせるのは初めてではないでしょうか?
これまでに悪のボンドガールは何人かいましたが、その多くは殺し屋程度の立ち位置でした。
今作で登場するエレクトラはボス級で、色んな意味でボンドを苦しめます。
これを演じるのがソフィー・マルソーさんという、絶妙極まりないキャスティングが嬉しいですね。もし自分がボンドだったら、スパイを辞めてもいいかな……と思う男性諸氏は決して少なくないんじゃない?
エレクトラとは逆に、こちら側のボンドガールはクリスマス・ジョーンズというヘンな名前の人です(笑)。
これを演じるのがデニーズ・リチャーズさんで、個人的にはこちらにも大喜びなんですが、世間一般的にはあまり受けがよろしくないようで…。
確かに公開当時、“色々と発育したアメリカ娘というルックスで科学者なんかに見えるはずがない!”と、評論家の人たちが口を揃えて批判していたのを思い出します。
…評論家を気取るからには星の数ほどの映画を観ているだろうに、分かっていないというか、浅いよね。
俺ッチであれば、「そこがいいんじゃないか!」と豪語しますよ。
らしくない外見がギャップを生じ、そこから唯一無二の個性的なキャラが産まれるって事が分かれないんでしょうか?と。
髪は七三分け、三角メガネを掛けて白衣を着ていれば正解だとでも思っていたんでしょうかね?
本作の隠れボンドガールはMじゃないでしょうか?
ジュディ・デンチさんが演じるようになってからのMがMI6の建物の外に出るのって珍しい事だし、安全な場所から命令するだけでなく、窮地を脱するための知恵も持ち合わせていて、意外と行動派なんですよね。
後の、ダニエル・クレイグさんが演じる作品では、ずいぶんアクティブに行動していますがね。
音楽=劇伴を担当するのは、前作から引き続きデビッド・アーノルドさん。
最新の機材を駆使しつつもメロディはどこか懐かしいというか、いかにも007シリーズっぽさを感じさせる作風は、まさに90年代に復活した新生ボンド映画に相応しく、あのテーマを積極的に取り入れるんだから、よく分かってますよね。
正確には、90年代に復活した最初の作品『ゴールデンアイ』を担当したのはエリック・セラさんですが、こちらは違うそうじゃない感がハンパじゃなかったので、アーノルドさんに交代してもらって大正解。
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Blu-ray版はいつもながらに映像特典満載、中でもQを演じたデズモンド・リューウェリンさんの追悼映像にはしんみりします。茶目っ気もあり、気のいいお爺ちゃんだったのに……残念です。
ところで、何だよこの↑Blu-rayの価格の下落っぷりはよ、中古かと思ったよ。去年あたりの、どんでもないプレミア価格が懐かしいなぁ。転売とはチト違うけど、足元を見た値段には変わりないですが。
欲しいどころか、揃えたい人は今がチャンスなので、お早めに!