『超獣機神ダンクーガ』を観終えました。
宇宙からやって来た侵略者ムゲ・ゾルバドス帝国。その圧倒的な戦力に地球軍は手も足も出ず、地球が支配されるのも時間の問題だった。
そんな中、イゴール将軍が率いる特別組織に配属される忍、沙羅、雅人、亮。
彼らは野獣のごとき本能を戦闘力とする獣戦機に乗り、反撃を開始。
ゾルバドス帝国に寝返った沙羅の恋人シャピロを相手に、獣戦機隊の戦いは続く……といったお話。
本作が放送された1985年頃のロボットアニメと言えば、とっくに『機動戦士ガンダム』の影響下にあり(しかも『~Zガンダム』と同年だったとは…)、変形はアリでも合体ロボはガキっぽいとされる空気がありました(スーパー主観ですが)。
そんな頃に生まれたのが本作で、やっぱり子供向けなのかなと思いきや、アニメ雑誌を見ると意外に評判がいい。どんなものかと一見してみたら、これが意外と面白く、こうして令和の今でも好きな作品として心に残っているわけです。
何が面白いかと言えば、あまりにアクが強い獣戦機隊の面々のキャラ性。
正統派ロボットアニメの例にもれず、やってる事は正義の味方に違いないんですが、優等生が一人もいないんですよ。どっちかと言えば不良に近い感じで、ならず者が集まったような部隊です(笑)。
けど、善悪の境を見分けられないようなクズでもなく、悪い奴らに対しては野獣のごとき本能を剥き出しにして戦う姿が熱いんです。
タイトルになっている“ダンクーガ”と呼ばれるものが何なのか、1クールを過ぎてもヒントすら登場しないのは、今でもよくイジられますよね。
スポンサーでもあるバンダイという会社がこれを許していたのって、今でなくても意外すぎる珍事です。これがガンダムだったら1話から出せと言うでしょうし(笑)。
ダンクーガという合体ロボになってしまえば、いよいよ主人公になったも同然で、見どころがここに集中しすぎてしまう。となると、ダンクーガを構成する獣戦機=4機のメカ単体(での活躍)は単なる前座に過ぎなくなり、メカキャラクターとしての獣戦機の魅力も半減してしまう。
そうなる前に、各獣戦機を存分に活躍させて見せ場を作っておこう――という思惑があったかどうかは知りませんが、序盤は獣戦機の見せ場が多いんですよね。
ダンクーガに合体できるようになってもワンパターンに毎話ごとに必ず合体させないあたり、獣戦機も大事に扱っている配慮すら感じます。
ちなみにダンクーガへの合体シーンは作画や動き(回によっては劇伴も含めて)のレベルが高く、今の目で見ても昭和アニメだからと侮りがたい、実にダイナミックで燃える映像です。
獣戦機は3~4モードに形態を変えられ、それら全てをなかなか見せない焦らし方も良かったです。
副読本やオープニング&エンディング等といったネタバレ要素=先行情報を完全に排除し、あくまで本編のみを見ているだけなら、まだ知らない形態が出てくるの?というワクワク感やサプライズも味わえたと思います。
イーグルファイターの機体底面にある人間の掌を模した形状が何を意味するのか、劇中で指摘しても良かったんだぞ、忍よ…。
今の目で見ても意外、かつ現代まで続くロボットアニメの黄金パターンをブッ壊しているのが沙羅の扱いです。
本作におけるレギュラーの根幹となるのは獣戦機隊の4人で、沙羅はいわゆる紅一点の存在。男(社会)に囲まれた唯一の女性という立ち位置でありながら、それを色眼鏡で見るように扱っていないのは新鮮です。
特にロボットアニメには多いじゃないですか、男が多いチームの中にいる女性キャラだけは体の線や肌を出しまくるような異端な衣装を着てたりとか(笑)。
けど、沙羅の場合は他の3人と同じ戦闘服に身をまとい、男の子アニメとしては珍しくセックスアピールのないキャラなんですよ(安っぽく入浴シーンとかないのも好印象)。
跳ねっ返りのジャジャ馬キャラってのもあるけど、他の3人も沙羅が女だからと手加減する事もなく、男女同権のごとく常に対等に接するのもいい。
このおかげで獣戦機隊には足を引っ張るような、見ている側としてもイラッとさせるキャラがいないのは気持ちがいいものです。世界を守るためロボットに乗って戦う作品に登場する女性キャラに、“メス”の要素は要らないという事です。そういうのは他所でやってよと。
…あ、俺ッチは“ふぇみにすと”と呼ばれる、世の中を混乱させてハシャいでいるような志の低い連中とは違いますので、誤解のなきよう。
演じる声優の力演も見どころ。つーか、聞きどころ。
個人的に、本作は矢尾一樹さんと若本規夫さんの発掘の場でした。
矢尾さんにはどこかで聞いた声という先入観がなく、これまでに聞いた事がない声と芝居がキャラとマッチしていたせいか、当時のアニメ雑誌等でも人気があった覚えがあります。
忍の代名詞でもある「やってやるぜ!」は矢尾さんの芸と曲解し、本作の後に演じたニュータイプの少年の台詞でもこれが出ないかなーと勝手にやきもきしていた、若かりし頃のアニメバカだった俺ッチです(「やってやるぞ」がニアピンだった)。
もう一方の若本さんと言えば、ナルシストな役を演じさせたら右に出る者がいないと思わせていた塩沢兼人さんとは異なる、野心メラメラなナルシストを巧みに演じていました。
ちょっとマイナーな役ですが、シャピロは間違いなく若本さんのベストワークの一つですよね。
今や楽天専属の声優として(?)クセの強い言い回しが染み付いてしまったのか、今でもたまに演じる人造人間の役にかなりの影響を与えているようなので(笑)、それを考えるとシャピロはもう演じられない役の一つでしょうね…。
一応、真の最終回=OVAとして公開された39話まで観ましたが、個人的にはこれにて『~ダンクーガ』というお話は完全に完結したと思い込んでいます。
特に忍は、小説版『機動戦士Zガンダム』のカミーユの結末を思い出しました…。
***********************
***********************
***********************
***********************
『~ダンクーガ』の全てを楽しみたいなら↑↑↑&↑↑が良いと思います。
↑は比較的安い上に全39話(39話はOVA扱い)とOVA作品『白熱の終章』を収録しています……が! 『GOD BLESS DANCOUGA』を収録していないという理不尽に耐えられない人にはお勧めしません。何やソレ…。