『黄昏のチャイナタウン』を観ました。
未だ探偵を続けているギテスは、バーマンから妻キティの浮気調査を依頼される。
しかし浮気現場を目の当たりにしたバーマンは激昂のあまり、相手の男ボディーンを射殺してしまった。
ギテスはバーマンに恩赦を与えてもらえるよう働きかけるが、ボディーンの妻リリアンはこれに納得が行かない。
その後、ギテスはバーマンとボディーンは建設会社の共同経営者であった事を知る。さらに調査を進める中、キャサリン・モウリーという名が挙がる。それはギテスにとって忘れられない事件に関わりのあった人物で……といったお話。
要約すると、不倫から始まった殺人事件を調査する中で、前作の事件が関わってくる話です。
その名の通り『チャイナタウン』の続編。
前作は1974年、今作は1990年と、16年ものスパンを開けているんですよね。ちなみに劇中だと1937年→1948年=11年後のお話です。
ジャック・ニコルソンさんもだいぶデプッとして(笑)貫禄が付いただけでなく、ギテスとしても辣腕な名探偵のようで、自社ビルを建てられるほどに繁盛しているようです。
前作で辛い体験を味わったけど、だからって鞍替えするほどヤワじゃないんですよ。
前作はチト分かりにくい作品でしたが(それ故、何回も観るうちに面白さが増してゆく)、今作でもやっぱり難解です(笑)。
一度観てみて分かんなかったので、間を開けずに再見に臨んだのは『三つ数えろ』以来です。
何が分かんないかって、登場キャラが割と多く、名前と顔が一致しないのは難しい映画あるあるですが、今作の場合は名前の呼び方問題が加わります。
役のフルネームが“○○・□□”だったとして、場合によって○○呼び、もしくは□□呼びをするんだから紛らわしい。登場キャラのフルネームを把握しておかないと置いてけぼりを食らいます。
唐突に「ナイスだよ」とか言われても、褒めてるようにしか聞こえないでしょ(笑)? 正解はミッキー・ナイスというキャラを指しているんですが…。
もう一度見たくなった時は、事前に登場キャラのフルネームをおさらいしておくとといいですよ。
前作と比べると面白くないと感じる人が多いようで、もしかすると“つまらない”というより“分かりにくい”方が上回って低評価を下しているように見えます。
まぁ、分かんなけりゃつまらないと感じるのはむしろ自然な話なので、そんな審判があってもおかしくはないんですが…。
ただ、ストーリーの難解さや複雑さは前作よりパワーアップしていると感じます。
ついでに言うと、小説等を原作した映画化作品ではなく、劇場オリジナル脚本によるストーリーとしてこれだけの事をやっているんだから、もう少し評価されてもいい作品だと思うんですよ。
原題の『The Two Jakes』が『黄昏のチャイナタウン』という邦題になったという事で、“黄昏”はさておいても“チャイナタウン”要素がどこにあるんだ?と感じた人もいるでしょうが、これにより前作『チャイナタウン』の続編である事は一目瞭然。
そもそも前作だって『Chinatown』というタイトルが相応しいかどうかもビミョーでしょ(笑)!
それはさておき、原題である『The Two Jakes』の通り、本作には主人公のジェイク・ギテスと依頼人のジェイク・バーマンという“二人のジェイク”が登場します。
タイトルにもなっているものだし、単に同じ名前のキャラがいるってだけでは終わりません。
クライマックスの予審では事件の盗聴テープが流され、その中にジェイクの名を呼ぶ声が録音されていますが、ここで“二人のジェイク”の存在が活きてくるんですね。捻りが利いたトリックです。
ギテスがそんなトリックを使わざるを得なかったのは、キャサリンを守りたい一心から来たもの。
シニカルでドライだったギテスがこうまでお優しくなってしまった事を嘆く人もいるかもしれませんが、決して冷血漢ではありませんでしたからね。10年前の辛い体験がギテスを丸くさせたのかもしれません。
もう一人のジェイクを演じるのはハーヴェイ・カイテルさん。
この人を知っている人であれば、準主役の時点で真犯人は確定でしょと思っちゃうよね(笑)。ギテスの調査にも全面的な協力はせず、どこか後ろ暗いものを秘めている感じだし。
…という先入観を以て観ると、意表を突かれます。
どこかふてぶてしい態度は、妻キティを本気で愛していながらも、自身に秘めた秘密を打ち明けられない悲しみを隠すためでもあるんですよね。キティを絶対に守りたいという男意気は泣けます。
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Blu-ray版は映像特典は一切ナシ。原作のない作品だからこそ、解説も兼ねたドキュメンタリーとかが欲しかったですね。
吹替版を収録しているのが、まぁ救いかな?
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