『私は告白する』を観ました。
神父のローガンは、教会で働くケラーの告白を聞く。強盗をした挙げ句にビレットという男を殺してしまったというのだ。
神父への告白の内容は他言できないという戒律を順守するローガンは、いても経ってもいられずにビレットの家に向かう。そこでは既に警察が現場検証を始めていて、ラルー警部はローガンがルースという女性と話しているところを見逃さなかった。
殺人が行われた時刻について、目撃者の証言からローガンに嫌疑が掛けられる。取り調べの質疑にもまともに答えようとしないローガンをますます怪しむラルー。
ローガンの事情を知ったルースは警察に向かい、彼の無実を晴らそうと二人の過去を語り始めるが……といったお話。
教会には告解室という、神父に懺悔や悩みを打ち明けるための小さな相談部屋があります。
いかなる内容だったとしても、神父はこれを決して誰にも漏らしてはならない――それが殺人という法を犯すものであったにしても、身の潔白の証明に必要だったにしても、誰にも話せない神父ローガンの苦悩と災難を描いたお話です。
こういう葛藤を描いた作品って好きなんですよね。
監督はアルフレッド・ヒッチコックさん。冤罪の男が助かるかどうかという作風は、お馴染みのシチュエーションですね。
クライマックスの裁判のシーンは、いかにもアメリカ(人が好きそうな)映画っぽいな~と感じますが、ヒッチさんらしくない感じがしますね。
当時、主役であるローガンを演じるモンゴメリー・クリフトさんは“最も美しい顔”とか言われていたようですが、なるほど納得ですね。“イケメン”なんて言葉より、“ハンサム”と呼ぶ方がしっくり来ます。
古い映画にも、確実に美男美女は存在する事を証明するのもヒッチコック作品の特徴でしょうかね。
そんなローガンは真実を知っていながらも、決して口を割らないどころか言い訳っぽい事もしないし、神父という職業を忌避する様子も見せないのが男らしいというか、時代を感じますね。
この辺、最近の作品なら女々しいモノローグが入りますよ…。
実際に殺人は犯していないし主人公補正もあるので(笑)、ローガンは一応は無罪放免となります。
クロに近いグレーだったけど、決定的な証拠&証言がなかったためにシロになれた。裁判長もモヤッとするような事を言ってましたしね。
これでめでたくハッピーエンド……のはずなんですが、裁判所から出てきたローガンを待っていたのは、この事件に注目する大衆からの白眼視と非難。
これって、ある意味における恐怖ですよね。本作で最も考えさせられるシーンだと考えています。
近年、特に有名人がネットでの誹謗中傷に対し訴訟を起こすなんて話題が事欠きませんが、なら自分は攻撃されにくい手段を採っていたの?とか思うんですよ。見ないようにするとかブロックするとか。
何かしらの問題を起こした上で裁判にまで発展している時点で、たとえ結果としては無罪だったにしても、その人の今後の信用や人望に何かしら影響が出てくるのは当然でしょう。
「あなたの勝訴(or無罪)は確定した……でも本当に?」と懐疑の目を向ける人は決して少なくないはずです。“火のない所に煙は立たぬ”というかね。
法(や多少の人情)を以て相手を徹底的にやっつけるのは結構だけど、違う種類の敵が増えるという意味でも、裁判所なんて気軽に行っていい場所ではない事は自覚しなきゃですよね。
余談ながら、本作と似たような、困り事を聞いてしまったものの、誰にも相談できずに苦悩する神父を描いた、『司祭』という作品があります。
シチュエーションは似ているけど、本作よりも現実的で、かなりスキャンダラスなお話です。
聞き流していい情報ですが、これは俺ッチが観てきた映画の中で、感情移入の度が強すぎる作品です。
好きではあるけど生涯に何度も観るものでもない、大袈裟な言い方をすれば生涯のベスト1映画と言い切りそうになるくらい。
世の中には「相談に乗るよ?」なんて言葉を掛ける人もいますが、こういう作品を観てしまうと、実に安っぽい“優しい人アピール”に思えます。
他人の悩みを聞いてしまった時点でもう他人事ではなくなるというか、聞く責任すら起こり得ますから…。
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スゲー昔にDVD版が発売されましたが、当時の目で見ても画質が酷すぎるんですよねぇ。
Blu-ray版が出て欲しいけど、日本での知名度が低かった頃のロバート・カーライルさんを売りにするだけではチト弱いかな…。
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Blu-ray版の映像特典は、本作を振り返るインタビュー集と予告編。吹替版はありません。