『オクトパシー』を観ました。
ロシア王室に献上したという宝飾品ファベルジュ。MI6の諜報員OO9は重傷を負いながらも盗み出す事に成功するが、巧妙にできた贋作だった。
本物のファベルジュの卵がオークションに出品されると知り、これをソ連の資金稼ぎと睨んだMはボンドに調査を命じる。
オークション会場に向かったボンドは、莫大な額で卵を落札したカマルに目星を付ける。
インドに飛んだカマルを追うボンドは、カマルの助手であるマグダと一夜を共にした際、彼女が“オクトパシー”と呼ぶタコのタトゥーを見つける。
どうやら“オクトパシー”とは人名であり、ボンドはカマルが恭順するオクトパシーと出会う。オクトパシーは、かつてボンドに名誉を救われた男の娘だったのだ。
一方、ボンドと親密にするオクトパシーを尻目に、ソ連のオルロフ将軍と何かを共謀していた……といったお話。
お馴染みOO7シリーズの第13弾。
前作『ユア・アイズ・オンリー』では原点回帰というか、ちょっとハード路線に走りましたが、今作では(ロジャー・)ムーア版ボンドとしての通常運転に戻りました。
戻ったのはいいんですが……今作は正直なところ、ややパワーダウン気味に感じました。
毎度のごとく、確実に見どころと呼べるシーンは確実にあります。ストーリー的にはもちろん、1本の映画としても十分に面白いはずなんですが、鑑賞後に残るものが少ない。
これは、OO7作品としての印象が薄いからなのではなんでしょうか?
数あるOO7シリーズの中でもベスト1orワースト1に選ばれる事がない(と思う)、いや、ベスト5orワースト5にまで広げても今作が挙がる事はなさそうな気がするんです。
軍縮に反対するソ連のオルロフ将軍が核を使ってアメリカを焚き付けようとする、という悪の企みもスケールがデカくて、映画としては盛り上がるはずなんです。
密輸ダイヤと核爆弾をすり替え、サーカス団の巡業をカムフラージュに使うとか、リアルでは有効な計画でしょうが、映画的にはスケールが小さすぎます(笑)。
OO7シリーズの一つの魅力として、世界各地の風光明媚な風景を楽しめる点が挙げられます。
今作における、その場はインド。
映画であまり登場しない国ほどエキゾチックというか、異国情緒を感じますよね。特にタージマハールを初めとする建築物が新鮮です。
さらに、インドの女性用の民族衣装=サリーを着たキャラがワンサと出てくるんだから、目が潤います(笑)。チト露出が多いのは、notインド人の外国人キャラが着ているせいかな?
そんなサリー美女は、本作のボンドガールの1人であるマグダ(=クリスティナ・ウェイボーンさん)。カマルの秘書的なキャラですね。
ボンドに近付く敵側の女でしたが、後半になると一気に影が薄くなってしまうのが勿体ない…。
長い布を巻く衣服であるサリーを利用して、バルコニーから落下するシーンをクリスティナさん自身でこなしているとは!
本作が公開された1983年は、ジェームズ・ボンドを主役に据えた作品がもう一つ現れます。
『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』ですね。
初代ボンドを演じたショーン・コネリーさんがボンドに2度目の復帰、かつ自身の主演作をリメイクした作品で、しかも本家の公開にタイミングを合わせるってんだから、今になって考えるとの当て付け以外の何物でもない作品ですよね。
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コネリーさんもコネリーさんで、もう嫌だとかウンザリだとか言っておきながら、またもボンドを演じるんだから、実はボンドが大好きなんだと公言しとけば良かったのに(笑)。
そんな志の低い枠品だからか(?)、少なくとも興行収入では本家に敗北します。何のしがらみもない単作の映画としては、それなりに面白かったかもしれませんがね。
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いつも通り、Blu-ray版は映像特典満載です。
当時を振り返る回顧録的なものもありますが、当時のメイキング映像が多々あるのがいいですね。本編とはまた違う面白さがあります。
つーか、これを見ているとロジャー・ムーアさんの人柄に惹かれますね。常にジョークやイタズラばかりやってるお茶目さんです。どんだけ気さくな大スターなんだよ(笑)。
なるほど、こういう人が演じるんだから、愛されボンドになるのも当然ですよ。
ムーアさんが今作に出演しない可能性が出たので、ジェームズ・ブローリンさんという方が代役として話が進んでいたようです。
この時のカメラテスト、ブローリンさんがボンドとして、今作でオクトパシーを演じたモード・アダムスさんがタチアナ・ロマノヴァを演じる様子が収録されています。
…ん? 何だろう、この既視感?と思えば……これは『ロシアより愛をこめて』の1シーンの再現じゃないか!
こんな感じで、ヘタすれば本編よりも興味深い映像や言及が多いのも、今作の映像特典の特徴です。
ところで、最近になってようやくBlu-rayの値段が安定してきましたね。