『疑惑の影』を観ました。
サンタ・ローザの街に住むニュートン家に、叔父のチャーリーがやって来るという報せが入る。
叔父チャーリーに対して親戚以上の憧れを感じる姪チャーリーは、退屈に感じていた毎日から解放され大はしゃぎ。
ある日、叔父チャーリーの滞在に喜ぶニュートン家に、家庭調査をする2人の男がやって来る。男らの正体は刑事で、別の町での連続殺人事件の容疑者である叔父チャーリーを追ってきたのだ。
刑事の1人であるグラハムからこの話を聞いた姪チャーリーは否定をしつつも、独自の調査で叔父チャーリーが犯人である事を確信してしまい……といったお話。
まずは、↑の粗筋を一読して「叔父チャーリー?」「姪チャーリー?」と思うでしょうね。叔父と姪が同じ名前なんですよ。
これは映画史全般において他の例を知りませんが、主役の男女が同じ名前という作品は思い付きません。
叔父と同じ名前で姪が嬉しがる描写としては効果的でしたが、その他に関しては特に必然性は感じなかったかな。
序盤ではあれだけ懐いていたどころか、ヘタすれば親戚以上の感情を抱いていた姪チャーリーですが、叔父チャーリーが殺人犯の容疑者であったと知った瞬間、それまでの想いが一気に消えてしまうのが生々しいですね。百年の恋が一気に冷めた感じで。
殺人事件には2人の容疑者がいましたが、姪チャーリーは決定的な証拠を掴んでしまい、もしかしたら容疑が晴れるかも?という期待は完全に消え失せます。
それまでの明るい彼女の姿は一転、叔父チャーリーに対してよそよそしい態度を取るようになるあたりから、お話はサスペンス要素が強くなっていきます。
前半の仲良し家族のシーンばかり見せられて(叔父チャーリーのダークな面は少々描かれていたけど)、“ヒッチコック映画”を楽しみにしていた人は肩透かしを食っていたでしょうが(笑)、ここからが本番です。
叔父チャーリーは紳士的に見えて、相当に闇を抱えた人です。
社交性があるように見えて、ブラックなジョークでやや周囲を引かせることもしばしば(笑)。
実は殺人鬼である叔父チャーリーですが、殺人シーンは一切見せないのに、どうやって殺したかを想像させる見せ方は、さすがヒッチコックさんです。
特に、姪チャーリーとレストランに行った際、手持ち無沙汰気味にテーブルにあるお手拭きを弄り始めるシーンは秀逸。てるてる坊主のような形にし、無意識に首に当たる部分をねじりまくるあたり、ただ金のみが目当てではない、殺人を享楽としているであろう事が想像できますよね。
殺人シーンをダイレクトに見せずに犯人像を臭わせるあたりが巧いですよねぇ。
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