『ロープ』を観ました。
とあるアパートの一室。
ブランドンとフィリップは、これから行われるパーティーを前にデヴィッドを殺し、死体を隠す。
招待客が続々とやって来る中、挙動不審気味のフィリップに対し、ブランドンは何食わぬ顔のままパーティーは進む。
しかし、2人の恩師であるルパートは彼らの挙動に疑問を抱き……といったお話。
本作の最大の特徴と言えば、1カットの長さ。
フィルムの、1リールの長さの限界により10~20分くらいでカット切り替え、もしくはシームレスに見せる工夫をしていますが、可能なら全編1カットが理想だったんでしょうね。
全編1シーン1カット風に見せていますが、突然ルパートに切り替わるカットと、アパートの屋上から地上を見下ろすオープニングクレジットも含めば、正確には2シーン&3カットになります。
ここで思うのが、“映画”の定義。
本作の本来の姿は全編1カット。アパートの1室から一歩も出る事なく物語が進む様は舞台劇のそれと同じです。
映画と舞台劇は違うものですが、であれば、舞台劇をフィルムに写せばそれは映画になり得るのだろうか?と。
近年は減少気味ですが、何年か前までドキュメント映像を映画として、かつ映画館で公開するという風潮が流行していた事を鑑みれば、それもアリなんでしょうね。もっと古い時代に遡れば、ニュースを映画館で公開(?)していた頃もあった事だし。
始まって早々に殺されるデヴィッドですが、婚約者ジャネットとイチャついた後に再会を約束するシーンが予告編にありますが、本編にそんなシーンはありません。
予告編というと本編の寄せ集めというイメージがありますが、本編の前日譚をドラマの一部として見せる手法も新鮮です。
自身が登場して解説したりと、ヒッチコックさんの作品は予告編も見逃せないんですよ。
撮影技術云々を抜きにすれば、密室劇での犯人捜し。
これは脚本のアーサー・ローレンツさんも言っていましたが、本作の失敗は真っ先に殺人シーンを見せてしまった事にあると。
ブランドンとフィリップは本当に殺人を犯したのか? チェストの中にデヴィッドの死体はあるのか?
これらの答えが既に分かりきっているから、あとは死体の入ったチェストをいつ開けるかにスリル要素が残っているくらいで。
フィリップが締め損ねたニワトリが生き返ったというエピソードトークが出ましたが、これを伏線に、デヴィッドが実はまだ……という展開も面白かったかもしれませんね。
個人的には、ルパートが二人の挙動を怪しむに至るまでが、やや唐突に思えたのが引っ掛かったかな。
本作は1948年の、アルフレッド・ヒッチコックさん初のカラー作品。
言い換えれば、それだけ古い作品です。
現代の、現実に即したガッチガチに科学的な根拠下での推理作品に疲れ、たまには描写の甘いレトロなサスペンス作品が観たいという人には、ヒッチコックさんの作品を一度は見てみるのもいいかもしれません。
ただ、古っちいとは言え、今の視点で見ても新味に感じる描写は多々あると思います。
特にラストの、生きるべき人間と死んでいい人間の境についての力説は考えさせられますね。
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Blu-ray版は映像特典満載です。
シャープになった画質は良いんだけど、フィルム傷の修整が甘いのが気になったかな?