観た、『恐怖の報酬』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『恐怖の報酬』を観ました。

 

その街では昼間から男たちが何をするわけでもなく、辺りをフラフラしている。遠い故郷に帰りたいものの、職にあぶれて旅費を作れない――マリオもそんな男たちの中の1人だった。

マリオは街に流れて来たジョーと知り合い、同郷のよしみから意気投合。ジョーの度胸や気っぷの良さに惚れ込み、兄貴分と慕う。

ある日、街から近い石油工場がトラック運転手を募集する。遠方にある油田で火事が起き、油井ごと破壊するために使用するニトログリセリンを2台のトラックで運ぶというのだ。

マリオとジョー、ビンバとルイジらは高額な報酬と引き換えに、危険なニトロの運搬役を引き受ける。

かくして2台のトラックは出発した。道中には数々の困難が彼らを待ち受け……といったお話。

 

本作は1953年の作品。

もちろんモノクロ、画角は4:3、挙げ句に153分=2時間33分という長編です。

若い人でなくても、長尺のクラシック作品ってキツくない?と思いがちですが、休憩を挟む事なくイッキに観終えられました(体調が良かったのもあるけど)。

出発するまで1時間くらい掛かっていて、そこまでが退屈しそうですが、そこからはスリルの連続で見入ってしまいます。

 

早く本題に入ってくれと言いたくなりそうですが、出発するまでの1時間は決して無駄ではなく、特に主役格であるマリオと、特にジョーのキャラを知っておくための、いわば“フリ”です。

ジョーは大物っぽい身振り素振りやハッタリだけでなく、度胸もある。ルイジに銃を向けられても動じる事なく追い返せるんだから、マリオが畏敬の念を抱くのも分かります。このシーンで、ジョーは銃に弾が入ってない事を事前に知っていたと(後から)解釈しますが。

ジョーを兄貴分と慕っていたマリオですが、いざ2人でトラックで出発してから立場が変わります。

ジョーが街で見せていた余裕は一切失せ、いつ爆発をしてもおかしくないニトロの運搬にビクビクしているばかりで、挙げ句にはマリオを見捨てて自分だけで逃げ出そうとする始末。

かつては尊敬していた人間の凋落っぷりにガッカリするのを通り越して、怒りすらぶつけるマリオとのパワーバランスの逆転が面白く、前半の1時間でマリオとジョーの関係をじっくり見せているからこそ、さらに深みが加わるんです。

 

トラックで荷物を運ぶという事で、俺ッチが大好きな『トラック野郎』を想起しますが、もちろん&全く毛色が違うお話です。本作で遭遇する道中の困難も、“ここ、桃さんだったら飛んじゃうんだろうなぁ…”とか思ったり(笑)。

そんな、『トラック野郎』(の世界)でなら起こせる奇跡的なドライビングテクニックは、本作で披露される事はありません。

だって特撮を使ってないんだもん(笑)。

古い作品は特撮技術が低いからこそ、本物でやらざるを得ないんでしょうが、本物を使っての迫力は新旧を問う事はありません。本物というだけで説得力があるんですよね。

中でも、ぬかるんだ路面でタイヤが空転して前進できないというシチュエーションは飽きるほど見てきましたが、そこからテールが(左右に)振られる画は、俺ッチが思い出せる限りでは本作しかありません

さらに、トラックのアオリにある、幌を引っ掛けるためのフックの使い方も上手い!

 

本物と言えば、マリオたちが向かう先の油田で起きている火事も本物なんですよね。

あの火の大きさや勢いは、たとえモノクロであっても迫力を感じるどころか、恐怖すら感じます。

撮影でも劇中でも、どうやって鎮火させたんだ、あれ…。

 

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Blu-ray版は映像特典は一切ナシのドケチ仕様。映像はさすがに綺麗(な方)ですが。

70年近くも昔の著作権切れも近い作品にもかかわらず、本編のみの収録で定価が5000円以上ってんだからボッてるよなぁ。