『RONIN』を観ました。
パリに集った5人の男たち。
かつて世界各国で危険な仕事を生業にしてきた彼らは、ディアドラより何者かが持っているケースの強奪を依頼される。
高額の報酬と引き換えに仕事を受けたものの、敵の正体やケースの中身等、秘密が多い事を訝しむ男たち。
そして入念な作戦の元、いよいよ襲撃を開始。激しい追跡や銃撃戦の挙げ句にケースを奪ったと思いきや、それは偽物だった。
裏切りや暗躍に翻弄されながら、転々とするケースを追う男たちは……といったお話。
ただ一言、スゲー男臭い作品です。
女性レギュラーはディアドラだけで、甘い会話や濡れ場なんて(ほぼ)皆無なのが良いんですよ。
女とイチャついてる時間があるなら話を進めてよ?と思うような作品って多々あるじゃないですか? ああいう寄り道で興が醒める事が多いので、そんなフラストレーションを感じさせないだけでも嬉しい。
軽薄なキャラもなく、冗談らしい冗談も出ないし、実に硬派な作品です。
本作のトピックは、ロバート・デ・ニーロさんとジャン・レノさんの共演ですかね。他でも共演していそうだけど、気になる人はセルフサービスでお調べを。
主要キャストではないながら、個人的にはショーン・ビーンさんやジョナサン・プライスさんあたりが出演している方が見どころを感じますね。
ただ、ビーンさんに関しては、早めの退場で残念。
「…いやいや、わざわざ(と言えるほどではないかな)ショーン・ビーンを起用しているんだよ?」と思うでしょ? ちょっと意外なその後の動向は、各自でご確認を…。
平たく言ってしまえば、あの手この手でケースを奪おうとする5人の男(とディアドラ)のお話、それだけですが、アクションシーンは白熱します。
特筆すべきはカーチェイスで、かなりのスピードを出しているのは一目瞭然。ローアングル気味に映しているので、なおさらに迫力を増します。
市場の辺りの車1台分しか通れない道やら、国道(?)の逆走やら、特に後者は1カットが非常に長く、どんだけ入念に打ち合わせや練習をしても、実際に車を運転している人であれば、ああまでやるのは簡単ではない事が直感的に分かると思います。
『マトリックス・リローデッド』でも似たようなシチュエーションがありましたが、あからさまにCGを使うような作品でない分、緊張感は段違いです。
集まった5人の中の1人であり、本作の主役格であるサム。
明確に語られる事はありませんが、二手三手と先を読むような立ち居振る舞いが、歴戦の猛者である事を物語ります。
サムを演じるデ・ニーロさんが実に良いんてすよ。設定や衣装等、歳相応のルックスに関しては最高レベルに感じます。
“渋みがある”とか“いい俳優”とか言われる事は多々あるけど、デ・ニーロさんが“カッコ良い”と言われる事って、ありそうで少なくないですか?
って事で、個人的にデ・ニーロさんが一番カッコ良く見える作品は?と聞かれれば、間違いなく本作を挙げますね。
タイトルの“RONIN”とは“浪人”の事で、開巻早々、仕える主を失った侍であるとの解説が入ります。
今風に言えば、手に技術を持て余していながら勤め先がない、要は無職です(笑)。
依頼主であるディアドラの裏切りに遭い、あれだけ必死こいてやってきた仕事や報酬を失ってしまったサムらは、まさに“ローニン”。
かつて浪人は、食うために剣を捨てる者もいましたが、誇りを捨てずに侍でいる事を続ける者もいたと言います。
雇い主の裏切りに遭うだけで浪人呼ばわりするのは短絡的ですが、たとえ見返りがなくても一連の出来事の最後を見届けようとする心意気は、“サムライ”に限りなく近い“ローニン”なんじゃないかと思います。
そんな浪人について、サムにウンチクを語るのは、仲間のビンセント(演じるのはレノさん)のセーフハウスに住まう、赤穂浪士をリスペクトする男(ジャン=ピエールという名前だそうな)。
「まーた外国人が日本を曲解している…」とか思われがちですが、本作のスタッフはキチンと勉強をしているなと感じたのが、ジャン=ピエールが見せる切腹のジェスチャー。
おそらく日本人の多くは、切腹のジェスチャーをやって見せるとすると、刃物を腹に突き立てるだけで終わると思いますが、ジャン=ピエールは左から右に向かって動かしているんだから正確です。
日本ではとっくに廃れた文化ですから知らない人が多いのも当然でしょうが、下手すれば外国人の方が詳しくなる日も、そう遠くなさそうに感じますね。
ちなみに、俺ッチは『暴れん坊将軍』から教わりました(笑)。
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Blu-ray版は、吹き替え音声と予告編しか収録されていない、最低限仕様です。
浪人をモチーフにした理由について語るような映像特典でも欲しかったなぁ。