『マジンガーZ対暗黒大将軍』を観ました。
世界の主要都市を襲う謎のロボット軍団。東京にも現れたそれらを迎撃するため、甲児はマジンガーZで出撃する。
かつて相手にしていた機械獣とは比べ物にならない強さを誇る戦闘獣に苦戦を強いられるマジンガーZ。その頃、光子力研究所にも現れた戦闘獣により、甲児の弟シローが重傷を負ってしまう。
辛くも戦闘獣を撃破した甲児は研究所に戻り、甲児の輸血によりシローは一命を取り留める。
祖父・兜十蔵の遺品を調べたところ、ミケーネの暗黒大将軍が率いる7つの軍団こそが戦闘獣の正体だった。
暗黒大将軍の片腕である獣魔将軍と共に再来する戦闘獣軍団。圧倒的な力量差に怖れを抱きつつ、甲児は修理も済んでいないマジンガーZで出撃するが……といったお話。
誰かの窮地に颯爽と現れるヒーローは、勧善懲悪モノのお約束めいたシチュエーションです。
が、そのヒーローまでもがピンチに陥るどころか、コテンパンにやられてしまったら…?という掟破りの展開が魅力です。
さっきはあれだけやられていたのに、次のカットになると無傷(笑)というのは、アニメではよくある演出破綻、別名・手抜きですが、本作におけるマジンガーZは、むしろ無傷でいるカットの方が少ないくらいに満身創痍の身を晒します。ロボットでありながら、痛々しささえ見えてくるんですよね。
もはや滅びの美学すら感じますよ。
本作で登場するロボット群で、強い順で言えばグレートマジンガー>戦闘獣>マジンガーZ>>>>>ボスボロット&ダイアナンAとなりますが(実は壊れる事がなかったボロットは強い部類に入るのかもしれない)、これらの力量差を描く演出もいいんです。
無敵のスーパーロボットたるマジンガーZが放つ必殺武器を、避けて、弾いて、壊しさえする戦闘獣は圧倒的な強さを誇ります。効かない事を知りつつ、それらを繰り出すマジンガーZが健気で健気で(笑)。
なぶり殺しのごとく、着実にマジンガーZにダメージを残していく戦闘獣の攻撃力も強烈です。
そんな重い空気を一転させるのがグレートマジンガーで、ようやくこちら側がゆとりある反撃に転じられるようになります。
マジンガーZが四手五手も掛かって戦闘獣一体を倒していたのに対し、グレートはせいぜい一手二手程度の手間で、次々に戦闘獣を撃破していく様はカタルシス全開です。
マジンガーZをさんざん痛め付けた武器が、グレートには一切通じないのも痛快。特に戦闘獣バルマンの指から出るミサイルを掌一つで弾き返すシーンは震えます。
大決戦前夜のシーンも秀逸。
てやんでぇコノヤロー的にブイブイ言ってきた甲児でしたが、圧倒的な強さを誇り、しかも複数体で襲ってくる戦闘獣の群れを前にしては、さすがの甲児も躊躇いを隠せません。
出撃するのが怖いと呟くほどに、弱々しい表情を見せる甲児の姿は新鮮です。
発進直前、さやかはシローからの誕生日プレゼントを甲児に渡し、去っていきます。
絵コンテの段階では、ここで2人がキスをする予定だったらしいですが、これは不採用で正解。
甲児とさやかって、“いつ恋人になってもおかしくない友人”という距離感だと思うんですよ。キスどころか、好きだとか愛してるだとかペチャクチャ喋ったりもしないけど、絶対そうだろうと分かりますよね。
たまーに、こういった大人を唸らせるシーンをブチ込んでくるんだから、大人が見てもいい作品なんですよ、きっと。
大人の、一部の映画マニアをも唸らせるのは画面サイズの使い方。
おそらくアニメでは珍しい、画角が横に長いシネマスコープサイズを採用していますが、このワイドスクリーンを最大限に生かした、画面の左右の幅を使い切った構図は実写映画にも匹敵するどころか、そこまで使う実写映画は少なかったでしょう(おそらく不自然な配置になってしまいそうだし)。
本作を観た時点では気にならなかったんですが、『グレートマジンガー』本編を何話かでも観てしまうと鉄也と剣造のキャストが違う事に違和感を抱きます。
まぁ、やってる事は『マジンガーZ』本編の最終回と同じようなものなので、もう一つの最終回とかなんとか、今風にこじつけて納得するようにしましょう…。
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↑↑の配信版は分かりませんが、↑のBlu-ray版の画質はあり得ないくらいに綺麗です。一見以上の価値はあると思います。古い絵柄の最新アニメなんだぜ?と言っても、疎い人が相手なら騙せそうなくらい(笑)。