観た、『キャリー』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『キャリー』を観ました。

 

暗くて気弱なキャリーは、今日も学校でいじめられてばかり。

そんなキャリーは、精神を集中させると物を動かせる超能力を秘めていた。

キャリーへのいじめをコリンズ先生に注意されたリーダー格であるクリスやスーは、キャリーへの報復を思い付き、ボーイフレンドであるトミーに、近々行われるプロムには自分ではなくキャリーを誘わせる。

そんな企みに気付かないキャリーは、渋々トミーの誘いを受けながらも、小さなときめきを感じていた。

プロム当日、キャリーは厳格な母親の反対を振り切り、トミーと共に会場に向かう。

トミーとのベストカップルに選ばれ、至福のひと時を喜ぶキャリー。しかし、その裏で進められる企みが明らかになった時……といったお話。

 

平たく言えば、いじめられっ子のお話です。

どんな時代にもイジメは存在し、そんな悪習は未だに生き残り、断言するけど、これからも絶える事はありません。

“現代のイジメは昔のそれよりも陰湿だ”と言う年寄りは多いですが、そもそもイジメ自体が陰湿なものであり、最新式のイジメこそが最も陰湿なのです。

1976年の作品である本作で描かれるイジメも、当時からすれば陰湿であり、残酷極まりないものだったんでしょう。

ハッキリ言ってしまうと、本作のクライマックスで執行されるイタズラは、現代であればバラエティ番組における罰ゲーム=笑って済ませられる程度のものじゃん?と捉えられてしまうんでしょうが、時代と共に人間が寛容になったのやら、鈍感(=バカ)になったのやら…。

 

本作と言えば、キャリーが力を解放するクライマックスが有名です。

キャリーを虐げてきた連中が報いを受けるシーンは、シチュエーション的にはカタルシスを感じさせるはずなんですが、何故か痛快さは感じさせません。

“自分をナメてる連中をブッ潰したい”という殺意より、“自分を取り巻く環境に対処できなくなった”が故の、どうにも抑えきれなくなった感情の暴走に思えるんです。

あれを怒りの爆発と捉えるのが一般的なんでしょうが、だとすれば唯一の味方である人にああいう仕打ちはしないでしょ? 普通の人はストレスを怒りに昇華させることができますが、ストレスをストレスのまま鬱積させてしまう不器用さがキャリーの性格なんじゃないかと。

それ故、いいぞもっとやれ的に気分が高揚する事もなく、ただキャリーが平静を取り戻すのを見守る事しかできないのです。

 

その辺も相まってか、一般的なホラー映画であれば“面白かった”とか“怖かった”という感想も出るんでしょうし、それも間違ってはいないんですが、個人的には観終えた後で、やや胸クソ悪くなる作品に感じます。

ハイスクールの女子更衣室で、キャリーはシャワーを浴びている最中に初潮を迎えてしまい、その辺の知識が皆無なものだからパニクってしまいます。

居合わせたクラスメイト達は、からかい半分にナプキンを投げ付けたりしますが、大勢が寄ってたかってたった一人を、しかも全裸のままの女子を虐める画は、思春期の男子ですらイヤな気分になるんじゃないかなぁ。

冒頭からこんなだから、繊細な人は10分も見てらんないでしょう(笑)。

さらに言えば、キャリー以外のたった一人を除き、キャリーと関わる登場人物のほぼ全員がクズというのも、救いのない作品なんです。

 

キャリーは自分でも変わり者である事を自覚していますが、その根っこにあるのは母親の存在。

狂信的なカトリックである母による、押し付けがましい信仰を盾にした虐待のせいで、キャリーがああいう性格になってしまったのは想像に難くありません。

特に語られる事はありませんが、そんな環境下で抱く自由への渇望が、キャリーに超能力を与えたのかもしれませんね。

ディテールは違えど、この辺のシチュエーションは『ヤヌスの鏡』に通じるものがありますね。

 

本作ではキャリーのヌードシーンが多めです。

何も身に付けていないキャリーの姿は実に弱々しく、今にも消え入ってしまいそうな儚さの象徴にも見えますね。

これがあるおかげでキャリーというキャラの薄幸さが強まり、見ている側も同情するというか辛い気分になってしまう、つまり感情移入してしまうのです。その極みがリンチシーンでもあるんですが。

…あれを見て下半身をムズムズさせてる奴は、あのプロムに参加しろ!

 

監督はブライアン・デ・パルマさん。

クリスらのイタズラを発動(?)するまでに至るシークエンスは、この頃からさすがです。

いつロープを引っ張るかと、今か今かと焦らされている間の、ハラハラする時間が長く感じてしょうがない(笑)。

これが後年の『アンタッチャブル』における、駅の階段のシーンにも繋がるんでしょうね。

 

わざとメイクでそうしているんでしょうが、正~直、キャリーはブスです(笑)。

その上、顔や体中にニキビだかソバカスだかがあり、“お化けキャリー”とか呼ばれるのは、この辺にも理由があるのかもしれません。

性格も暗くて、常に下を向いているような辛気臭いオーラを出しているんだから、いかにもホラー映画の主人公に相応しいナリです(笑)。

そんなキャリーさん、トミーとプロムに参加するって事で、ちょっとしたメイクをします(リップ程度ですが)。

ぶっちゃけ変化に乏しくはあるけど、プロムでトミーやコリンズ先生と会話をするシーンのキャリーは(普段よりは)可愛く見えませんか?

それと言うのも、ちゃんと相手の顔を見て、口角も上がった笑顔を見せているからなんですよね。

顔を“見る”だけならともかく、顔を合わせて“話す”相手としては、スンと澄ました美人よりも、愛想の良いブスの方がモテると思うんですが……どうでしょ?

自分はブスだと思い込んでいる世の中の女性の皆さんは、ホラー要素は二の次に、これを参考にするために本作を見てみて下さい(笑)。

 

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Blu-ray版の映像特典には、スタッフや出演者が本作を振り返るドキュメンタリーを収録しています。

ああいうのって、個別にインタビューに答えるばかりで、一堂に会しているわけではないけど、ちょっとした同窓会みたいですよね。

レギュラーキャストが総登場する中、やはりジョン・トラボルタさんの姿がないのは容易な想像通りです…。