『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』を観ました。
ローマの下町で悪事を働くエンツォは、川に投棄されていた放射性物質を含んでしまう。
復調したエンツォは兄貴分であるセルジョの仕事に付き合う事になるが、そこでセルジョは殺され、エンツォもまた高所から転落してしまう。
しかしエンツォは生き延びた。どうやら先の物質を含んだ時から、並外れた剛力と素早い治癒力を身に付けた超人になってしまったようなのだ。
そんな折、エンツォはセルジョの娘アレッシアがジンガロと仲間たちに襲われているのを救い出す。アレッシアはアニメ『鋼鉄ジーグ』に没入しており、自分を救ってくれたエンツォに『鋼鉄ジーグ』の主人公・司馬宙[シバ・ヒロシ]を投影する。
エンツォの悪行は変わらず、ネット上で超人的な力を持つ“スーパークリミナル”として知名されてしまう。それを妬むジンガロは、エンツォとアレッシアに近付き……といったお話。
ハワイは『人造人間キカイダー』、ブラジルは『巨獣特捜ジャスピオン』、フランスは『UFOロボ グレンダイザー』、そしてイタリアでは『鋼鉄ジーグ』が、下手すれば今でも人気だそうです。
我々日本人からすれば真っ先に、「なぜ今時に『鋼鉄ジーグ』っ?」と(笑)。
イタリアで受けていたのが『~ジーグ』だっただけの話で、正直、勧善懲悪のアニメであれば何でもいいと思うんですがね。
ただ、よくよく考えてみると『鋼鉄ジーグ』の頃の勧善懲悪を描いたアニメって、普通の人間がロボットに乗って戦う作品は多々あれど、自身が変身する作品って実は少ないんですよね(他には『デビルマン』くらい?)。一応は等身大ヒーローって事で、『~ジーグ』は本作のキーとなるには絶妙なチョイスなのです。それでも古いけど。
ビミョーな日本語のタイトルも目を引きますよね。
また日本の配給会社がテキトーな邦題を付けやがってと思ったものですが、これは本編中のタイトルバックにもキチンと併記される、れっきとした原題なんです。日本人が勝手に挿入したわけではなかったんですね。
もちろん本編にも力を入れていますが、サブカルを含めた日本の文化が好きなだけでなく、しっかり学んでいる姿勢も垣間見れて好印象です。
本作のヒロインであるアレッシア、この子こそが本作を非凡にしている、愛すべき張本人です(笑)。
特に詳細に語られる事はありませんが、母親を亡くしたショックを和らげるために『鋼鉄ジーグ』に依存したんでしょう。
それがエスカレートして虚実の境が付かなくなっているような、けっこうヤバい子です。何しろ、最初の一言が「あんた、アマソの手先?」ってんだから、もはや鳥肌モノですよ(笑)。
昨今の日本ではプラモ女子だの一眼女子だのプロレス女子だのと、圧倒的に男性(かつオジサン)に多い趣味を嗜む女子が増えているようですが、アレッシアはおそらく、否、絶対にいないと断言できるジーグ女子です。
DVD-BOXをあんなに愛おしそうに抱きしめる女子なんて、日本はおろか、世界中を探しても2人といないでしょう(笑)。
…と、ジーグばかりに目が向いちゃうけど(笑)、本来はそれを抜きにしても十分楽しめる作品です。
主役のエンツォは小悪党のチンピラで、得てしてこの手のシチュエーションだと、超能力を手に入れて心を入れ替えるというお決まりのパターンですが、力を悪用してばかりで、後半になってもなかなか真面目になりません(笑)。
エンツォは家族も友人も皆無に等しく、アレッシアに出会ってようやく人間的な感情に目覚めます(エンツォが笑顔を見せる遊園地デートのシーンはほっこりしますね)。悪人度は低めのエンツォだったからこそ、ベタベタな正義感全開ではないにしろ、どうにか改心できたんでしょう。
アレッシアを煙たがりつつも、それまでは全く興味のなかった『鋼鉄ジーグ』に興味を持ち始めるどころか、DVD-BOXまで買っちゃうあたりが可愛いですね(笑)。
エンツォは超人的な力を身に付けますが、それが圧倒的な剛力と素早い回復力という事で、まぁ爪がないウルヴァリンみたいなものですね(笑)。
ただ、あそこまで無敵仕様ではなく、切断された部分はどうにもならないあたりが節度があって良いんです。
**********************
**********************
**********************
**********************
↑↑のBlu-ray版は未公開シーンや予告編、ガブリエーリ・マイネッティ監督の短編(本作との関連性はナシ)が映像特典として納められています。
吹き替え音声が収録されていないのが残念でしたね。劇中で僅かに流れる『鋼鉄ジーグ』本編の吹き替えを古谷徹さんにお願いするという、贅沢なキャストを期待していたんですが…。
↑はサントラ。
本作のエンドロールに流れる歌は、イタリア版『鋼鉄ジーグ』=『JEEG ROBOT』のオープニング曲をバラード調にしたもので、これがなかなかいいアレンジ。
しかも歌っているのはエンツォを演じたクラウディオ・サンタマリアさん。主役を演じるのみならず、まさか今日び昭和のアニソンを歌う事になるんだから(笑)好印象ですよね。