観た、『パットン大戦車軍団』 | Joon's blog

Joon's blog

どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『パットン大戦車軍団』を観ました。

 

第2次世界大戦下のチュニジアで、連合軍はドイツ軍に大敗を喫する。

アメリカ軍のブラッドレーに代わる指揮官としてパットンが着任。顔馴染みであるブラッドレーを副官に据え置き、たるみ切った兵士を鍛え直し、チュニジアの解放に成功する。

イギリスの名将モンゴメリーに対抗意識を燃やすパットンは、イタリア戦線において次々に戦果を上げるが、その強引な作戦はブラッドレーのみならず、多くの味方からひんしゅくを買う事になる。

ある日、野戦病院を訪れたパットンは戦闘を恐れる兵士に激怒、力ずくで追い出してしまう。

しかし、この一件は本国に広く知れ渡り、本国より謹慎を命じられるが、戦線で戦う事を諦めきれないパットンは……というお話。

 

ジョージ・パットンさんという名前くらいは聞いた事がありますが、第2次世界大戦の頃のアメリカの将軍です。

若い頃、タイトルの“大戦車軍団”という熱い響きに釣られて観てみましたが、そこまで大戦車軍団ではなかったのもあって、けっこう眠気を誘う作品に思えました(笑)。いい加減な邦題を付ける配給会社よ、テメーらの浅ましい奸計に乗せられてやったぜクソ。

けど、いい歳にになって再見してみれば、意外に面白いんですよ。

60~70年代のハリウッドの、史実に基づいた系の戦争映画は戦略&戦闘シーンこそ多いけど、人間ドラマについての描写は希薄な点が退屈に感じます。“ドラマ”というより“戦記”と呼ぶ方が近いんでしょう。

本作はパットンという主人公ありきの戦争映画ですから、ドラマをメインにした上で戦争(or戦闘)シーンも両立させる作風のおかげで面白く感じるのかもしれません。

 

邦題にもなっている通り、戦車による戦闘シーンは主なる見どころです。

実際に戦車の砲撃→着弾を見せているシーンはかなり少ないんでしょうが、実は本物?と思わせるくらいの、半端じゃなさそうな火薬量が強烈です。何しろジープが舞い上がっちゃうんですよ?

映像が古臭いと感じる人も、CGやミニチュアといった特撮を使っていない(ようにしか見えない)、本物さながらの戦闘シーンには迫力を感じるはずです。

戦車マニアな人は、このクオリティの戦闘シーンを延々と見たかっただろうなぁ。

 

それまでは守りより攻めの精神でブイブイ言わせていたパットンさんですが、野戦病院で神経衰弱気味の兵士をブッ叩いた瞬間に、その絶頂期は終わりました。

この件が報道関連に知られるところとなり、世間の声というヤツがパットンを批判する事になるんですが……パットンさん気落ちしないで下さい、未来の世界では“炎上”なんて言葉が使われるようになり、似たような不幸に見舞われる有名人はゴマンといますから(笑)。

パットンを批判する意見は1割、かつ全て匿名ってんだから、この手の卑小な連中は約80年前から世の中に湧いていたんですね。新聞の風刺イラストよろしく、曲解された事実を鵜呑みにしてムキになるような排他的な人間の、何と多い事よ。

殴打する直前の、亡くなった兵士を真摯に看取ってやった事に関しては何も評価されていないんだろうね。勇敢に戦って死んだ者と怯えて戦おうとしない者、これらに差を付けざるを得ないのは上官としても仕方ない事だし。

そもそも、ちょっと殴られただけでパワハラとか大騒ぎし出すような軍隊じゃ、もっとシビアな戦いである戦争になんか勝てないよね。仲良しスポーツじゃないんだし

 

この事件(と呼ぶほど大袈裟なものではないのにな)を境にパットンの境遇は一転、最前線から外されただけでなく、自らの部隊を取り上げられ、隠居の様な生活を送るようになります。

その後、ブラッドレーの温情により戦線に復帰しますが、ここからのパットンは多少変化が見られます。

序盤ではダラけきった兵士を一喝するような、そこにいるだけで空気がヒリつくような存在感でしたが、兵士とフランクに話すくらいに目線を下げるようになりました。

冗談を言うようになったり、戦地へ行軍する兵士に混じって一緒に歩いたり、一番の変化は兵士に笑顔が見られるようになった点でしょう。

上から命令を下すだけでなく、実際に戦う現場の人間と共に行動する指揮官の存在は心強いですよね。兵士からしても、上官には違いないんだけど仲間として受け入れられるというか。

鬼将軍から気のいいオッちゃんになったようで、前半より親しみやすいキャラになっています。

 

ダラけていた兵士の性根を叩き直して、キチンと戦果を上げるし、軍人としてのパットンは実に優秀だったんでしょう。

ただ、過激な思想の持ち主なだけでなく、思い付いた事を即座に口にしてしまう癖があるのが良くなかった。戦争を愛するばかりで(殺し合いが好きなのではなく、史実上の戦記にカブれるような夢想癖の一種に思える)、政治に関してはほとんど無学であるが故の放言が玉にキズ。そもそも戦争とは、確実に政治の延長線上にあるものですしね。

大きな功績はあるのに、無学で軽率な言葉で世間からの総スカンを食うパットンは、現代の日本で言えば、森喜朗さんみたいな感じですね(笑)。近年になってようやく追い詰められるようになりましたが、総理大臣に就いても方言癖は治らなかったもんな。

 

************************

************************

************************

Blu-rayの映像特典は、ほぼナシ。

今回は2回目なので吹替版として鑑賞しましたが、本編172分に対し吹き替え音声は170分も収録されているので、ほぼほぼ“完声版”と扱っていいかな?

 

映像特典と呼ぶには物足りないながら、本作の脚本を担当したフランシス・フォード・コッポラさんの前解説があるのは良いですね(水野晴郎さんや淀川長治さんのアレみたいなものです)。

のっけからインパクト大のオープニングが不評でクビにされたとか、ちょっと考えられませんね。本作の象徴ともいえる良いシーンなのになぁ。