『黄金銃を持つ男』を観ました。
MI6に届いた黄金の弾丸、それは黄金の銃を持つ殺し屋スカラマンガからの、ボンドに宛てた物だった。
ボンドの身に危険が及ぶ事を懸念するMは、太陽光線をエネルギーに変える装置=ソレックスの調査を打ち切らせ謹慎を命じるが、ボンドは弾丸を作った男がいるというマカオへ飛ぶ。
スカラマンガについて聞き込みを続ける中、ボンドはアンドレアという女と知り合う。MI6に送られた黄金の弾丸は、スカラマンガの関係を終わらせたいアンドレアによるものだったのだ。
その返礼として、スカラマンガが持っているソレックスを盗み出したアンドレアだったが、裏切りの代償に殺されてしまう。
一度は手にしたソレックスは助手のグッドナイトと共に奪い返されてしまい、これを追うボンドにはスカラマンガとの対決の時が近付いていた……というお話。
OO7シリーズ第9作目である今作。
今回の敵は組織的なものではなく、あくまでスカラマンガという一個人。それ故、ボンドに差し向ける手下がいないのが新鮮です。ボンドと対決したがっているから、その楽しみを他人に奪われたくないという気持ちの表れという解釈もできますね。
そんなスカラマンガは、自分はボンドと同じような存在だと言い放ちます。仕事か趣味(や享楽)かの差があっても殺人者には変わりないという意味で、スカラマンガはボンドの影のような存在なんでしょうね。
スカラマンガはボンドに対して畏敬の念を抱いていますが、ボンドにはそれが一切なく、お互いの気持ちが通い合わないままで終わるのが良いですね。
ロジャー・ムーアさんのボンドはコメディ要素が強いとされていますが、随所でこういうピリッとしたシーンを見せてくれるので、完全なオチャラケ作品に成り下がる事はないんです。
スカラマンガを演じるクリストファー・リーさんがいいですね。ムーアさんも長身に見えますが、それを超えるリーさんの長身もカッコ良いんです。
ところで、今作ではボンドに意外な一面が。
スカラマンガの自宅に着いたボンドの前に、先にさらわれたグッドナイトが、何故かビキニ姿で現れます。
スカラマンガとしては単に武器を隠せないような格好にしただけに過ぎないんですが、これを見たボンドが「失礼な事を!」とキレるんですよ。
普段のボンドと言えば、暇潰し感覚で色事を楽しむような人ですが、実は女性に対するデリカシーはキチンと備えているんだよね。単に女性にだらしないだけの人ではないんです(笑)。
ここからラストまで、グッドナイトはずーっとビキニのままなんですが、それでいて容赦なく爆発シーンも多い(!)んだから大変だよなぁ。『OO7は二度死ぬ』や『ダイヤモンドは永遠に』を思い出します。
まぁ、色々と大らか、かつ、いい時代だったんだなと実感しますね。
ボンドの助手として登場するのがグッドナイト。
前作=『死ぬのは奴らだ』でも同じように、ロージーという助手(というより手伝い程度?)がいましたが、両方ともどこかヌケているのが共通点(笑)。
まぁ、ロジャー・ムーアさんに代わってからのボンドがあんな感じだから、ある意味、適材適所なのかな(笑)。
アクションに関しての特筆すべきは、川を渡るための、車による1回ひねり=360度のきりもみジャンプは外せません。
カメラを数台使ってカット割りを多めに見せるといった、これ見よがしなカットではなく、引きの画で数秒見せただけでサラッと終わるので、何気ないカットに見えてしまいがちですが、相変わらず無謀でバカな事やってんなーと(笑)。先人のこうした挑戦意欲があったからこそ、映画技術は今日まで発展しているんですよね。
ちなみにこのシーン(アストロ・スパイラル・ジャンプと呼ぶそうな)の撮影のために大学のコンピューターを使い、車種選択(!)を含めて入念にシミュレーションされたそうです。本作は1974年の作品という事で、その頃のコンピューターの演算能力なんてたかが知れているでしょうから、まぁ半分以上はアナログの極みである人間の知恵によって作り出されたシーンだと思います(笑)。
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前にも触れましたが、このところのOO7シリーズの映像ソフトの品薄&価格高騰ぶりは一体何事? ダニエル・クレイグさん版の、『カジノ・ロワイヤル』以降の価格は安定しているけど。
↑↑の配信版ですらこんな価格ってのは、チト便乗臭いので、やはりここはBlu-ray版を狙っていきたいですね。映像特典もてんこ盛りだし。