『必殺!5 黄金の血』を観ました。
延金を積んだ御用船が何者の襲撃を受け、水夫らと共に沈没した。
金座・後藤家の千勢は、乗組員の仇を討って欲しいと仕事人に依頼、その仕事料は何と二百両という。
元締めであるかまいたちのおむらから助力を求められる主水らだったが、仕事料の額にキナ臭さを感じる。
予想通り、この話には裏があり、襲撃をしたのは地獄組と呼ばれる暗殺集団で、水夫を皆殺しにした後に延金をとある場所に隠し、金の相場の吊り上げを謀る者がいた。後藤家に仕える三之助と勘定奉行の太田、そして千勢だ。
仕事人から足を洗った政は、水夫の一人である与七の帰りを一途に待つお浅を見守る。
そんな中、既に江戸に潜入していた地獄組は、おむらの配下の仕事人を次々に始末する。事件の真相は徐々に明らかになり、主水らは地獄組に挑む決意をする……といったお話。
テレビ版では世相を反映させた話が多めでしたが(『必殺仕事人』シリーズに限った話だけど)、本作は1991年の作品、当時の日本ではバブルが崩壊したとされる時期でした。
本作で描かれる金の相場の吊り上げやら、それを見越した財テク(←当時はよく見た言葉)とか、この辺の時事ネタを盛り込んでいるあたりに、ある意味の必殺シリーズらしさが垣間見えますね。
花屋やら鍛冶屋やら、手に付いた職が意外に多い政(ちなみに今作では打ち物屋)ですが、今作では仕事人から足を洗っています。
そんな政が、降りかかる火の粉を払うために仕事人に戻るか否かで、秀と対立するシーンも見どころの一つです。
せっかく足を洗ったんだから健全(?)な生き方をしろと政を諭すため、秀は懇意にしている近所のおさだ(と娘)との関係を語りますが、ここはテレビ版『~・激突!』の補填とも言えるシーンです。
金を貰って人を殺すという外道な生き方をしているからこそ幸せな生活は望めないという、自戒を以て罪を償うのが秀の、仕事人としてのイズムなんですね。
劇場版の必殺シリーズは、キャストも注目ポイント。
特に注目せずとも、否応なしに強烈な印象を残すのは、お浅を演じる酒井法子さんです。
元々予知夢のようなものを見るような子で、途中で記憶を飛ばしてしまいますが、この辺りの上手いんだか下手なんだか分からない芝居(笑)が、お浅の境遇にハマりすぎるんですよ。
これに白痴的な美しさも加わり、危うい魅力を発するキャラになっています。
…と感じるのは俺ッチだけでしょうが、揺るがない事実はただ一つ、のりピー可愛えぇっ…!
おむら役の名取裕子さんもいいですね。
何となく、仕事人の元締めは女性が多いイメージがありますが、基本的には上品ですが、たまに出る荒っぽい言葉遣いがゾクッとさせます。ナトちゃん(という呼び方をする人は水曜日にラジオを聞いている人でしょう)もその例に漏れず。
主水のド直球な誘い(笑)のいなし方もいいですね。
今回の敵は地獄組と呼ばれる、裏切り者を抹殺するための暗殺者集団。
放った蝙蝠を先導させる事で暗闇の中でも戦えるとの事ですが、この辺は変身ヒーローの敵役のようで、チト突飛に感じます。地獄組の首領である赤目なんて特に。
実用的にCGを使えない時代だったとは言え、操演による蝙蝠は、一気にリアリティを失っているようで、やや失笑です。もう少し違う設定とか考えられなかったものかなぁ…。
********************
********************
********************
映像特典は予告編のみ。
ですが、繰り言ながら必殺シリーズのBlu-ray版は日本語字幕が収録されているのが、本当に助かります。
近年の時代劇の衰退は製作費が掛かるのみならず、、見る人が減った事が大きいとされていますが、専門用語や社会のシステムが分かりにくいからだと思います。“勘定奉行から老中になろうとする”とか言われても、ピンと来ないと思うんですよ。
聞き取りにくいだけでなく、聞き慣れない言葉がどういう字なのかを知るところから始める意味でも、時代劇のみならず専門用語が多々使われるような作品のソフトには、なるべく字幕を収録して欲しいですね。