『ハンバーガー・ヒル』を観ました。
1965年、南ベトナム。アメリカ軍第101空挺師団にエイショウ・バレーに向かえとの命令が下り、兵士たちの表情が曇る。そこには“ハンバーガー・ヒル”と呼ばれる難攻不落の高地があるのだ。
現地に到着した隊は戦闘を開始するが、噂に違わずベトナム軍は手強く、なかなか高地を奪取できない。
次々に犠牲者を出しつつ、今日も明日も続くこの戦いに終わりは来るのか……といったお話。
今時&今さら戦争は悪だと悟るような歳でもないけど、こういう作品を観れば、“戦争は良くない”というより、“戦争ってイヤだよな”という気持ちになるのが自然だと思います。
命のやり取りに良心を痛めるなんてのは周知の通りですが、もっと低次元な話をすれば、汚ったねーし、痛ぇし、(心身共に)休めねーし、そんなキッチぃ事やりたくないじゃん? いわゆる“3K”な業務に携わっている人たちも、少なくとも寝食に関しては、これらに比べれば遥かにマシな環境下で生活していると思います。
母国を愛する気持ちはあっても、だからって、そんな環境には身を置きたくありません。
それがイヤだと思うから、どんだけ志が低かろうが、これも戦争を否定するには十分な理由となり得るんですよ。
そういう意味で、本作は“反戦”というより“厭戦”映画であると感じます。
ドキュメント系を目指す本作はその辺もリアルに描いていて、擦り傷程度の軽傷じゃ済まない、重傷どころか致命傷の、まるでホラー映画のように目を覆いたくなるようなシーンもあります。
これだけでも痛々しいのに、来る日も来る日も同じ場所で戦闘を続け、負傷者や死者を続出させながら、それでも敵地を奪取できないもどかしさは、永遠に終わらない地獄のようで、もはや悲壮感すら漂います。
隊の人員もどんどん減って行き、どっちが勝つのか、割と最後まで結末が分かんない緊張感がいいですね。
本作のキーとなる937高地=ハンバーガー・ヒル。
いやいや、HILL=丘と呼ぶには勾配がキツすぎです(笑)。むしろ断崖ですって。
登るだけでもヒーコラ言わされる上に、そこで敵の攻撃に晒されるんだから、それだけで難所です。
雨もザーザー降ってる中の侵攻とか、泥で滑ってまともに登れずにゴロゴロと転落するあたり、まるで体当たり系バラエティ番組のアトラクションですよ(そんなコミカル要素はゼロですが…)。
…ところで、“俺たちはここでハンバーガー(orミンチ)にされるんだ!”というセリフからこのタイトルが付いたとされていますが……そんなセリフありましたっけ?
初めはジャングルと呼ばれるほどに木々が密集していましたが、度重なる戦闘や爆撃によってそれらが徐々になくなっていき、最終的に禿山と化すのがゾッとします。
登場キャラが若者ばかりというのも特徴ですね。
上官であってもせいぜい少尉くらいで、将軍どころか佐官すら出てこない。
そのせいか、戦争という重い空気の下でありながら、どこか青春モノという感じもするんですよね。隊員間の交流や衝突とか、達観しきれない青臭さもあったり。
たとえ世間の敵になっても、戦い続けなければならないという苦悩や葛藤は若さ故のもの。ただの戦闘ロボットにはなりきれない、心身ともに足掻き続ける若者の姿も見どころの一つだと思います。
登場キャラ同士の関係性は描かれないに等しいなので問題ないんですが、どれが何というキャラ(名)なのか見分けが付かないのはチトもどかしく感じましたね。
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Blu-ray版の映像特典は、出演者が本作を振り返るドキュメンタリー系映像等に加え、フォトギャラリー的な扱いでベトナム戦争に関する、フランスの植民地時代からアメリカの撤退までを解説した年表があります。
こういう歴史的な背景の解説は、映像特典の企画としてはありがたいですね。無学な俺ッチには大助かりですよ(笑)。
Blu-ray版を買った際は、真っ先にコレを見て時代背景を予習or復習した上で、本編の鑑賞に臨むのがベストな鑑賞方法だと思います。