『街の灯』を観ました。
相変わらず街をフラフラしている浮浪者は、花売りの娘に一目惚れする。
しかし娘は盲目で、浮浪者が富豪の紳士だと思い込まれてしまう。
その夜、浮浪者は自殺を図る男を救う。思い留まった男は浮浪者に感謝し、友人として自宅に迎え入れる。
実は男は大金持ちで、浮浪者は男の助力を得ながら娘の花を買い、2人は徐々に親しくなっていく。
しかし、男が浮浪者を歓迎するのは酩酊状態にある時だけの話で、酔いが醒めると浮浪者の事は全く覚えておらず、屋敷からつまみ出されてしまう。
明朝までに家賃を払わなければ立ち退きをさせられる娘の事情を知った浮浪者は、金を工面しようと必死に働くが……といったお話。
浮浪者が、とりあえずヒロインに恋するという、この頃のチャップリンさんのド定番の流れです。
ただ、惚れたからにはただ一筋に、献身的に相手を思いやる姿が健気なんですよね。それでいて、決して見返りを求めない。
基本的にはオチャラケばっかやってるけど、こういう愚直な愛情表現しかできない浮浪者が愛おしすぎます。
近頃の流行り言葉風に言えば、キュンキュンさせる(笑)タイプじゃないかと。世の中の女子よ、こういう男性に愛されたくないですか?
最後には娘の目は治り、花屋に勤め出して、キチンと社会復帰(?)も果たしました。
そのさ中、店先で騒ぎを起こしていた浮浪者が娘に気付きますが、もちろん娘は何も気付きません。それどころか、チト浮浪者を小馬鹿にするような態度すら取りますが(笑)。
そこから、娘は浮浪者の正体に気付きますが、普段より5割増しのボロボロの身なりをした浮浪者を見ても、何の偏見も持たず感謝の意を表します。
“目が見えない代わりに人間の本質を見抜ける”なんてのは、今の時代にはとっくにカビが生えたシチュエーションですが、1931年という遥か昔に(もうすぐ1世紀!)、かつ今の時代ほどクドクドと説明せずにこれをやっているんだから驚きです。
その後の2人は観客の想像に任せる余韻までしか与えない終わり方も、実に映画的で好きです。
そんなラストはあまりにも有名ですが、知っていても泣きましたよ。
ネタバレネタバレと煽り立てる連中が多い昨今、それだけで興が醒めてしまう作品もあれば、それを知っていても心が震える作品もあります。本作はもちろん後者。
オチを知ったところで、そこに行き着くまでのプロセス=映画の支配下にある時間の中で、何を感じ取れるかは自分の感受性次第。
オチを知ってしまっても、それだけでその作品の価値がゼロになる事はありません。
とは言え、ネタバラシとは映画の楽しみ方を知らないテロリストのような行いなので、能動的にはやらない方がいいと思います。つーか、そんな奴ぁ映画なんか見ねぇでスマホに一生を捧げてろ。
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映像特典によくあるメイキングやドキュメントといった舞台裏は、作品を愛する人にとっては、やや毒ですね。
あの美しいシーンの裏では、実は見にくい確執があって……みたいな話とか、せっかくの感動が台無しになるような情報がチラホラあって興醒めしてしまうし。
近頃の日本でもよくあるじゃないですか、だらしないプライベートのせいで、せっかくの名演(や作品)を台無しにしてしまう俳優のスキャンダルとか…。