観た、『必殺!4 恨みはらします』 | Joon's blog

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『必殺!4 恨みはらします』を観ました。

 
南町奉行所で刃傷沙汰が発生。殺された奉行の代わりに、奥田右京亮[オクダウキョウノスケ]という若い男が着任する。
同じ頃、おけら長屋に愚連隊が現れ、大暴れした挙げ句、お弓の父が殺されてしまう。しかし相手は旗本の息子たちのため、手を出せない事に歯がゆい思いをする主水。
その後、一同に介した仕事人らは、元締めの弁天より、おけら長屋の件に関する仕事を依頼される。頼み人はお弓だ。
子連れ仕事人の文七と主水だけが仕事を引き受けるが、何者かの邪魔が入り、なかなか仕事を全うできない。
そんな中、主水は愚連隊が奥田と結託している事を突き止めるが、奥田の出自がまるで掴めない。
小さなイザコザにしか見えなかった事件が、実は将軍すらも関係している事が明らかになって行き……というお話。
 
現在放送中の『暴れん坊将軍』を観ているので、どうしてもそちらと比較しちゃうんですが、同じ勧善懲悪の時代劇ながら、両者の作風は全く異なります。
あちらは人情に重きを置いたおとぎ話ですが(笑)、必殺シリーズは虚無感が漂うドライな作風で、実に対極的なんですよね。
本作のシチュエーションで例えると、愚連隊に父を殺されたお弓。
父の恨みを晴らすよう仕事人に依頼しようとするも、大した額には満たないため、遊女になって後払い金を工面しようとします。
『暴れん坊将軍』の世界であれば、お弓は一旦は遊女に身を落としますが、新之助=吉宗の調査により、愚連隊とその親である旗本連中の不祥事を暴いた上で、お弓は即座に解放されるでしょう。
しかし必殺シリーズはまるで逆で、本作で描かれる通り、お弓は店の女将にイビられ&さんざん客を取らされた挙げ句に自殺という、やるせない展開が待っています。
お話としてはどちらにも正解もないんですが、必殺シリーズは“仕事”が一つの見どころなので、常に人の死が密接に関わります。
こういう不条理に不条理を重ねて悪に対する怒りを燃やすため、つまり“溜め”の演出があるからこそ、残酷な手段を以ての“仕事”が活きてくる、もしくは許されるんですがね。
 
監督は深作欣二さん。
俺ッチは深作さんの作品は未見に等しいので(『宇宙からのメッセージ』では…)大そうな事は言えないんですが、深作さんの作風はバイオレンス描写が鮮烈という触れ込みをよく聞きます。
そのせいか本作での、仕事を含めたそれらは“殺陣”より“アクション”と呼ぶ方が相応しく思えますね
基本的には一瞬の間に片を付けて去っていくのが“仕事”の基本ですが、稀に多人数を相手に立ち回る事もあります。この辺は、秀や政が担当させられる事が多いですね。
主水も奥田やその手下たちと長めの立ち回りを演じますが、これがまたカッコいいんですよね。自宅や表の仕事とのギャップが良いんですよ。
存在感のあるゲスト、文七=千葉真一さんと九蔵=蟹江敬三さんのサシの勝負も見応えがあります。
 
基本的に仕事人同士は、「お前がドジを踏んでも、こっちは知った事っちゃねぇ」というスタンスで、同業者としての情の欠片もありません。
作品の半ばくらいで主水は奥田に追い詰められますが、この時点で奥田は主水の正体を知っていました。
そんな主水のピンチをレギュラー陣が、堂々と素顔を晒してまで救うシーンは実に意外であり、胸が熱くなる展開です。
こういう時って、「お前ぇの正体がバレちゃ、俺たちの身がヤベぇんだ」とか照れ隠し的なセリフが出る事が多いけど(笑)、そもそも仕事人の行動原理は人間としての情にあります。決して金のためではなく、悪を許せないという怒りが身を突き動かしているのです。
“仲間”というような青臭い呼び方ではない、もっと大人な、達観的な連帯感があるからこそ、同業者を見捨てる事はしないと思わせる、好きなシーンです。
 

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Blu-ray版の映像特典は予告編のみですが、日本の作品でありながら日本語字幕が付いているのは嬉しい配慮ですね。

時代劇は敷居が高いと感じた上で敬遠してしまうのって、分からない言葉が多いからだと思うんですよ。聞き取れなかったりもするし。

字幕がある事で、その辺を解消する一助になるんだから、他にSF作品(特にアニメか)あたりにも字幕機能があって欲しいですよね。