『女王陛下のOO7』を観ました。
入水自殺を図ろうとする女性を助けたボンド。しかし、その女性は名も告げずに去って行く。
その後、ボンドは何者かに捕らえられるが、連れて行かれた先にいたのはドラコという男。先に救った女性はテレサと言い、そのテレサの父親こそがドラコだったのだ。
テレサがボンドに気がある事を見抜いたドラコは、テレサを愛するようボンドに頼み込む。その見返りにスペクターの首領ブロフェルドに関する情報を提供する事を約束するが、そんな条件抜きでテレサを愛するようになるボンド。
ブロフェルドのアジトに潜り込んだボンドは、テレサやドラコの協力の下、ブロフェルドとの直接対決を果たすが……といったお話。
今でこそOO7シリーズは20作も続いていますが、それを知らないまま、今作でボンドが結婚するとか聞いてしまったら、シリーズ最終作なのかと勘違いしそうです。
なにしろ、オープニングタイトルでは1~5作目のダイジェスト映像が出てきたり、ボンドが身辺整理をするシーンでは過去作に登場した思い出の品や劇伴が流れたり、ブロフェルドとのサシでの勝負があったりと、それっぽい見せ場がたっぷりです。
ところで、今作を観て思ったんですが……ボンドが泣くのって、最初で最後じゃないですか?
基本的にボンドは冗談や皮肉が多く、それらで本心を隠すキャラです。
それ故、ボンドがテレサ=トレーシーにマジ恋するのみならず、能動的にプロポーズまで敢行するんだから、これは異常事態です。まぁ、心を奪われた女性がいながらも、他の女性の誘いに安っぽく乗っちゃうのは内緒ですが(笑)。
喜怒哀楽、全ての感情を露わにするボンドを見れる作品は今作が初という意味でも、ちょっと特別感のある作品です。
泣くと言えば、泣くシーンが印象深いキャラがもう一人、マネーペニーです。
ボンドの結婚式のシーンではMI6=レギュラーの面々が多々出席していますが、特にマネーペニーは始終泣きっぱなしです。
今作までの、ボンドとマネーペニーの軽妙なやり取りを知っている人なら、少なくともマネーペニーはボンドに対して仕事仲間以上の感情を抱いている事に気付きますよね。
それでいて内助の功もできるんだから、公私ともに良きパートナーだと思うんですよ。退職願をすり替えるあたりとか。
…つまり、ボンドと結婚するに相応しい女性とはマネーペニーではないかと思うんです。
女好きでありながら、そんなマネーペニーの厚意&好意に気付けないなんて、どうにもニブチンじゃないですか、ボンドさん!
マネーペニーの部屋に入ってくる時と似たように、結婚式でボンドはマネーペニーに帽子を投げますが、まるでブーケトスに見えてしまって…。ツーカーの仲だからか、会話も一切く、このアクションだけで2人の意思は通じ合っているんでしょうが、切なさが増すシーンになっていますね。
マネーペニーだけじゃない、俺ッチも泣いたで…。
ボンド役を降板したショーン・コネリーさんの後を受けるのは、ジョージ・レーゼンビーさん。
それまでのコネリーさんのインパクトが強烈だったから、その代役としては荷が重かったと思いますが、これはこれでいいキャスティングかなとは思えますがね。
ジョージ・レーゼンビーさんが今作にしか出演しないのはボンド役が似合わなさすぎたからだと揶揄される事も多いですが、今作にしか見せない一面を多々見せる、つまりオンリーワン的な意味合いも含めた作品なので、今作ただ1作のみの出演って方が説得力がありますね。
俺ッチの洋画鑑賞歴が浅い頃=ウン10年前には、今作の評価がかなり低かった覚えがありますが、ここ数年でその現象が逆転しつつある傾向を感じます。
そんな世間の評価は知らないけど、少なくとも俺ッチの中ではシリーズ上位にランクインする作品です。
…と、ロマンス要素が強めですが、アクション面も見どころは多々あります。
主な舞台は雪山という事でスキーやボブスレーもありますが、69年の作品である事を鑑みると、撮影技術の高さに驚けます。カメラ自体が移動するのはこの時代でもできますが、そのダイナミックな動きっぷりに注目です。
あとは、わざわざ爆弾を落として誘発したという(!)雪崩のシーンは圧巻です。他作品からの流用ではなく、本作のためにわざわざ雪崩を起こして撮り下ろすという発想に感嘆です。
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OO7シリーズの映像特典は、満載という言葉が相応しいほどにギュウ詰めされているのが魅力ですね。
デズモンド・リューウェリンさんを追悼する、Qをフィーチャーしたドキュメントが良かったですね。ロジャー・ムーアさんとのエピソードとか、人が好さそうな爺ちゃんみたいでほっこりするんだよね。