『OO7は二度死ぬ』を観ました。
アメリカの宇宙船が消失する事件が発生。それを捕獲したと思われる謎の飛行物体が日本に近くに着陸したとの情報を受けたMI6は、ジェームズ・ボンドを日本に派遣する。
秘密警察のタナカと合流したボンドは、スペクターがオーサト化学工業と手を組んでいると推測。タナカの秘書のアキと共にオーサトへの調査を始める。
その中で、飛行物体の離発着が行われているらしい場所を特定したボンドは、近辺の漁村で日本人を装い、タナカの部下であるキッシーと結婚式を挙げるが……といったお話。
アバンタイトルでボンドは殺され、新聞の1面に載るほどまでに報道されますが、それは偽装だった……んですが、実はコレ、何の意味もないんですよね。
だって、自分の素性を隠す事なく、堂々と顔出しして行動してるんだもん(笑)。
後半で(ようやく)日本人に化けるんですが、日本に着いた途端にそれをやらなきゃ意味ないでしょ…。
「ジェ、ジェームズ・ボンド? まさか生きていたのか!」なんてパターンを予想しますが、敵=スペクター側の人間が総じて偽装死についてスルーしてるんだから、これは新鮮な展開です(笑)。
ネットにベッタリな一部の現代人よろしく、新聞を読まないのがスペクターの弱点なのかもしれません…。
後の作品である『ムーンレイカー』ではボンドがついに宇宙に行きますが、さすがに羽目を外しすぎだとして珍作扱いされますが、今作もなかなかの怪作です(笑)。
「外国人による日本の曲解した表現が許せない!」とかメンド臭ぇイチャモンを付ける日本人も少なくないですが、日本でロケをしている時点で、日本=他国をキチンと表現しようと努めている点については評価していいと思います。
後半は舞台が(九州の)漁村に変わり、「日本じゃこんな事しねーよ!」みたいに、ここでの描写が胡散臭く見える人もいるでしょうが、我々が知らない土地の知らない風習はまだまだ存在しているし、なおかつ半世紀近くも前の作品ですから、当時の日本の一部を知れる機会だと思えば、さほど懐疑的になる事もないでしょう。
…ただ、タナカの指揮下にある忍者(便宜的な言い回しでしょうが…)が、屋外でやってる稽古だか訓練だかはセーフだとしても、屋内での、道着で拳銃を片手に特訓する部署はヤバいですね(笑)。
シリーズも5作目、大ヒットシリーズとして調子に乗っている、存分にお金を使えるようになったんだなーと分かるのがセット。
本作がどんなにつまんなく感じる人でも、火山口の下に隠れたロケット発着場のセットには驚けるはずです。その大きさは、ぜひ目の当たりにして欲しいですね。
このセットを建造するにあたり、スタッフが危険手当を要求してきたらしいですが、メイキング等の写真を見てみれば、それもそのはずです。高さ35メートルという高所作業じゃなぁ…。
これに限らず、セットは多く作られていますが、その他(総じて部屋)に関してはシネマスコープ=画面サイズにしっかり収まるようなデザインになっているように見えるのが驚き。見切れ感なんて全くないような。
普段はセット=背景になんて興味が行かないけど、序盤のOO7シリーズには欠かせない、ケン・アダムさんの空間設計センスには脱帽です。
本作は↑の火山口内のセットのみならず、大画面で見たい迫力あるシーンが多々あります。
本作の珠玉のメカであるリトル・ネリー関連の映像の多くは、できるだけ大きい画面で見たいですよね。
リトル・ネリーとは1人乗りのジャイロコプター(オートジャイロ?)ですが、あんな自転車に毛が生えた程度の物が実際に飛べてしまうんだから驚き。滑走から離陸するまでのカット(のスピード感)は一見どころか、必見です。
そこから4機のヘリコプターとの戦闘シーンに繋がるんですが、リトル・ネリーを先頭に4機のヘリが追従する俯瞰カット、これは映画館で観たかった! CGのなかった時代、万歳!
あと、これは俺ッチだけかなぁ、ボンドを追跡する車をヘリが捕獲するんですが、この後のポイ捨て(笑)カットには、吸い込まれる感もあって圧倒されるんですよね。
あ、どこに捨てるかは見てのお楽しみです。エコ精神のなかった時代、万歳!
本作でのボンドガールは、若林映子(“エイコ”ではなく“アキコ”と読むそうな)さんと浜美枝さん。
現在のところ、地球上にたった2人しかいない日本人のボンドガールです。ゲームを含めると伊東美咲さんが加わりますが(笑)。
若い頃はピンと来なかったけど、クラシック美女の良さが分かるようになるのはオジサンになった証でしょうかね?
若林さんは、フランス映画に出てもおかしくないルックスがいいですね。『ウルトラQ』を観返したくなったぞ。
浜さんに関しては、体を張った力演ぶりに拍手を送りたいですね。
海女さんに混じってる時もビキニ、山の頂上あたりでもビキニ、敵基地内でもビキニと、浜さんの出演シーンは6割がビキニ(ラッシュガード的なものもなく!)なんだから、これは地味に過酷です。ボンドさん、上着貸してあげなよ…(『ドクター・ノオ』でのハニー・ライダーには貸してあげてたのに…)。
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OO7シリーズのBlu-ray版は、映像特典が過剰に豊富で良いですね。
今作に関しては、過去作を振り返るテレビ番組なのかな、Q役のデズモンド・リューウェリンさんとマネーペニー役のルイス・マックスウェルさんが登場、ちょっとしたドラマ調のダイジェストになってるものが見どころです。