観た、『大脱走』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『大脱走』を観ました。

 

第2次大戦下、連合軍の兵士がドイツの第3空軍捕虜収容所に連行される。

そんな兵士たちの頭にあるのは脱走の2文字。しかし、アメリカ軍のヒルツを初めとする捕虜たちは、厳重な警備の目をかいくぐる事ができずにいた。

そんな折、捕虜として新しくやって来たバートレットは脱獄に長けていて、場当たり的ではない、計画的な脱獄を算段する。

その内容とは、地下にトンネルを掘り、しかも200人以上を脱走させようというのだ。

1人で奮闘していたヒルツもバートレットの計画に加わり、いよいよ計画遂行の日がやって来る……というお話。

 

多少の、映画というエンターテインメントにするための脚色はありながらも、基本的に実話との事。

かつ、本作は戦闘シーンはないながらも、ジャンルとしては戦争モノと言ってもいいかな?

最前線でのドンパチばかりが戦争映画の全てではなく、その影で戦っている兵士たちのお話です。

 

開巻から流れる、おそらく多くの人が知っているであろうテーマ曲『大脱走のマーチ』。セルフで検索してみてね。

あの明るい曲調のおかげで、“WW2におけるドイツ軍の捕虜となった兵士のお話”にはミスマッチに思えますが、戦争映画とジャンルしにくい明るさが本作にはあります。

 

WWⅡ下におけるドイツ兵と聞くと、容赦なく相手を殺す鬼畜のようなイメージがありますが、収容所における彼らはどこかユルい雰囲気です(実際にも、ある程度、心を通わせた例もあったそうですが)。

克明に描かれてはいないけど、どうやらドイツ軍の全てを残忍と決めつけるのは早合点で、本作の収容所を管理(?)している空軍、もしくは収容所の所長一個人は、その象徴たるナチス的ではないようです。

“ハイル・ヒトラー”をおざなりにして睨まれるシーンもあったり、むしろ反ヒトラー的なのかも。

そんな状況なものだから、捕虜たちのトンネル作りはイベント的というか、監視の目を盗んでのレクリエーション的にすら見えるんですよ(笑)。

とは言え、決してドイツ兵を間抜けっぽく見せるようなコメディ風にはせず、常に一定の緊張感は張りつめています。

本作が戦争映画の体を見せるのは、一部の捕虜が脱出できた後を描く、いわば第2部のような後半です。

 

戦争映画の主なシチュエーションと言えば、命のやり取りです。

後半では、脱走した捕虜が散り散りになり、それを追い詰めようと躍起になるドイツ兵というシーンが続きます。

様々な方法で正体を隠し、ドイツ兵の目を眩ませようとしますが、その結果は実話の通り。

歴史上においても悲惨な話で、本作をハッピーエンドと受け取れるかどうか複雑な気分になるのは、ここにあります。

 

…なら脱走なんかしなければいいじゃん?という意見もあるでしょうが、脱走するのは彼らの任務の一つ。

脱走する事でドイツ軍を攪乱させるのが目的らしいですが、たかだか数十人程度の捕虜、しかも位の高い将校でもない兵士を捜索する程度で、攪乱と言えるような効果が期待できるんでしょうか?と思いきや、そこに動員される兵士の数は意外に少なくないんですよね。

ヒルツ1人の捜索→確保をする際の、小高い丘の上から横1列にド~ッと並んだ兵士とか尋常じゃない数だったし。

 

フツーの規模の作品であれば主役になれそうな俳優が揃い踏みしたような、アンサンブル作品と言っても良いんですかね?

そんな中の1番目に挙げられるであろうのはスティーブ・マックイーンさん。THE主人公!って感じの役柄ではありませんが、そんなマックイーンさんの見せ場と言えば、脱走後のバイクのシーンでしょう。

やっぱりマックイーンさんにはバイクや車といったマシンが似合う! 

本作の場合は、バイクの腕前を見せるという条件で出演を承諾しただけあって(笑)、バイクのシーンのほとんどを自身でやってるんじゃないですかね? 特にバイクはマシンと一体化している感が出やすい、つまり俳優の個性と直結する乗り物だから、そういうモチベーションは大歓迎です。

最近は保険の都合だかで、俳優自身が乗り物を運転するシーンが激減しているようですが、興醒めな話ですよね。変身前の俳優がバイクを運転しない仮面ライダーシリーズとか。

 

本作の秀逸な点は、脱走するまでの過程と達成のみならず、その後を描いている点にあると思います。成就した夢の続きというかね。

まぁ、若い人に向けた作品なら、夢が夢がと言い続けてもいいんですよ。それを見るような若い人は希望を以て、未来に向かってガムシャラに生きて欲しいものですから…。

ただ、年寄りになれば、もしくは夢と感じていた事が非現実的であると気付けてしまったら、その先にある現実を見据えなければなりません。

本作の後半、脱出後のエピソード群は、まさに夢の先にある現実の象徴です。夢を成就できるかも、半分は運ですしね。

けど、挫けてもなお、夢を見たければ見続けてもいい――ラストシーンにおけるヒルツの姿とは、叶うor叶わないかはさておき、そんな希望の象徴です。

 

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↑にも述べてますが、戦闘シーンは皆無、軍事兵器である戦車や戦闘機はサッパリ登場しません。

それどころか、主人公が銃を持つ事すらないんだから、戦争映画とジャンルしていいものやら。

どっちかっつーと、体育会系レクリエーション映画と言った方が正確かな(笑)?