『ファミリー・プロット』を観ました。
恋人のジョージとグルになり、ニセ霊媒師に成りすましているブランチは、レインバード夫人の亡き妹の霊と会話しているフリをしていた。老い先短いレインバードは妹が産んだ息子に自分の財産を譲りたい、その息子が見つかった際には1万ドルの謝礼を支払うと聞いたブランチはやる気満々。
一方、宝石店を営むアーサーとフラン夫妻は、誘拐・恐喝により高価な宝石を巻き上げていた。そして、そのアーサーこそがレインバードが探している甥、両親を殺して逃げた後に名前を変えたエドワードだった。
ブランチとジョージが自分の周囲を探っている事を知ったアーサーは、旧友のマロリーを使い、二人を殺そうとするが失敗。
どうにかレインバードの意思を伝えようとするジョージ&ブランチ、自分らの悪事の露呈を恐れるアーサー&フラン。二組が交わる瞬間が徐々に迫り……といったお話。
ストーリーだけ読めば犯罪映画っぽく見えますが、本作はコメディタッチで描かれます。殺人をコメディとして捉える(もちろん映画という娯楽として)ヒッチコックさんらしい、実にシニカルな作風です。
アーサーの悪事なんか露知らず、アーサーが(エドワードとして)手に入れる莫大な財産とは比べ物にならないくらいに些少な謝礼のため、エドワードである事を認めてもらうために奔走するジョージ&ブランチ。
そんなお人好しの善意を、自分らの悪事がバレてしまうのではと焦り、どうにか亡き者にしようと企むアーサー&フラン。
確かに、この二組の勘違いはコメディチックです。双方とも大マジになってるところが間抜けた感じで、愛おしくもあり滑稽でもありますね。
根底に笑いがあるとは言え、たまにヒッチさんお得意のサスペンス要素もあるんだから、一貫してコメディとは捉えにくいんですよね。普段はサスペンス要素の中に小さなユーモアを含めますが、本作はその逆で、ユーモアとサスペンスの比率が逆というか。
最もハラハラするのは峠道でのカーチェイス(追いかけらるわけじゃないけど)ですかね。特に対向車とすれ違うカットとか、避けるのがギリギリすぎでヒヤヒヤします。
そんな中にもコメディ要素はあり、助手席にいたブランチの体勢がどんどんおかしな事になっていくのが面白いです。
アーサーがブランチに麻酔薬を打ち込もうとするカット割りも、まるで『サイコ』のようなハラハラ感があります。
本作はヒッチコックさんの遺作でもあります。
これぞヒッチさん!と思えるシーンも随所にありますが、さすがに黄金期は過ぎている感は否めません。
俺ッチも初めて本作を観た際には、いつものようなヒッチコック作品を期待していたせいもあり、ビミョーどころかつまらないとすら感じていました。
が、何回か観ていると、そんな第一印象が次々に払拭され、だんだん面白く感じてくるのもヒッチコック作品の妙なんですね。とは言え、ヒッチさんのベスト作品とまでは言えませんが…。
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映像特典はメイキング等、吹き替え音声もありで、Blu-rayソフトとしては及第点の仕様ですかね。
にしても↑のジャケット、何故これをメインビジュアルに持って来るかなぁ。主役でもなければ大したキーパーソンでもないのに。