『トパーズ』を観ました。
フランス情報部員デベロウは、CIAのマイクからソ連の高官クセノフがアメリカに亡命した事を知る。
反武装派であるクセノフの情報によると、ソ連がキューバに兵器を横流ししているというのだ。
その証拠となる覚書を持っているのは、キューバの指導者パラ。しかし、パラは反米主義者であるためにCIAは近付けない。
そんなマイクの依頼を受け、母国フランスにも内密に調査を開始するデベロウ。
どうにか覚書の写しを手に入れ、兵器の受け渡しが事実であった事を知ったデベロウは妻ニコールの制止を振り切り、単身キューバに向かうが……といったお話。
監督はアルフレッド・ヒッチコックさん。
ヒッチさんと言えば、これまでサービス精神に富んだ作品を作り続けてきましたが、『引き裂かれたカーテン』に続いての本作共々、どうも作風が変わってしまった感じ。世間的にもイマイチ評価が低いようです。
まぁ、他人の意見はさておいたとして、俺ッチが感じる『引き裂かれた~』&本作があまり面白くない理由とは、お話が分かりにくい点にあるんじゃないかと。
当時の政治的な背景を映した両作ですが、その要素が色濃すぎるんですよね。
本作に関してはキューバ危機を題材にしていますが、俺ッチのような世相に疎い人間としては、現実に起きた事件の詳細とか分かんない(つーか忘れた)ので、ちょっと混乱すると、ソッコー置いてけぼりを食らうんですよ(笑)。
どんだけスリリングな作品の中にも必ずユーモアを交えるというヒッチさんのイズムもどこへやら、本作はシリアス一辺倒で、これまでの気楽に観始められた作品群とはえらく異なる作風に、少なからずの違和感を抱く作品でした。
ざっくり言えば本作はスパイ映画という事で、その代表格たるOO7シリーズの影がチラつきます。
本作の主人公デベロウはジェームズ・ボンドに比べると大真面目なキャラですが、これは国家の存亡を懸けるスパイがああまでジョークを言うような軽い男でいいのかという、OO7シリーズへのカウンターにも思えますが、気のせいでしょう(笑)。
逆に、ユーモア大好きなヒッチさんが描くボンドも面白そうな気もしますが…。
銃を使わないスパイが新鮮に思えてしまうのも、OO7シリーズの影響があるんでしょうね。
俺ッチも含め、1度目の鑑賞ではピンと来ない人が多いんでしょうか?
その後、キューバ革命について予備知識を身に着けた上で、なるべくスパンを空けず再鑑賞に臨めば、1度目のモヤモヤが晴れそうな気はします。
もしくは吹替音声で鑑賞すれば、字幕を補完する情報も入って来るので、さらに分かりやすく感じるかもしれませんね。
――って事で、再見しました。
短スパンで2度目の鑑賞をする事はあまりしないんですが、今回はどうもモヤモヤするので(笑)。
再見に備え、キューバ危機(とピッグス湾事件を少々)を予習として、いざ鑑賞。
…おお、やはり前より戸惑う事なく観進められますね。
キューバ危機に関してのみならず、1度目ではピンと来なかったキャラクターの顔やバックボーンを見極められるゆとりも生まれ、分かりやすいどころか、むしろ面白みも増しているようにも思えました。
一般的に、本作の評価が低い(であろう)理由の一つとして、スターが出演していない点に不満を抱く人も少なくないようです。
確かにヒッチさんの作品は、自分が生まれていない頃でも、名前くらいは確実に知っているようなクラシックスターが数多く主演しています。
本作の主役アンドレ・デベロウを演じているのは、フレデリック・スタフォードさん。失礼ながら……誰?と(笑)。
のみならず、他の出演者の方々も、あまり名の通った方は多くないです(ミシェル・ピコリさんやフィリップ・ノワレさんはヨーロッパ方面の映画ではメジャーなんだろうけど)。
けど、それって、他の役のイメージが身に付いていないという意味で、変な予備知識もなく観れるって事でもあるんですよね。出演者の人気に頼らない映画として勝負しているように思えます。
余談ながら、主人公のスタフォードさんはスパイの役である事も加味しているせいか、どことな~くロジャー・ムーアさんにダブって見える時があるんですよね……気のせいかな(笑)?
って事で、俺ッチ的には、ヒッチさんの作品群の中において、意外と上位にランクインさせてもいい作品なんじゃないかと感じました。
鑑賞前にキューバ危機を勉強してから観るのがオススメですよ。
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…ん? なぜかジャケ写がありませんが…。
映像特典の一つに未公開シーンがありますが、もう一つのエンディングが数種類あります。
中でも、デベロウと黒幕が決闘をするというものがウケます。ヒッチさん、これ大マジでやってます?と(笑)。
これは公開当時である69年にも不評だったようで、これに関する試写会の反応も容赦なく、むしろ、そのおかげで現在のような終わり方に至ったんだから、試写会はやはり必要ですね。
ところで、DVD版の方は
セクシー映画を連想させますが、こういうシーンもあるけど、上述の通りコテコテのポリティカルサスペンス作品なので、こんなサイテーなジャケ写に惑わされないように…。