『ハリーの災難』を観ました。
林で銃声を聞いたアーニーは男の死体を発見した。
ウサギ猟をしていたワイルは自分が当ててしまったのではないかと思い込み、死体を埋めようとする。
そんなワイルを阻むかのように次々とやって来る村人たちは、今では死体となったハリーという男と因縁を持つ者ばかり。生前のハリーは人格に問題のある人物だった事が分かってくる。
ハリーに関わる村人らは責任を逃れようとしたり、自ら罪を被ろうとしたりと様々な思惑が交錯する中、ハリーを埋めては掘り返したりと大忙し。
ようやくひと段落しそうなところで、死体の存在を嗅ぎ付けた保安官代理のカルヴィンが彼らの行動を怪しみ始め……といったお話。
これだけ読めば、アルフレッド・ヒッチコック監督作品だし、スリル&サスペンスに満ちた作風だろうと思いきや、クスリとさせるようなコメディ作品です。コントとでも呼んだ方が正確かな(笑)?
何しろ、死体を発見しても誰も焦らないどころか、畏怖の感情が1ミリもないんだから皆さん冷静すぎます。生前はムカつく人間だったとしても、死体になればそれなりに神妙な面持ちになるものですが、リアクションも皆無というドライっぷり(笑)。
一般的には忌避されるべき存在である死体について、重々しく捉えていないあたりがコメディっぽいというか、正確にはブラックコメディかな?
難度も埋められたり掘り起こされたり、日本風に言えばなかなか成仏できないんだからこそ、確かにタイトル通りハリーの、死してなお続く災難なんでしょうね。
あれで万事解決したとは思いにくいな…。
サスペンス要素を多分に含んでいるはずだけど、そんな重苦しい空気や倫理観を忘れさせてくれるのが紅葉の美しさであり、本作の世界観作りにひと役買っています。
ヒッチコックさんのロケ撮影嫌いは有名ですが、あの自然の美しさの中で撮っておいて良かったと思います。
あれを見てしまえば、セットの出来が悪く見えてしまうのも仕方ないんじゃない?
絵描きのサムとハリーの妻だったジェニファー、元船長のワイルとハリーに襲われたというグレブリー。
小さな田舎町で、顔見知りではあるけどそんなに親しくもなかった二組の男女が、死体遺棄を巡って深い仲になるお話でもあります。
ここで不謹慎とか言っちゃうのは、本作への理解度が低いというか、不粋極まりないですよ?
特にワイルとグレブリーの老いらくの恋は、若さに任せてグイグイ行く事もなく、見ていてほっこりしますね。
二組が幸せになろうとするところに割り込んでくる、お邪魔虫的な存在が保安官代理のカルヴィン。
総じて気のいい人しか出て来ない作品の中(元々登場キャラも少ないし)、、唯一のイヤなキャラです。
アンモラルな作品の中で一人でクソ真面目をやっている悪役的なポジションなキャラですが、本来なら一番の常識人なんですよ(笑)。
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Blu-ray版の映像特典は当時を振り返るドキュメント。吹替版も収録しています。
画質もいいので、紅葉が美しい秋の景色も見どころです。