観た、『戦争と平和』('56) | Joon's blog

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『戦争と平和』('56)を観ました。

 

皇帝となったナポレオンが率いるフランスがヨーロッパの侵攻を続ける19世紀初頭。
モスクワで軍人のアンドレイと放蕩を続けるピエールは、フランスの影がロシアにも迫りつつある事を予期していた。
出征先で負傷したアンドレイはフランス軍の捕虜となったが無事に帰還。ロスコフ家のナターシャと婚約するが、これに反対する父親との約束として結婚は1年後に延期させられてしまう。
アンドレイが遠征している間、アナトーリに口説かれたナターシャはアンドレイとの婚約を一方的に破棄。ピエールにより、アナトーリが結婚詐欺師であると知ったナターシャは結婚を諦める。
そしてついにフランスがモスクワへの進軍を開始。ロシア軍はこれを迎え撃つがフランス軍の敵ではなかった。
モスクワの住民が住処を捨てて避難をし始める中、負傷した兵士たちが帰ってくる。そこに重傷のアンドレイがいる事を知ったナターシャは……といったお話。

レフ・トルストイさんの『戦争と平和』は、名前やタイトルくらいは聞いた事がある人は少なくないと思います。
そこから調子に乗って、ああいうTHE文学とされる作品でも読んでみようかな?と思いきや、書店の小説コーナーで見掛けると1冊の厚みが別格すぎるどころか、それが何冊もあるという大長編らしいです(3000ページ前後とか…)。

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↑は全4巻、全て600ページ越え……うん、無理(笑)!

 

それでも興味はあるので、こうして映画を観たわけですが、こちらも原作に負けじと208分=約3時間半というド長編なので、鑑賞には相当の覚悟や気合いが必要です。
しかもインターミッションはない(!)という強行突破ぶりには呆然。公開当時に映画館で観た人とはどんだけ忍耐強かったんだ…。

フランス軍がモスクワへの進軍を開始し、遠路はるばるやって来てしっかり占拠したのはいいけど、モスクワの住民は早々に避難を終え、街は既にもぬけの殻。支配する人民がいないだけでなく、物資や食料がないという死活問題に陥いった挙げ句、フランス軍は撤兵を始めます。
戦闘する気満々で敵地にやってきたけど戦うべき相手がいないし、やれる事がないからって撤退を余儀なくされるのって新鮮じゃないですか?
だいたいこういう時って、それでも俺たちは戦うぞ!と徹底抗戦を唱えるイキッた人(得てして少人数)が現れるものですが、それさえいないなら帰るしかないよね(笑)。
失うものはあったけど、戦わずして勝利した見事な作戦(?)です。輸送や補給の手段が容易になった近代ではできないよなぁ。

そして終盤、ロシア軍は帰路に着くフランス軍を追い討ちするわけですが、ここが過剰に長く感じます。
クッソ寒い中を帰路に就くフランス兵たちには敗残兵としての悲哀すら見えてしまうし、ロシア視点の作品なんだから、敵であるフランス軍に肩入れするかのような描き方はしなくていいと思うんだよね。

タイトルにもなっているだけあって戦争(戦闘)描写も多めながら、根っことしては人間ドラマです。恋愛ドラマと呼ぶ方が正確かな?
ナターシャとアンドレイ、そしてピエールのちょっとした三角関係が展開されますが、さほどメロドラマな感じはしません。
“遠征した軍人の夫の帰還を待つ妻”とか聞くと悲恋モノに思えがちですが、そんな薄暗そうなムードを払拭するのはナターシャを演じるオードリー・ヘプバーンさんの存在です。
愛どころか、恋を恋とも思わない無邪気なナターシャの少女感はこの頃のヘプバーンさんにピッタリで、もはや映っているだけで画面に華やかになります。
ヘプバーンさんの美しさを堪能するなら『ローマの休日』『麗しのサブリナ』に加え、初のカラー作品への出演作である本作も加えよう!

 

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映像特典はナシ。

吹替版が収録されている程度ですが、3時間半という長丁場こそ吹替版のありがたみを感じられるかもしれませんよ?