『トラ・トラ・トラ!』を観ました。
1941年11月下旬。
アメリカとの関係に緊張が走る中、山本中将が日本軍の連合艦隊の司令に着任した。
可能な限り戦争を回避したいと思う山本の願いも虚しく、ハワイの真珠湾への奇襲作戦が決定される。
一方、アメリカ軍も日本艦隊の動きに着目。しかし、日本軍は必ず攻めてくるという情報部の推測に反し、上層部は事態を楽観視するばかり。
そして12月8日、空母より発艦した日本の戦闘機群はハワイに到着。飛行隊長の淵田が打電する“トラ・トラ・トラ”の暗号と共に、真珠湾への攻撃が始まる……といったお話。
ご存知1941年の、太平洋戦争の開戦の発端とされるハワイの真珠湾攻撃を描いた戦争映画です。
これは映像特典で知ったばかりの言葉ですが、本作のような、現実に則したドキュメントとドラマを組み合わせた作風を“ドキュドラマ”と呼ぶそうです。史実に基づいた、特に戦争映画とかに多いのかな。
似たようなドキュドラマとして『史上最大の作戦』を前に観ましたが、登場人物が多すぎて混乱するんですよ(笑)。
個人的には、本作の方が分かりやすくて好きです。
真珠湾攻撃をクライマックスにした作品だけあって、登場するのは日本軍とアメリカ軍。かつ、日本とアメリカの合作でもある本作。
これがどちらか一方の国だけで作られれば、もう片方の国の描写(や考察)がおかしかったりして、非難も激しいものになったんでしょうが、両国が参加する事により折衷案(?)として描かれているどころか、明らかに日本軍の方がカッコ良く見えませんか?
未明の、暁の中に戦闘機群が発進するあたりとか、実に映えるシーンになっていると思います。そこからの、雲間から陽の光が漏れる、まさに軍艦旗のような画とかも抒情的です。
こういう描写を許してあげるあたり、戦勝国としての余裕すら伺えますね(公開後のブーイングは大変なレベルだったようですが)。
歴史の授業を受けていない人にとってはネタバレになりますが、日本軍の大勝利に終わるものの、ラストでの山本中将のセリフは刹那的な勝利の虚しさを感じさせる、ゾッとさせるセリフです。
個人的に、政治とエンターテインメントを結びつけるのは無粋極まりないと思っていますが、ちょっとだけ…。
ただ今、世の中(の、せいぜい6割くらい?)はゴールデンウィーク→10連休真っ盛りだと思います。国の政策として、オフィシャルな休日をブチ抜きで10日も制定してしまう事が発表された時、早めに思い出したのが本作なんです。
本作は映画という娯楽作品ですが、その内容や設定は史実に基づいたもの。
日本軍がハワイへの奇襲をしたのは1941年12月7日の日曜日。一触即発の状況にありながらも、アメリカ側は軍の関係者がフツーに休んでいたりロクに報・連・相もできていなかったり、その結果、日本軍の奇襲に即座な対応が取れず壊滅状態に追いやられます。
もはやコメディにすら見えるので(笑)、実際にそこまで杜撰だったのか信じがたいんですが、一歩間違えれば、現代の日本でもこれと同じような状況に陥るのではないかと。
今の政治屋は、聞こえの良い言葉で国民(特に公務員)を味方に付け、1秒でも多く自分等が仕事をしないで済む口実を作ってばかりいるように思えます。
そんな堕落した連中を見ていると、本作で描かれているような、休みは休みだからとノホホンとしているアメリカ軍人の姿が、否応なしにもダブって見えるんです。
わざわざ断言するまでもなく、日本を敵視している国は世界中にゴマンとあります。
そんな世界の動向が気にならないのか、日本という国が10日間も機能しなくなる事に危機感を抱かないんだから、よっぽどの能天気にしか思えません。
…話を戻して、メインイベントであるパールハーバーへの奇襲シーン。
戦闘機を改造を施して実物に似せているらしいですが、そんな楽屋オチを知ったところで興醒めする事は決してなく、それらが実際に空を飛び、演技をさせている事にも驚けます。
本当に飛んでいるだけでも驚きですが、しかも数十機が編隊を組んでいる画も圧巻です。
地面&海面からの距離も近かったり、こちら(=カメラ)にも寄せすぎなくらいに際どい飛び方(=演技)をさせたり、かなりの迫力があります。あんなに低空飛行ができるものなんですねぇ。
本編を見ても何となくそんな気はするけど、映像特典における製作者の証言を聞くと、スゲー金が掛かっているのが確認できますね。
当時2500万ドル(現時点では約27億円)もの製作費が掛かったらしく、日本軍が真珠湾攻撃に掛けた費用を上回るんじゃないかと揶揄していましたが(笑)、あながち冗談でもないように思えます。
本物の兵器も多いし、セットも巨大(一部ながらも実物大の戦艦のセットの大きさ)!
この頃のアメリカ映画界の、狂ったような金の使い方に引いてしまう人もいるんでしょうが、逆を言えば極限までのこだわりの表れ。
“事実に忠実に!”をモットーとして作られた本作、もちろん我々が当時の真実を知る由はありませんが、史実を体感できる参考書としても機能するんじゃないでしょうか。
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Blu-ray版にはアメリカ公開版と、初ソフト化された日本公開版が収録されています。
俺ッチが今回選択したのは日本公開版。本作は何回か観ていますが……ん? 渥美清さんなんか出演していたっけ?と思いきや、どうやらアメリカ公開版ではカットされているシーンのようです。
本作のタイトルから、渥美さんのあの代表作を連想してしまう人がいるとかいないとか。いないよ。
作品のみならず、当時のドキュメント映像も満載です。