『泥棒成金』を観ました。
かつて“キャット”の名で知られていた大泥棒、ジョン・ロビーの家に警察がやってくる。“キャット”に似た手口による、宝石類の盗難が相次いでいるというのだ。
既に足を洗っているロビーは、かつての仲間ベルタニや保険会社のヒューソンの協力を得ながら、身の潔白を証明するために真犯人を追う。
ロビーは偽の“キャット”が狙いそうな目標に当たりを付け、名前を偽りスティーブンス母娘に近付く。しかし、夫人の娘フランシスはロビーの正体を知っていて……といった内容。
主人公が冤罪により追われる立場に置かれるのは、アルフレッド・ヒッチコック監督お得意のシチュエーション。
次に狙われるであろうスティーブンス夫人に接近し、偽“キャット”をとっ捕まえようとする中、娘のフランシスと知り合い恋仲に……という展開も黄金パターンですね。女性側からアプローチしてくるけど男はあまり気に留めない(どころか拒絶に近い)のも、ヒッチコック作品のヒーローが見せるダンディズムなんでしょうか?
ヒッチコックさんのお家芸と言えばスリル&サスペンス=現実味を追求する作風が多いですが、今作は大泥棒の追跡という、ちょっとファンタジー気味な作風が珍しいですね。
寿命が縮まりそうな恐怖シーンもなく、娯楽に徹した、ヒッチさんの作品の中では気楽に楽しめる作品じゃないかと思います。
ヒロインであるフランシスを演じるのは、『裏窓』にも出演していたグレース・ケリーさん。
本作でも相変わらずの美しさ! 今の時代であれば、クラシックビューティーに挙げられる一人だと思います。
もちろん現代においても美しい女性は大勢いるし、美しく見せる技法はいくらでもあります。メイクだったりセックスアピールだったりね。けど本作が公開された時代には、今ほどのメイク技術もなかったし、性的な倫理感も今に比べれば閉鎖的だったでしょう。
そんな偽りやごまかしを駆使(?)する事なく魅力的に見せられるのであれば、それは本質的に美しいという事なんでしょうね。
そんなグレースさんは52歳で逝去しました。
歳相応の美しさというものは確実にありますが、若かりし頃に比べれば衰えもします。今風の茶化し言葉で言えば“劣化”ですね。
本来は気の毒な話ですが、女優引退→モナコの王妃になってからであっても、人前に出る事を生業とする人が、そこまでの衰えを見せずにこの世を去るというのは、悲しくもある最大のファンサービスなのかもしれませんね(マイケル・ジャクソンさんにもそう感じます)。
本作では、けっこうなスピードで楽しそうに車を走らせるフランシス役を演じましたが、グレースさんも自動車事故を起こして亡くなった事を考えると、複雑な気持ちになりますね…。
舞台はフランスで、1954年の作品です。
20世紀半ばの頃の、今ほど人間の手が加わっていない風光明媚な風景も本作の魅力です。
風景を見ているだけでも目の保養になりませんか?
空撮や引きの画を見ていると、緻密なジオラマを覗いているようです。BSでやってる、『音楽のある風景』を思い出すなぁ(笑)。
俺ッチが観たのは、
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スゲーかさ張るBOX仕様↑の中の1枚ですが、
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単品販売もされているようです。おそらく内容は全く同じ。
ただ、他の作品にはたんまりと収録されているのに、映像特典が一切ないのがスゲー残念。
予告編すら収録されていないんだから、無粋この上ないですよねぇ。
吹替版は収録されていますが、吹き替え音声がないシーンは字幕で対応という仕様です。
字幕版では“キャット”と表していますが、吹き替え版だと、まんま“猫”と呼ぶのがしっくり来ません(笑)。せめて“黒猫”とか呼びましょうよ…。