観た、『バニシング・ポイント』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『バニシング・ポイント』を観ました。

 

新車の陸送を生業にしているコワルスキーは、あくせくと休む暇もなく次の車の納車に向かおうとする。

顔馴染みの仲間と、コロラド州からカリフォルニア州まで15時間で届けられるかという賭けに乗ったコワルスキー。

道中、警察の呼び止めを無視して車を飛ばすコワルスキーだったが、事態は次第にエスカレートし、警察の追跡は執拗になってくる。

そんな警察の無線を傍受した地方ラジオ局のDJスーパー・ソウルは、コワルスキーを応援するような呼びかけを続ける。番組を聞き、コワルスキーに感情移入する人々も徐々に増えてきた。

そんな事情は露知らず、コワルスキーはひたすら車を走らせ……といったお話。

 

主人公コワルスキーが、警察の手を逃れながら闇雲に車を走らせる、それだけの内容です(笑)。

ざっくりなストーリーは単純明快すぎるけど、実際に作品を観てみれば、ただそれだけではない事に確実に気付けます。

観れば面白いと感じるけど、それを伝えるのが難しい作品……こういうのをカルト的と呼ぶのかな?

 

ネバダ州とかユタ州あたりのイメージが強いけど、よく車で遠乗りするシチュエーションに出てきそうな、アスファルトの道路一本しかない、だだっ広い原野のような風景ってあるじゃないですか(今では森林公園とされているそうな)。

ああいう中を突っ走る姿を引きの画で見せられると、アメリカの広大さや、まさに“大”自然という言葉を結び付けたくなりますよね。

 

そんな土地を走っている途中、コワルスキーがクスリを分けてもらおうとバイクの男の家に行くんですが、そこには恋人らしき人がいます。

ここで目を剥くのは、まぁまぁデカいバイクを運転しているんですが(250とか400くらい?)、その姿はなんと全裸! 仮面ライダーアマゾンだってもう少し衣服を身に着けていたのに(笑)。

これが仮に水着であったとしても、そんな恰好でバイクに乗っている姿なんてのは古今東西でもあまり例がないのではないでしょうか?

原始の極みたる全裸の人間と、科学技術=文明の表れであるメカニカルな部分が露出するバイクという、相反した組み合わせの妙! こうしたビジュアルショックもあるんだから、古い作品だって侮れないんですよ。

 

コワルスキーの暴走と警察との追跡は延々と続きます。

そんなコワルスキーに感情移入をする、ローカルラジオ局のDJスーパー・ソウル(←カッコ良い名前!)はラジオの電波に乗せ、公然とコワルスキーへ情報提供します。

そんなラジオを聞いた人々も、コワルスキーに反体制の象徴を見出したのか、感情移入する人々も増えていきます。

…が、これを快く思わない人々も少なからず存在し、そんな連中がラジオ局に殴り込み、スーパー・ソウルを初めとする局員達をリンチに遭わせるシーンは寒々しささえ感じさせます。アメリカってこえーよな。

 

コワルスキーが、ただただ突っ走るだけと綴りましたが、そこは映画なのでキチンと理由付けはありますが、これと言った明確な意図は分かりません。

勤め先の仕事である、車の陸送を全うさせるため?

クスリの代金をチャラにする賭けに乗ったため?

色々と失った過去から逃げるため?

…いやいや、そんな小さな事ではなく、アメリカン・ニューシネマ的な言い回しをすれば、それは自由のため、となるんでしょうね。

ラストで、コワルスキーは僅かな隙間から光を見出します。その時の表情は笑顔。

僅かな隙間からの光を求める、つまりゼロではない可能性を勝ち取ろうとする意味でもあったのではないでしょうか。

その直後に本作のタイトルを思い出すと同時に、本作もアメリカン・ニューシネマと形容される一作であったんだなと気付くワケです。

 

にしても、このジャケットにもあるように、

もう一人(?)の主役はこの車、ダッジ・チャレンジャー。

本作を観終えた後ならコレに乗りたい、コワルスキーのような追体験をしてみたい気になりますよね?

――ここで、一つの提案。

『テストドライブ アンリミテッド』というドライブゲームがあるんですが、

ハワイのオアフ島を舞台にした、島内のどこでも走れるのが魅力のオープンワールド系ドライブゲームですが、チャレンジャーも登場するんですよ。

ゲーム的なノルマがあるにはあるけど、それを無視してテキトーにフラフラ走っていてもいいし、道路でない場所も走れてしまう自由度MAXなゲームです。

無配慮な運転を続けていると警察に追われるので、これを逃げ切る事でキミも今日からコワルスキー! まさに本作をゲーム化した作品と言っても良くないですか?

ところで、警察レベル3になったら、どうやっても逃げられないんですかねぇ?