『夢』を観ました。
黒澤明さんの監督(&脚本)作品です。
数編からなるエピソードを集めた、いわゆるオムニバス作品。
それ故、ストーリーに一貫性がないというか、起承転結もありません。
序盤の、狐の嫁入りだの桃の樹だののエピソードは眠気との全力勝負でしたが(笑)、帰還兵のあたりからようやくストーリーのようなものが展開されるようになり、面白くなってきました。
ただ……本作は政治批判や社会風刺が強すぎる事に気付きます。
世の中が自分の思い通りにならない事への不満や怒りをぶつけたような、プライベートフィルムの臭いがプンプンするんですよ。
ハッキリ言ってしまえば、世の中の流れに付いて行けない年寄りを味方にしたがる、文明批判ムービーなのです。
手っ取り早く例えれば、本よりも電子書籍を好む人には、本作の良さは理解できないでしょうね。
本作のキャラが批判する、(当時の)現代日本に関しての意見はごもっともです。
でもね、文明の全てが悪でもなければ、敵でもないんですよ。
確かに、文明が発達するためには失うものも多々ありますが、だからここまで人間は進化したんです。生きている以上、進化はせざるを得ないものなんですから。
現代人の心は荒んでしまったけど、そればかりではないはず。
水車のある村の爺さんの言う事ばかりを真に受けて生きていくなら、人類は原始人に逆戻り、もしくはリセットです。
タイトルの“夢”とは、こんな世の中になれば良いのになーと願う年寄りの“夢”なのかもしれません。
本作を支持するのは、常々「今時の若い奴は…」とか言ってしまうような人達なのかもしれませんね。
もしくは厭世癖のある人とか。
――っつーワケで、個人的には、幻想的な映像の美しさを楽しむ作品に思えました。
本作の魅力が分かるようになるには、まだまだ若すぎるのかな……精神的にも。