遅蒔きながら、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』を観終えました。
「世の中には2種類のガンダムがある。宇宙世紀を舞台にしたものと、そうでないものだ」
保守的な人は前者を支持するんでしょうが、個人的に好きなのは後者。
もうね、重箱の隅というか、設定の隙間をヒントにマイストーリーを展開する作風が、そろそろ憐れに見えるんですよ。
個人的には、記号としての“ガンダム”と、モビルスーツという言葉をロボットの総称だけを拝借しただけの、1(notゼロ)から世界観を構築した物語の方が新味を感じるので好きです。
「なら、ガンダムじゃなくてもいーじゃん?」という定番のツッコミも聞こえそうですが、今の時代に使われる“ガンダム”という名前は作品のタイトルではなく、コンテンツ名、もしくはジャンル名と化しているんですよね。本来は嘆かわしい事なんですが。
だからせめて、非宇宙世紀を舞台にしたガンダム作品は、“機動戦士”と銘打つのは止めて欲しいんだ。
――って事で、『オルフェンズ』。
正直、『レコンギスタ』より面白いガンダム作品は出ない!と思っていたものですが、直後に出てきましたね(笑)。0点と100点の作品は存在しないと、常々より豪語している俺ッチとしては軽率な考えでした。
『オルフェンズ』という作品は、視聴者を試している作品だったと考えます。
少なくともガンダム作品における主人公は、多くの人間が同調できる、つまり視聴者の生き方の手本にすらなり得るキャラとして描かれます。
平たく言えば、白いガンダムに乗っているキャラこそ正義!という事です。あ、『~Desiny』の主人公はヤマトさんですからね(笑)。
主人公に寄った考え方でストーリーが進むのはドラマの作風としても当たり前だから、本作の三日月さんこそ正義!と感じるのも当たり前なのかもしれません。
けど、ここに本作のトラップがあるんだよね。
ハッキリ言えば、三日月の行動(理念)は反社会的なところが多いです。三日月を始めとする鉄華団も、境遇を鑑みれば仕方ないという同情の余地があるだけです。
これまでのガンダム作品と同じく、盲目的に主人公の真似をしながら生きてみれば、やや白眼視される事でしょう(笑)。
客観的に見れば、実は一番まともなキャラってガエリオだと思うんだ。
――作品としては面白い。
けど、今や親子で楽しめるようなファミリーコンテンツ(笑)と化したガンダム作品で、こういった道徳心を揺さぶるような作風は邪道です。親の立場にある人は、慎重な意見を求められるんだろうなぁ。
今日び、“血”という、ネガティブな意味を含んだワードをタイトルに持ってくるのは、一種の英断。
キーワードにした以上、画面内に血が映るのは不可避でしょうし、未成熟な人間はこういった作品に感化されやすいから、規制の対象にされ路線変更……という懸念も抱いていました。
ただ実際は、本作で描かれる血は、安易に映像に抑揚を付けたいがためではなく、あくまで暴力の代償として描かれています。
かつて『クリフハンガー』の監督を務めたレニー・ハーリンさんは、“人間を殴れば血が出るんだから、キチンと血を見せなければ痛みは伝わらない”と言った旨を述べていました。
つまり、血とは痛みであり、痛みとは恐怖であるとも思うんです。痛いのは誰だって嫌だし、怖くもあるんだから。
本作において、他人に痛みを与えたキャラは相応の報いを受けます。主人公ですら例外ではないんだから、本作における血の意味はスゲー深いんです。
放送前の、敵から奪ったパーツでMSがパワーアップ!なんて触れ込みが、ゲームっぽいという印象を与えましたが、そんな雰囲気はまるでなかったので安心しました。
その根幹にあるのはフレームの概念ですが、“ガンダムフレーム”ではなく、フレーム自体をガンダムとかグレイズとか呼ぶのも面白かったんじゃないかなぁ。
一応、第2期シリーズも確定しているようですが、ビーム兵器が登場するのかどうかが気になります。
プラモもボチボチ買ってますが、そろそろSBランナーが懐かしくなってきた…(笑)。