よーやく『ヤヌスの鏡』を観終えました。
普段は清楚な女子高生が、何らかのスイッチが入ってしまうと、悪魔の化身がごとき不良少女に変身してしまうお話なんですが……やっぱり、この時期の大映ドラマは面白い。
いや、面白いと言うより、引き込まれてしまう方が先か。5分も見ていれば、気が付けば1話を観終えてしまうほどの没入感。
普段の小沢裕美→不良の大沼ユミになった時のギャップの大きさに笑ってしまう人も多いでしょうが、キチンと3話分も見れば、フツーに見慣れてしまう(もしくは飽きてしまう)のが、その証左ではないでしょうか。
本作が放送されていた当時=80年代半ば頃は、言いつけを守らない子供には、文字通りビシビシ引っぱたくような体罰なんか当然のようにまかり通っていました。
当時の時代背景を表すかのように、本作中にも教師が生徒に体罰を加えるシーンがそこかしこにあります。小さい頃、中学や高校は怖い所だという意識を植え付けられたのは、このテのドラマのせいだったんだろうなぁ(笑)。
裕美とユミは、そんな大人(特に祖母の初江)の抑圧と、そこから解放されたいメタファーとも呼べるキャラなのです。
しつけとは親の倫理観を一方的に子供に植え付けるものですが(←チト暴言)、やりすぎればユミになってしまう可能性もある。それ故、どちらかと言えば子供より大人……いや、大人というより親が見ておくべき作品だったのかもしれませんね。
どうも近年の親は、自分の子供のユミ化を過剰に恐れているようですが…。
そんなユミを諭そうとするのが、堤先生。
ただユミを懲らすのではなく、あくまで人格を尊重しようと必死になる姿は、戦っているようにすら見えます。
子供を過保護にしてしまう親ってのは、こういう意味での戦いを放棄→不戦敗してしまう事でもある、つまり自分の子供に負けても恥辱を感じない人なんでしょうね。
どこまでも一途に、愚直にユミと向き合う堤は、まるで『スクール☆ウォーズ』の滝沢賢治。…つーか、演じているのが山下真司さんってのが大きいけど、衣装や髪型までほぼ同じ(笑)なんだから、本作は滝沢先生のもう一つの物語にも見えてしまいます。
『スクール☆ウォーズ』のインパクト(と知名度)から、山下真司さんには熱血教師というイメージが付いて回っていますが、本作における堤先生役もそんなイメージを固める一因となっているはずです。
色々と大らかだった時代の作品ゆえ、教師の体罰シーンのみならず、未成年に飲酒を勧めるシーンもあったり、人目に付きやすく放送するのは難しいんだろうけど、ドラマとしては面白いんですよね。
本作を放映していたのはMXですが、特にBSの、異常なまでに過多な韓ドラ枠を潰して、古いドラマを再放送して欲しいものです。頼むから『プロゴルファー祈子』を!