たった1話を観るだけでもスゲー疲れるんだけど、観始めると止まらない『花嫁衣装は誰が着る』、ようやく観終えました。
近年のTVやドラマを含むドラマは、何かと“死”を描く事が多くないですか?
死を描く事で視聴者or観客の感情に揺さぶりを掛けますが、それは現代人が“死”というショッキングな出来事でも起こらない限り、絵空事に心が動かされる事がなくなってしまった証左なんでしょうかね。
それにウンザリする事が多く、スゲー不満に感じるんですが、この時代の大映ドラマは、ほとんど“死”を描かない点が素晴らしいと思うんです。
本作には主人公の千代に対し、憎み、妬み、恨むキャラがしこたま登場します(逆に、千代にそんな感情を一度も抱かなかったのはユリ麻見だけかも)。
あれだけ多くの人間から恨まれているのにもかかわらず、千代は他人or自分に対し殺意を向ける事は一切ありません(さすがに終盤では疲れ果てたのか、自殺を考えるシーンもありましたが)。
手っ取り早く視聴者の目を向けるように仕向く伝家の宝刀を使わず、登場人物が人間関係のしがらみに苦悩する姿を執拗に描くのが面白いんです。
本作には、心底より憎めるキャラが多々登場します。10人中10人に憎まれるような芝居や演出がなされているのは明らかなので、そう思うのも当然。
善人に懐疑的になる人間は少ないけど、多くの人間は悪人に対しては簡単に憎悪の感情を抱けるもの。そんな大衆の感情の機微を計算した演出をする事で、視聴者を没入させる見事な作戦です。
ただ、酒田家のご隠居を演じる初井言榮さんに挑んで、勝てると思い込む無謀な人間がいるとは思えませんが…(笑)。
それまで千代に対して悪意を向けていた人間が、ハッピーエンドにさせるための帳尻合わせに、まるで憑き物が落ちたかのように善人モードにシフトしてしまうのは、古い作品だから仕方ないんでしょうがね。
みさ子さんやお母さん=叔母あたりは、どん底に落ちた事で自省できたと解釈できたんですが……光さんのお母さん、お前は何なんだよ。睡眠薬の多量摂取のせいで、精神に破綻を来すという後遺症を残したんだろうと脳内補完(←こういう、想像の余地を含んでいるのも古いドラマの面白さ!)。
個人的に、終盤に向かうに連れ、佑介さんがマッドな方向へ突っ走る姿には鬼気迫るものを感じた。
ほぼ毎回、千代が引っぱたかれるのは通例行事ですが(笑)、終盤のDVっぷりには慄然ですよ…。
観る前は、主人公の最終目標が何なのかが分からなかったのもあって、大した期待もなく観ていたけど、今では心底より面白い作品だと思えます。
それにしても……千代の子供時代を演じていたのは、宇宙一プリキュアを愛している(と思う)、あの本名陽子さんだったとは!