今回は、私がロンドンのジュエリーショップで働いた2年間で、英語でのコミュニケーション力がどのように変化したかお話ししようと思います。

 

ロンドンでのアルバイト経験①と②はこちらから↓

 

 

 

 

 

アルバイト先のお店があった場所は、ロンドンの中心であるピカデリーサーカスとグリーンパークのちょうど真ん中、バッキンガム宮殿からも徒歩圏内で、とても賑やかな、かつ高級ショップが立ち並ぶエリアでした。そのためショップには、地元のイギリス人の他、世界中からの観光客が毎日たくさん訪れていました。

 

スタッフたちの人種はと言うと、ロンドン近郊出身のイギリス人、南アフリカからのイギリス系移民、パキスタンやインドからの移民、韓国人留学生など、日本人の私の他にも様々な人種が集まっており、世界中からのお客様も合わせるとまさに店内は人種のるつぼでした。私がここで働き始めたころは、すでにイギリスに留学して1年が経った頃で、日常会話には困らない程度に英語は話せるつもりでいました。でも、いろいろなアクセントの英語が飛び交う環境の中で、バラエティにあふれる英語に慣れるのに最初はとても苦労しました。お客様はアメリカからの観光客も多く、店のスタッフたちがアメリカ人のお客様のアクセントを真似したりすることがあり、イギリス人のアメリカ人のアクセントに対する対抗意識(?)が面白いなと感じました。

 

ところで、私の主な仕事はジュエリーデザイナーのアシスタントでしたが、小さなショップのため、自分の仕事以外にも、接客やレジ、電話対応、倉庫での在庫整理など、ありとあらゆる仕事をこなさなければなりませんでした。その中で、英語でのコミュニケーション力が鍛えられたのが接客と電話対応です。

 

面と向かっての接客ではまだお客様が何を求めているのか想像しやすく対応も何とかなるのですが、一番苦労したのが電話対応でした。このお店にはとにかく電話がよくかかってくるのです。英語での対応の自信のなさから、できるだけ電話を取りたくなかった私は、最初は電話が鳴っても取らなかったりしていたのですが、だんだんとそういうわけにもいかず、恐る恐る鳴りやまない電話にも出るようになりました。

 

相手が早口だったり、アクセントの癖が強かったりすると結局相手が何を言っているか分からず、やり取りを他のスタッフに替わってもらうなんていうことも何度もありました。そこで、気もちを切り替え、場数を踏むため自分からあえてたくさん電話を取るようにしました。更に、他のスタッフが接客や、電話での対応の際にどのような英語表現を使っているか注意深く聴き、リズムやイントネーションもできるだけ真似して話すように努めました。

 

一年が経った頃、サブマネージャーからこう言われたのです。

「あなた、本当に英語での接客がうまくなったわね。最初とは別人のようよ。」

他のマネージャーからも「You are a superstar!」と接客を褒められるように。リスニングに慣れてくると気持ちにも余裕ができ、接客を楽しめるようになっていたのです。

 

そして二年が経過するころ、またサブマネージャーから、

「イギリス人スタッフより、あなたの接客の方が丁寧で気持ちよく買い物できたったってお客様が喜んでいらっしゃったわ!」

と信じられないようなお褒めの言葉をいただいたのです。苦手意識のあった電話対応も、

「あなたに対応してもらえてよかったわ!Thank you!」

とお客様からお礼を言われ、英語での電話応対ももう怖くなくなっていました。

 

それまでに何度失敗しても、私のミスを責めるより働きぶりに感謝してくれた社長、そしていつもファミリーのように親身になってくれたマネージャーとスタッフたちがいたから、私は留学期間を終える直前まで、その店でアルバイトを続けることができたのです。

 

最後の日、スタッフたちがサプライズで私に店の全員の写真が貼られたアルバムをプレゼントしてくれました。しかも、表紙には私が働き始めた日と、最終勤務日が彫刻されているではないですか!こんなに温かい上司や同僚に恵まれ、私は英語でのコミュニケーションに自信をつけて日本に帰国することができました。

 

英語コミュニケーション講座では、前期のウォーミングアップで「発音講座」があります。でも大人になってから英語を学ぶ私たちにとって、ネイティブと同じ発音を身に着けることは現実的ではありません。だからせめて会話の相手に負荷をかけない発音をすることで、英語でのコミュニケーションを楽しみたいですよね。

 

世界中の英語を話す人には、みんなそれぞれお国訛りがあります。日本人である私たちは日本語訛りがあって当然です。それなら一つひとつの単語の発音を気にするより、センテンスやフレーズを英語らしいリズムやイントネーションにすることに意識を向けて話すほうがずっと会話がスムーズになります。講座が始まったら英語スイッチを入れ、自分の英語に自信をもって英語でのコミュニケーションを楽しみましょう!

 

アルバイト先の仲間 2005年

 

島根大学 英語コミュニケーション講座講師 Cathy