イギリスは物価が高いため、留学していた間はアルバイトをしながら生活をしていました。イギリスには2度長期留学しましたが、その都度就労可能な学生ビザが発給され、週20時間以内の就労が許可されていました。
ロンドンに滞在中、街の至る所にジェムストーンを使った大胆なデザインの、ヨーロッパらしいジュエリーのお店をたくさん見かけ、私はすっかりそれらのジュエリーに魅了されていきました。そして、日本に帰国後は自分のジュエリーショップを持ちたい!と思うようになるまであまり時間はかかりませんでした。だけど、ジュエリーに関する仕事を経験したことがなかったため、せっかくならロンドンにいる間にジュエリーショップでアルバイトをしよう!と決めたのです。
決めたのはいいものの、何の伝手もないため、自分の足でロンドン中のお店を見て回り、ショーウィンドーにパートタイムの求人が出ているお店を探して回りました。そして、求人を見つけると、CV(”curriculum vitae”の略で、履歴書のこと。アメリカ等では”resume”と呼ばれる)を持って自分を売り込みました。
だけど、5社以上にCVを提出したものの、面接までこぎつけられたのは2社ほど。他からは連絡もありませんでした。イギリスでは基本的に経験を重視されます。そんな中、なんとか面接まで進めた2社でも、自分のやりたいことが伝えきれず、英語力ももちろんネイティブの人たちと比べると比較にならなかったためあっさり落とされました。
そこで、私はCVにカバーレターをつけることにしました。カバーレターとは、CVにつける表紙のようなものです。面接でネイティブのように流ちょうな英語で自分の思いを伝えられなくても、カバーレターに自己アピールを前もって書いておこう、と思ったのです。そうと決めた私は、カバーレターに「日本に帰国したら、将来自分のジュエリーショップを持つのが夢です。これまでジュエリーショップで働いた経験はありませんが、ぜひ御社で修行させてください。」という趣旨のことを書きました。
ある日、私はとても綺麗なジェムストーンのネックレスがたくさん飾ってあるショーウィンドーの前で足を止め、ここで働きたい!と強く思いました。ウィンドーの隅を見ると、なんと運よくパートタイム募集中の張り紙があるではないですか!もう、ここしかない!と思ってカバーレター付きのCVを持って店に入り、それをマネージャーに渡してもらうようにスタッフに頼んで帰りました。
すると、翌日すぐにその店のマネージャーから電話があり、面接に呼ばれ、CVを提出してから数日後には面接を受けることができたのです。面接では、こちらが話す隙もないほど、マネージャーが勤務形態について最初からノンストップで説明を始めたので、私はすっかり面食らってしまいました。
最後にマネージャーから「Do you have any questions?」と聞かれたので、「え?私、採用ですか?」と確認すると、マネージャーは「そうよ!あなたがカバーレターに書いてくれていた夢にとっても感動したわ!日本で自分のショップを持ちたいなんて素敵じゃない!それに、今時イギリス人でもカバーレターをつけてくる人なんて珍しいわよ。みんなCVだけポイって持ってくるの。それなのに、日本人のあなたがちゃんとカバーレターをつけてきた。だからこの人は信用できる、と思って即採用しよう!っていう話になったのよ。」とのこと。
カバーレターの大事さを痛感しました。それと、夢を持ち、それを人に伝えることの大切さにも気が付きました。
英語コミュニケーション講座では、講座の最初にVocabulary Noteに「将来の夢」を書きます。一人一人が将来のなりたい自分をイメージし、それに向かって進んでいけたら素敵ですね。夢を叶える途中でまた新たな出会いがあり、その都度夢が変わったってそれはそれでいいと思います。
さて、アルバイトが始まってからの話はまた次の機会に。
アルバイト先の仲間と(左が自身) 2004年
島根大学 英語コミュニケーション講座講師 Cathy