パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記 -9ページ目

パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記

「タイランドのトムクルーズ」とママ友からもてはやされたイケメンパパがある日突然「MTF(トランスジェンダー女性)である」とカミングアウト。苦労や苦悩もあったけど、私たち家族は大丈夫。LAから体験記を発信してきます。

先週、龍空を見ました


これも龍っぽい


昨日は空に丸い光のサークルが。次女は「丸い虹だ」って。宇宙からお迎えが来た感じ。



マッサージのクライエントで外科医のシェリルさんがこんな話をしてくれました。彼女が医学生だった20年ほど前、性別適合手術というのアメリカでは非常に稀で難しい手術だったけど、今は珍しくもなんともないし、成功率も格段にあがってる。医大で性別適合手術を専攻することも可能で、人気急上昇のが学科だそう。

シェリルさんの娘さんが通う私立の高校では、”LGBT”であることが”trendy”で”cool”なんだとか。カミングアウトした子を他の生徒たちが温かく祝福するんですって。

そういえば、長女の通う中学校でもLGBTの学生たちのクラブがあるようです。「どんな活動してるのか校長先生にきいてみようかな」って長女に言ったら「余計なこはしなくていい」って言われたけど、やっぱり聞いてみよ。

なんだかいい感じに世の中は動いてるみたい。


この店のデラックス天丼が好きなんです。午後も仕事で腹ペコだったので、娘をパクリ。


次女からの手紙に、たくさんの感謝の気持ちが書き記されてるのですが、1番心に響いたのは”Its great you accepted Lyss for who she is”. (ありのままのアリッサを受け入れたことは素晴らしいことだよ)。10歳の娘のほうがずっと大人。




母の日でした。

 

誕生日とか、結婚記念日とかはどうでもよいのですが、母の日だけは「家族に盛大に祝ってほしい」、「感謝の気持ちをこれでもか、これでもか、ってめいっぱい形にしてほしい」、「尊い人のように扱ってほしい」という密かな願望というか欲望を抱いています。毎年ね。

 

だって、毎朝早起きして、真心込めて朝ご飯と弁当作って、子供たち送迎して、部屋掃除して、洗濯して、皿洗って、真心込めて晩ご飯作って、お風呂いれて、宿題手伝って、また皿洗いして、そんで好きな習い事できるように汗水たらして、外で仕事してるんだもん。5月の第二日曜日の一日くらい、敬われたい。いけないかしら。

 

今年の母の日は朝から仕事でした。日曜日は早起きして、近所のジムで泳いで帰宅、朝ごはんを用意してから職場に向かうのが常。「プールで泳いで帰ってきたら、家族3人が待ち構えていて、わたしの大好きな激甘ドーナツとか、うまうまコーヒーとかで迎えられ、『いつもありがとう』ってハグとかしてもらえるかしら」「もらえるといいな」って期待に胸を膨らませて帰宅したけど、みんなまだ寝てた。しぶしぶみなの朝ご飯用意して、出勤時間になってもみんな起きてこないから、残念無念のいじけた気持ちいっぱいで家を出ました。もやもやが治まらなかったので、職場の駐車場から"I don't feel that I am appreciated by anybody for being a mother". (母の日なのにまったく感謝の気持ちが感じられられない)というメッセージをアリッサにテキストしました。

 

かっこわるー。45歳なのにいじけ虫。感謝の気持ちの押し売りセールスマン。

 

結局ね、素敵な母の日だったんです。職場から帰ってきたわたしに、刺身と大好物のアンパンのランチが待ってたし、気持ちのこもったカードとプレゼントもいただいたし、夜はわたしの好きな店に外食に連れていってくれたし、さらに大好物、モンブランも買ってきてくれたし。早起き母ちゃんの早とちり。アリッサに捨て台詞吐かなければよかった。いつもそう、早とちりして毒をまく。

 

ごめんなさい。エゴを家族に押し付ける幼稚な自分を反省した母の日でした。

映画のリン子さんと同じ。うちのえいこさん(アリッサ)も大きくてごっつい手がコンプレックスなんだって。


 

4月に家族で日本に帰ったときに気付いたこと。「日本ではトレンチコートが流行ってるらしい?」

 

東京でまず、「あれっ」と思った。京都に行ってさらにびっくり。道行く女性がみな、カーキー色のトレンチコートに身を包んでる。娘たちに「あのコートは京都の女性の制服で、会社行くときはみんなあれを着てかないといけないんだよ」って冗談のつもりで言ったのに、「京都だけじゃないよ、東京の人たちもみんな着てたよ」だって。娘たちも気付いてたんだ。

 

さてさて、トレンチコートは前置き。

 

今さらですが、映画、「彼らが本気で編むときは」を見ました。LGBT、家族の多様性、虐待(ネグレクト)、母親の愛などの難しいテーマを優しくふんわりそして真剣に描いた荻上直子監督の作品。生田斗真がトランスジェンダーの女性を熱演してます。

 

トランスジェンダーのパートナーとともに、娘ふたりを育てているわたしとしては、この映画を観て思うことは、あまりにもたくさんありすぎてここでは書ききれない。そんななかで一番印象に残ったのは、トランスジェンダーのリン子さんと叔父のマキオ、そして彼らのもとで暮らす小学生のトモを、トモのクラスメートが「変態家族」扱いする場面。

 

怒りとか、悲しみとかじゃなくて、恐怖でおののいた。「今の日本では『変態家族』扱いされちゃうんだ」って、背筋が寒くなった。ホラー映画の一番怖いシーンを見た気分。

 

人と同じだと安心するのでしょうか。自分たちと毛並みが違う人間がいると、不快で不安でたまならくなって、つまみ出したくなっちゃうのでしょうか。日本はLGBT当事者や家族のかたたちにはまだま生きにくい場所なのでしょうか?

 

トレンチコートの女性が通りを埋め尽くすのって、他の国ではありえない日本特有の光景だと思う。日本が大好きで、日本人であることを誇りに思ってやまないけど、アメリカ暮らしでよかった。

 

 

アリッサが出張中なので、女3人でデート。あ、アリッサも女か。娘たちはアリッサおもいなので、常にテキストしたり、Skypeしたがります。シワシワのお母ちゃん、娘たちに頭に花を飾られて、うれしくてさらにシワシワや。




実は「アリッサに負けたくない」という闘争心でわたしは常に燃えてます。メラメラメラ。

 

顔は断然アリッサのほうがかわいいから、もうどうしょもないけど、体型は負けたくない。

アリッサにビーガンの甘いデザートを食べさせて、自分はこっそりダイエットに励むとかね。

姑息なまね、やりっぱなし。

 

娘たちに「アリッサとマミー、どっちが好き?」という質問、こっぱずかしくて聞いたことないけど、「断然、マミーでしょ」って言ってほしいな。

 

アリッサは金曜から月曜の夜までアリゾナに出張中です。娘たち、ちょっと寂しそうで、そんな寂しそうな娘たちを見るとわたしは闘争心に燃えちゃうんですね、メラメラ。「アリッサがいなくたってへっちゃら」と思えるほど、娘たちを楽しませちゃうぞって。

そんでがんばって、いろんなところへ連れ出す。ようするに自信がないんです。

 

アリッサは常に平常心を保っていて、揺れ動かない。そんな彼女を見てるとくやしくて羨ましい。人と自分を比べないって誓ったけど、アリッサは別。女になってからというもの、アリッサは常にわたしのライバルです。

 

行ってまいります
樽の中
秋葉原駅近くの小牧食堂、all veganメニュー
紫の頭のおばあちゃん。最近、耳が遠くなって、携帯で話す声がついつい大きくなっちゃうそう。それはわかるけど、電車の中で携帯でちゃダメよ
日光の名残雪


春休みを利用して日本へ。旅の日程は、家族4人で東京、京都を観光した後、日光の旅館で両親と姉と合流。

日光へ向かう電車の中で。車両の端のほうから携帯で会話する女性の大きな声。「随分、大きな声だなあ。周りのひとの迷惑考えてないな」と思ってたら、アリッサが “isn’t that your mom?”

「ぎょっ」として声の主に目をやると紫の頭をした人が。それは紛れもない、私の母でした。母の隣には、すっかり白髪頭になって、ちょっと小さくなった私の大好きな父もいました。日光の旅館で集合の予定が、電車の中で再会できるなんて、なんてドラマチック。

女になったアリッサを紹介する心の準備もままならなかったけど、「これが運命なんだな、これでよし!」と思い、アリッサと娘たちの席へ両親を連れて行きました。

母は何事もなかったように、アリッサと普通に会話してました。前もって、「アリッサと呼ぶように」って伝えておいたのに「エイタスくん」「パパ」を連呼してたけど。

父は笑い転げてました。「うわはっは、うわっはは」と転げた後、「うわっは、うわっはっは」ってまた転げてた。しばらく笑い転げてから「お元気そうでなによりです」って妙にかしこまって挨拶してました。

両親ともにとてもよい対応。100点満点。
ありがたいな、あったかいなと思いました。









最近、わたしたちがはまってるのは、

ピーナツバタークッキー作り。あっという間になくなるので、3日連続で作りました。どうりで運動いっぱいしても太るわけだ。
 
日本にいた頃、好きな人から予想だにしないときに、予想だにしない褒め言葉とかをもらうと、心臓とか脳みその奥がむずがゆくなって、いてもたってもいられなくなり、地球の裏側のブラジルまで穴掘って逃げたくなったものです。カリフォルニアで穴を掘ったら、どこに辿り着くのでしょうか?ということで、次女との会話。

 

次女:"When  you were a child, who did you  look up to?".  「子供の頃、誰を尊敬してた?」

 

私:「お母さん、つまり日本のおばあちゃん」

 

次女:"who do you think I look up to?".  「わたしは誰のこと尊敬してると思う?」

 

私:「知らない、誰?」

 

次女:"You, mommy."

 

予想だにしなかった答えで、びっくり仰天して、逃げ出したくなりました。久しぶりの「ブラジルまで穴掘りたい」気分。心臓と脳みその奥がむずがゆい。「アリッサ」と答えるに違いないと思ってたのに。わけがわからない。

 

よい母親でいることをすっかりあきらめてたので、理不尽に怒ったり、子供たちに八つ当たりしたり、バカみたに大声で歌をうたったり、娘たちの前でおならしたり、娘たちのことほったらかしで、求められても聞こえないふりしたり。「反面教師上等」っておもってたのに。

 

「じゃあもう悪いことできないね」とわたしが言うと、「悪いことしちゃダメだよ」と次女。

 

悪いことはもうできませんね。

 




10歳の次女が最近、いじけたり、怒ったり気難しいので、12歳の長女にちらっと愚痴をこぼしたら。

 

「そういう年頃だから、気にしないでいいよ。わたしもそういう時期があったから」と長女。

"It's just a phase. It will pass. Dont worry, mommy. I had that phase"

 

10歳と12歳の小さな大人。

娘たち、ふたりとも大人の階段を昇ってるんだね。

お好み焼きじゃなくて

アイスクリーム

キュートな芸術品


フリージアの花が「春が来た」と歌ってます。


4月に日本に一時帰国することになったので(1週間だけ)、Skype で栃木の母にアリッサのことついに報告しました。

隠してたわけじゃないけど、心配されるのが心配で約3年もかかっちゃった。

母は別に驚いた様子もなく、娘たちの(カミングアウトに対する)反応を聞いたあと、「大変だったね」とだけ言いました。そして「ふたりで決めた道をあなたたちの好きなように進みなさい」と付け足しました。

予想通りの反応。立派な母親です。わたしも母のような母になりたい。
アリッサはタイ人なので、もちろん、タイ料理が好き

 

 

近所に最近オープンしたタイレストラン。どのメニューもビーガン対応してくれます

 

マッサージのお客様にすすめられて、最近、朝スプーン一杯、えごまオイル飲んでます。日本で流行ってるのかな?お通じがよくなった感じ。
 
 

職場の清掃係のマリアとのロッカールームでの会話

 

マリア:週7日働いてるからもうクタクタ。

 

わたし:でも4月にメキシコにバケーションに行くんでしょ?楽しみだね。

 

マリア:1ヶ月休暇を取る予定だったけど、やっぱり2週間にしたの。新車をローンで買ったから、働いて稼がないと。

 

わたし:すごいー!!おめでとう。

 

マリア:ポンコツ車で毎月のように修理にお金がかかったから、思い切って新車を買ったのよ。それだけじゃないのよ。古い旦那も捨てることにした。

 

わたし:ぎょっ!離婚するの?

 

マリア:離婚することにした。20歳年上の旦那。世話にしてあげてるのに、感謝しないだけじゃなくて、わたしのことクソみたいに扱うことがあって、もう耐えられない。今、アパートを探してるけど、よい物件が見付かったら家を出る。

今、62歳だけど、もっといい人が現れると思う。毎日、鏡のなかの自分に「マリア、あなたはとってもきれいよ」って声かけてるの。まだまだイケてるでしょ。

 

その後、わたしたちの会話を聞いていた、数人の女性が集まってきて「マリア、やったね」。「わたしも8年連れ添った旦那を捨てて、ニューヨークから引っ越ししてきたのよ」とか、「愛を消えたら、すっぱり切るのが正解」とか、マリアを囲み、ロッカールームで大騒ぎ。

 

マリア、いさぎよくて、かっこいい。勇気があって強いな。

 

でも思うんです。人と人を結びつけてるのって、愛だけじない。だから、車みたいにそう簡単に捨てたり、新しいのに変えたりできないんですよね。