正常なボケじーさんに至るまでと今 ペッコのネタ帳

正常なボケじーさんに至るまでと今 ペッコのネタ帳

ボケ倒して行くじーさまのようすを客観的に見てみたく、書いてみることにしました

施設はいつでも面会が可能だ。

差し入れも自由。受付で名前を記入したら勝手に部屋まで行ってもいいので、ちょいちょい顔を見に行くことにしていた。


そして、行くたびにいろんな報告を聞くことになる。


どうやら父はある組織から命を狙われているらしい。

まずは、スナイパーから身を隠さなければいけない。

夜もおちおち寝ていられなく、気がつくとベッドとタンスの隙間に隠れたり、時には空いた部屋に隠れたり、会議室のクローゼットに隠れたり…。隙を見て外に逃げ出すこともしばしばあった。


その度に施設の方たちが探してくれていたようで、かなり迷惑をかけていたようだ。


食事にも毒が盛られていると思うと食べられない。

いつもの薬もすり替えられていると思い、飲んだふりして隠していたり。

誰かか狙っていると感じた時には杖をライフルのように構えて備えたり。


幻覚、幻聴との境目が曖昧になっているので、本人にとってはそれが全て現実で、真面目に自分の命を守っていたようだ。


これ以上、ひどくなったら何をしでかすかわからない!出禁になったらどうしよう😨。




しばらくおやすみしているうちに、父はデイサービスからショートステイになり、ショートステイでも長期利用できることになり、ほっと一安心したのも束の間、施設でも色々とやらかしているようだ。


一番困らせているのは脱走。普段は杖をついて歩くくせに、何かのスイッチが入ってしまうとサッサと歩くどころか、追いかけられると走って逃げるらしい。

時には「悪いやつに追われている。誰か〜、警察に通報してくれ〜」と叫びながらたまたま偶然にも交番にたどり着き、そこで御用となった事もあったようで。

さすがにお巡りさんも察知してくれて施設の人にうまいこと引き渡してくれたみたい。


他にも、施設の人に、「雇ってください」とお願いして稼ごうとしていた。その割には「時給を1円50銭値上げして欲しい」と頼んだり、笑えるけど笑えないほど認知症は進んでいた


灯油のファンヒーターの上に直接洗濯物がかけられていたのを発見した。

火事にはならなかったものの、もうだめだ。

ファンヒーターも撤去して電気のオイルヒーターに交換した。

24時間つけっぱなし。電気代がいくらかかるのかはこの際関係ない。なんとしても火事だけは阻止しなければ!!


なのに今度はサッシの窓を閉められなくなった。せっかく部屋を暖めても、一晩中開け放された部屋は寒く冷たくなっていた。


ちゃと施錠しても、私たちが帰った後に開けられてはもうどうにもならない。

寒かったのだろう。靴下も5枚重ねて履いていた。パジャマの上にジャンパーを着たその上にまたパジャマを重ね着していた。




免許を返納してから一緒に買い物に行ったのが懐かしい。

返納から一年半が経つ頃には、父は何を買ったらいいのかも考えがまとまらなかった。


せっかく買い物リストを用意しても、

そのメモを置き忘れる

書いてあってもそれを選べない

そもそもお金の支払いがわからない

歩幅も小さくなり、歩くのも危なっかしい


そのうち買い物にも行きたがらなくなったので、必要なものは私が適当に購入していた。


1人で家にいる時に、何をしているのかわからないが、きっとそこらじゅうをあさりまくっているのだろう。 

実家に行くたびに、普段見ない、昔着ていた服やら下着が引き出しの中に入っていた。

どれも黄ばんで、首元も伸びきっている。とてもじゃないが着られたものじゃない。

片っ端しから処分したものの、一体、普段何をやっているのやら。



それまで、自分で炊飯器でご飯も炊いていた。

お茶も沸かしていた。

煮物も作っていた。

電レンジもちゃんと使えていた。

洗濯機も洗剤を入れて回していた。

もちろん、洗濯物も干していた。

乾いた衣服もちゃんとしまえていた。


普通にできていたことが、なんだかおかしくなってきた。


こんなに急におかしくなるものなのかと、父の急変についていけない。


白菜が炊飯器の中に!

電子レンジの中にも焦げた白菜。

ティファールの中にはさつまいも。

オープントースターでお弁当を温めていた。

もちろん、容器はドロドロに。


と、予想外の危険行為が続いた。


お昼だけお弁当を配達してもらっていたが、ここまでくると、自炊させるわけにはいかない。


間違っても火事を出してはならない。

ガス炊飯器、お魚焼器も撤去して、夜のお弁当も追加した。

デイサービスも1日増やして週3日にしてもらった。


これで少し様子を見ることにした。


あるお天気のいい日、仕事が早く終わったので、処分の途中だった竹のラグを切断しにいった。


ゴミ袋に入るくらいの大きさに切りながら、隅に固めて置いてある不用物もどんどんゴミ袋に詰めていった。


ん??なんだか異臭がする。

どこからだ?

鼻を効かせながら匂いの元を探した。

ここか??とクーラーボックスの下の板をどかした途端、我慢ならないほどの悪臭が襲ってきた。


うわ〜っ!!くっさー!


こわごわ確認すると、発泡スチロールの中にあった肥料に水が入って発酵しているようだった。

これはひどい。

おまけに発酵したドロドロの中にビニール袋が突っ込んである。 


なんじゃこれ…。


勇気を絞って取り出してみると・・・。


あーっ!あったぁ。これ、ストーブのタンクじゃん。こんなところから出てきた。


しかし、ビニールは破れ、タンクはドロドロに浸かってすでに錆びていた。


誰がどうしてこんなところに…。


父しかいない。まさか、やっぱり昨シーズンから

ボケていたのか。


間違いない。気が付かないうちに認知症は始まっていたのだ。