4年生で読み聞かせした本です。
ある村に、ラージャンという男の子が住んでいました。
ラージャンは、道端で銀貨を1枚拾います。
お父さんは、羊を飼い、毛を売ればお金が儲かる、と言いました。
お母さんは、豆を買って餓えを凌ぐべきだと言いました。
でもラージャンは、二人の言うことには耳を貸さず、国中でたった1つしかないものを買おうと決めていました。
そうして小さなさるを買いました。
ラージャンはこれまでさるを見たことがなかったので、国中に1つしかないものだと思い込んだのです。
お父さんとお母さんは、さるなんて、何の役に立たないと怒りましたが、ラージャンはその小さなさるを、とてもかわいがって、大切に育てました。
さるは成長し、あるとき、悪魔が、村人から奪い取った宝石を見て、うっとりしている場面に出くわします。
悪魔が居眠りをしている隙に、宝石を盗みますが、見つかり捕らえられてしまいました。
そこでさるは咄嗟に、悪魔に、およめさんをみつけてあげたいのだと言い繕い、喜んだ悪魔は、さるのことを許してやるのでした。
さるは、盗んできた宝石をラージャンに渡すと、木を彫って、大きな人形を作るように頼みます。
ラージャンたちは、言われた通りに、木を彫り、こうして悪魔のお嫁さんができあがりました。
さるは、木で作ったお嫁さんを、恭しく悪魔の元へ連れて行きます。
そして、お嫁さんは人間だから、悪魔を見ると逃げてしまうかもしれない、だからぼくがいいと言うまでは、決して部屋に入ってはいけませんよ、と言って、ドアを閉めてしまいます。
さあ、悪魔は、早くお嫁さんのそばへ行きたくて、うずうずしてしかたありません。
とうとう、我慢できなくなり、部屋の中に入ってしまいます。
ところが、そうっと触れた途端、お嫁さんはベッドから転げ落ち、動かなくなってしまいました。
ああ、お嫁さんが死んでしまったと、悪魔は嘆き悲しみます。
それは悪魔にとって、はじめての悲しみでした。
これまで自分が悪いことばかりして、村人たちを悲しませてきたことに気づいた悪魔は、峠の向こうへ隠居し、二度と村へは帰ってきませんでした。
意外と素直な悪魔なんですね、ネパールの悪魔は。
それはそうと、こんな叡智を持つさるは、国中に一匹しかいないでしょう。
文中では、これもみんな、ラージャンが小さなさるを大切に育てたからですね、と言っています。
国中にたった1つしかないものは、最初からあるものではなくて、自分で作り出すのかもしれません。
さて、この絵を描いているのは、イシュワリ・カルマチャリャという人で、ネパールの6番目の民族ネワール族です。
12歳のときから、ネワールの伝統絵画を学び、親日家らしく、日本の各地で個展を開き、三重県立美術館には絵画が所蔵されています。
いわゆる仏教の細密画。
緻密に描かれた、建物のリリーフや衣服の柄は、当時の文化・暮らしをことこまかに物語り、また遠近法のないのっぺらした絵はエキゾチックで、私はこれが見たくてインドへ行ったほど。
宗教画に比較すると、背景などシンプルですが、細部へのこだわりもお楽しみ頂けたらと思います。