仕事から帰宅し、夜遅く生き物部屋へ行くと、ヒキガエルのケージの扉が開いていた。
当然、ヒキガエルたちの姿が無い。
前回同様、「またやっちまった」のである。
慌てる前に、冷静に考えてみた。
奴らが内側から開けられるはずが無い。
何故、観音扉が開いているのか・・・。
・・・、・・・・。
朝、出勤前に・・、ミヤコヒキガエルのマグマにちょっかいを出そうとして扉を開け、面倒になり途中でやめて、そのまま扉を閉めずに家を出たような・・気がした。
そうだ、だから開いているのだろう。
何てこった、完全に自業自得であった!
玄関は閉まっているので外には出られないが、生き物部屋の扉は開いているので、捜索範囲に私の生活空間も視野に入れなくてはなるまい。
これからシャワーを浴びようとしていた矢先、まさかの緊急事態であった。
出勤から12時間以上は経過していることも、非常事態に拍車を掛けた。
ヤマヒキガエルの蘇芳(スオウ)は、アカハライモリの水尾くんに興味津々(て言うか、食べたい)で、壇上にとどまってくれていた。
よし、お前は脳天気なので、外の世界に興味なんて無いはずだ。
私は、蘇芳を回収した。
ミヤコヒキガエルのマグマもすぐに見つかった。
こいつは臆病なので、台を飛び降りられなかったのだろう。
流石、小便丸である。
私は、マグマを回収した。
しかし、ここからが問題だった。
ニホンヒキガエルの冬将軍がいない。
奴は三匹の中でも一番気が強く好奇心旺盛で、台と床の高低差も苦にしなかったのだろう。
とにかく、見つからない。
「くそ・・、見つけたら唐揚げにしてやるぜ!」と、苛立ちながら、プライベート空間も含めて探し回った。
数ヶ月後に干からびて発見されることよりも、ベッドや絨毯の上で糞をされるのが何よりも嫌だったのだ!
途方に暮れて、生き物部屋へ帰ってくると、隅にあるコンサートウクレレが目に入った。
あの辺りをひっくり返すのは、面倒で嫌だったので後回しにしていたが、見てみるしかないようである。
因みに、これは10万近くしたコンサートウクレレだが、集合住宅故に、埃をかぶっているのだ。
ウクレレをどかすと・・、いやがった!!
前日に餌をあげたので、腹が膨らんでいる。
よくもまあ、そのお腹で、あそこから飛び降りられたものだ。
私が「この野郎!」と叫んでも、身動き一つせず、ふてぶてしい態度は相変わらずだ。
私は三匹をバケツに入れて水で洗い、ケージへ戻した。
彼等にとっては、およそ半日の大冒険であった。
私は、ようやくシャワーに行くことが出来る。
部屋を出る前に見渡してみると、少々散らかっているようだ。
掃除をした方が良いかもしれないが、仕事が忙しく暇が無いのである。