ある日、グラステラリウム3030の観音扉が開いていた。
つい、うっかり・・で、済まされる話では無い。
気が付いたから良かったものの、発覚が遅れたらやばかった。
案の定、ニホンヒキガエルの冬将軍が外に出ている。
何故か、意味深に温度計の隣に座っていた。
何が言いたいのだろうか。
「室温14度やで、寒いんや、パネヒの温度上げれ」とでも言っているのかもしれない。
ヒキガエルの分際で、明らかに私に何かを訴えている。
ヤマヒキガエルの蘇芳(スオウ)に目をやると、確かに彼も寒そうにしていた。
背中を丸め、目を閉じ、元気が無いように見える。
仕方ない、少し温度を上げよう。
私は、パネヒの設定を変え、部屋を後にした。
この時、私は気が付いていなかった。
ミヤコヒキガエルのマグマが居ないことに。
相棒の再放送を観ていて、ハッとし、慌てて生き物部屋へ戻ると、マグマがそこに居た。
「おい、開けてや~!何で閉まってるん!?」と、言っているらしい。
どうやら私は彼を閉め出してしまったらしいのだが、脱走するお前も悪い。
それにしても、冬将軍も蘇芳も臨戦態勢で冷ややかな視線をマグマに送っている。
冷たいものである。
彼の背中に哀愁が漂い始めたところで、私は彼をケージに戻した。
ヒキガエルには帰巣本能があるのかもしれない。
今回の「扉開けっぱなし事件」は、かなり危なかったのだが、後日もう一回やることに、この時の私が知るよしも無い。