昨日3月15日(金)は、エルスール財団記念館 ~詩とダンスのミュージアム~のブックカフェで、「Recital Manuel de la Malena ~Del corazón a la boca~」を開催した。少人数だったが、フラメンコとりわけカンテに理解の深いお客様ばかりが来てくださった。
マヌエル・デ・ラ・マレーナさんの歌が、徹頭徹尾凄かった!
北岸麻生さんの歌伴奏が、あまりにも凄かった!
お客様全員が、ありえないほど凄かった!
マヌエルさんと麻生さんの入り時間は17時の予定だった。でも、マヌエルさんは早くも16時に到着。私や記念館スタッフ――昨日はスペイン語が堪能なスタッフ2名を含め、4名がシフトに入っていた――と世間話に興じながら、麻生さんの到着を待った。
麻生さんが到着すると、今度はテラス席で2人の世間話が始まった。
(すごくいい雰囲気だ。)
リハーサルはキーを確認したぐらいで――とは言っても、本番では多くの歌い手がそうであるように、さらに高い声が出るようになったので、確認したものからかなり変わった(笑)――終了。予定プログラムをスタッフに渡してくださったので、大急ぎでプログラムを作成した。
カンテのコンサートは、プログラムを作らないケースが多い。でも、昨日のマヌエルさんは、1部2部のプログラムを全部あらかじめ決めてくださっていた。とはいえ、本番中に予定になかった曲が加わったり、曲の順番が変わったりした。(笑)
というわけで、昨日の実際のプログラムは下記。
Recital Manuel de la Malenaマヌエル・デ・ラ・マレーナリサイタル
~Del corazón a la boca~ ~心から口へ~
Cantaor: Manuel de la Malena 歌い手:マヌエル・デ・ラ・マレーナ
Guitarrista: Mao Kitagishi ギタリスト:北岸麻生
Programaプログラム
Primera Parte第1部
●Martineteマルティネーテ
●Banberasバンベーラス
●Malageñasマラゲーニャス
Descanso休憩
Segunda Parte第2部
●Tangos de Titiタンゴス・デ・ティティ
●Fandangosファンダンゴス
●Soleáソレア
●Siguirillaシギリージャ
●Buleríasブレリアス
休憩を含め、1時間45分ほどのコンサートだった。
一曲一曲にマヌエルさんの解説がつく。ヒターノの誇り、自分の声質、マヌエラ・カラスコやカマロンやパコ・デ・ルシアへの敬愛、古いフラメンコへの敬意、とはいえ自分のスタイルを大切にしていること……などを次々と語りながら、時々冗談も交えつつ歌った。
麻生さんのギターは、マヌエルさんの歌に寄り添いながらも、時として遊びを仕掛けて、いっしょに笑った。本当にうまい! 今回マヌエルさんがギタリストに北岸麻生さんを選んだわけが、よくわかった。
「シギリージャ」の解説では、マヌエルさんは「シギリージャは僕の魂」と言葉少なに語った。そして始める前に2人で「ティオ・ペペ」を飲んだ。
マヌエルさんの「シギリージャ」はいつも素晴らしいが、この晩の「シギリージャ」はまた格別だった。魂のシギリージャを聴いた日。
「ブレリア」は最高に楽しかった。麻生さんのギターも冴えわたった。予想外だったのは、私とバイラオーラの藤本ゆかりさんが舞台に引っ張りだされたこと。藤本さんは、体調を崩され3年ほどフラメンコから遠ざかっていらしたし、私は肋骨3本骨折で右膝後十字靭帯損傷の身。二人ともとても踊れる状態ではなかったが、マヌエルさんの歌が心地よく、「自然に」踊れた。
こうして大盛り上がりのうちに終了。みなさんと記念撮影をした。
マヌエルさんと麻生さんが着替え終わったところで、バイラオール/フェステーロの小谷野宏司さんが記念館に到着した。お仕事が終わってから駆けつけてくださったのだが、コンサートには間に合わなかったのだ。「飲みに来たの?」とマヌエルさんや麻生さんにからかわれながら、いっしょにテーブルを囲んだ。この日の夕食は、アルティスタの体力を考えてレストランなどに行かず、松陰神社前のフレンチビストロ「ゴン・アルブル」のケータリングをお願いしていたのだ。
メニュー
●田舎風パテ
●鶏レバーのムース
●豚のリエット
●生ハム、サラミ
●有機野菜のサラダ
●キャロット・ラペ
●ポテト・サラダ
●宇和島産真鯛カルパッチョ
●ノルウェー産サーモンカルパッチョ
●キッシュ・ロレーヌ
●メカジキのポワレ
●ゴン・アルブル牛ハラミステーキ
●パン
さらに、エルスール財団記念館のハモン・セラーノ、チーズ、オリーブ。飲物はビール、シェリー、カバ、ワインなど。
食事中のマヌエルさんの話はとてもためになるものだった。カンティーニャス・デ・ピニニやアレグリアス・デ・コルドバの話を、宏司さん、麻生さん、私の3人でじっくり聞いた。また、宏司さんの踊りに対する親身なアドバイスは、感動的ですらあった。
忘れ難い一夜。日本でも、こんなに凄いフラメンコが聴けるなんて、捨てたもんじゃないですね。
マヌエル・デ・ラ・マレーナさん、北岸麻生さん、本当にお疲れさまでした! ありがとうございました。